Telegraph 2011年5月14日
欧州評議会 委員会
学校での携帯電話と無線ネットワークの禁止を勧告


情報源:Telegraph 14 May 2011
Ban mobile phones and wireless networks in schools, say European leaders
By Richard Gray, Science Correspondent
http://www.telegraph.co.uk/technology/mobile-phones/8514380/Ban-mobile-phones-and-wireless-networks-in-schools-say-European-leaders.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2011年5月21日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/emf/110514_Telegraph_ban_mobile_phones_school.html


 欧州評議会(Council of Europe)議員会議(訳注1)は、この技術は人に”潜在的に有害な”影響を及ぼすという証拠を検証し、子どもを守るために早急な措置が必要であると結論付けた(訳注2)。

 報告書の中で、同委員会は、健康当局がアスベスト、喫煙、ガソリンに添加された鉛の危険性を認めるのが遅すぎたという過去の誤りを繰り返さないようにすることが重要であると述べた。

 報告書はまた、同様な技術を利用しており、イギリスの家庭で広く使用されているコードレス電話や赤ちゃん監視装置の潜在的な健康リスクを強調している。

 無線機器から放射される電磁波はがんを引き起こし、発達中の脳に影響を与えることができるという懸念が提起されている。

 無線機器が広がることに反対している運動家これらの発見にとびついた。

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 同委員会は、加盟国は下記の措置をとるべきであると結論付けた。
  • 携帯電話によって放射される種類のマイクロウェーブへの長期曝露のレベルに閾値を設定すること
  • 電磁界とその使用に関連する健康リスクが存在することを製品上で明確に示すこと
  • 教室及び学校の中で全ての携帯電話と無線ネットワークを禁止すること
  • 人の健康へのリスクについて子どもと若者を対象とする情報キャンペーンを実施すること
  • 危険性の少ないアンテナと携帯電話に関する研究を実施すること
 この結論は、電磁界への曝露は人の健康にほとんど、あるいは全くリスクを及ぼさないとする、世界保健機関(WHO)の助言(訳注3)と(英国)保健省の助言(訳注4)と矛盾する。

 ストラスブールにあり47カ国が加盟する欧州評議会はその意思を政府に強制はできないが、政策策定に強い影響力を及ぼし、その決定は協定や条約を通じて立法化されることがしばしばあった。

 学校での禁止を含んで、携帯電話や同様な機器からの”電磁界への曝露を削減するための合理的な全ての措置をとるよう”政府に要求する決議案は、欧州評議会の環境農業地域委員会(Committee on the Environment, Agriculture and Local and Regional Affairs)によって満場一致で採択された。

 委員会は、加盟国からの84人の国会議員と政治家からなり、副議長は、元副首相のプレスコット卿である。委員らは電磁界の影響に関する最新の研究をレビューし、結論に至る前に専門家から新たな証拠を得た。

 決議案は、承認のために欧州評議会の総会に送付される。

 公衆健康と無線通信の専門家らは、携帯電話とその他の無線機器によって引き起こされる危険性に関して意見が割れている。

 英国移動通信健康調査プログラム2007年(訳注5)は、携帯電話と有害影響との間に何も関係はないと述べたが、現在携帯電話の長期影響に関する詳細な調査を実施している。

 他の研究者らは短期の携帯電話使用とがんとの間に何も関係を見出さなかった。昨年発表された主要な疫学研究は、10年にわたる携帯電話の使用からがんのリスクは見出さなかった。

 移動通信健康調査プログラム(訳注6)の副議長レス・バークレイ教授は、”我々は携帯電話を非常に長い間は、使用しておらず、現在、長期間影響について調査をしているところである”と述べた。

 ”現在、有害影響を示す影響は非常に少ない。携帯電話が放射する電力はだんだん小さくなっており、国際非電離放射防護委員会により設定された制限(訳注7)より十分低い。学校での携帯電話と無線ネットワークの使用を禁止することは私の眼中にない”。

 20万人の携帯電話使用者の長期影響に関する国際研究(訳注8)を実施したインペリアル・カレッジ・ロンドンのポール・エリオット教授は、携帯電話が認識への影響と睡眠への影響を及ぼすかどうかについての疑いの可能性がある。

 ”携帯電話技術”は明らかに信じられないほどの便益と有用性があるが、我々はこれらの潜在的な健康影響を検討しなくてはならないので、それに関する研究を実施する責任がある。子どもたちに関しては、実際には研究は行なわれていないので、この分野でもっと多くの研究が必要である。それまでは、この助言は使用において過大ということではない”。

 電磁界からのリスクに関する意識向上に取り組むキャンペーン団体であるパワーウオッチは、この決議案を歓迎した。報道担当者は、”ヨーロッパ中の全ての政府がこれらの問題について、より予防的であることになるのに長い時間がかかった”と述べた。
 全国教育管理者協会の事務局長ラッセル・ホビーは、学校での携帯電話と無線ネットワークの禁止は大きな混乱をもたらすであろうと警告した。
 ”学校への影響は甚大である。ほとんどの学校は現在、Wi-Fi ネットワークを持っており、生徒と先生は携帯電話を持ってきている。多くの学校では携帯コンピュータの方向にシフトしており、生徒はラップトップパソコンを使用し、それを家に持ち帰り、それで宿題をすることができる。禁止はこれらを全て妨げることになる”。

 保健省の報道官は、”あなた方が期待するように、我々は利用可能な全ての科学的倉庫をレビュー中である。我々の指針(訳注4)は変わることなく同じである。子どもたちは、本当に必要な目的だけのために携帯電話を使うべきであり、通話は短くすべきである”。


訳注1 欧州評議会(Council of Europe)の概要/外務省
(上記ウェブサイトより)
(1)設立経緯・加盟国・活動分野
1949年、人権、民主主義、法の支配という共通の価値の実現に向けた加盟国間の協調の拡大を目的としてフランスのストラスブールに設立。加盟国は47か国(EU全加盟国、南東欧諸国、ロシア、トルコ、NIS諸国の一部(注1))、オブザーバー国は5か国(日本、米、加、メキシコ、バチカン)。

(2)主要組織 (イ)意思決定機関。加盟国外相で構成され、年1回会合(閣僚級、非公開)を開催。条約や協定、勧告の採択、予算承認等を行い、下部機関として各種運営委員会・専門家会合を設置。議長国は6ヶ月毎に加盟国が持ち回り。

(ロ)議員会議 (Parliamentary Assembly)

加盟各国の国会議員で構成される。議員は318名(予備議員318名)で、人口、GNP比で各国2〜18議席配分。年4回の本会議、10の一般委員会その他委員会を通じて活動。
立法権を有さない諮問・モニタリング機関。活動内容としては、閣僚委員会への勧告、新規加盟国の加盟時の誓約の遵守状況の監視。議長はメヴリュット・チャヴシュオール氏(Mr. Mevlut CAVU?O?LU、トルコ、2010年1月〜、任期1年で通常3期で交代)。

(ハ)欧州地方自治体会議(Congress of Local and Regional Authorities of Europe: CLRAE)
 地方レベルにおける民主化強化を目的とする、閣僚委員会及び議員会議の諮問機関。各国地方代表議員で構成され、各国地方代表議員で構成され、議員318名(予備議員318名)。

(ニ)欧州人権裁判所 (European Court of Human Rights)
 欧州人権条約(1953年発効)及び同第11議定書(1998年発効)により創設された人権救済機関。長官はジャン=ポール・コスタ氏(Mr.Jean-Paul Costa、仏、2007年〜(任期3年))。

(ホ)事務局 (Secretariat)


訳注2
欧州評議会 議員会議(PACE) 2011年5月6日 電磁界の潜在的な危険性及び環境への影響 報告書/決議案
Parliamentary Assembly Council of Europe (PACE)
Doc. 12608 6 May 2011
The potential dangers of electromagnetic fields and their effect on the environment
http://assembly.coe.int/main.asp?Link=/documents/workingdocs/doc11/edoc12608.htm

訳注3
WHO Media centre, Fact sheet No.304, May 2006
Electromagnetic fields and public health Base stations and wireless technologies http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs304/en/index.html

訳注4
Mobile phonesand base stations Health
advice on using mobile phones
http://www.dh.gov.uk/prod_consum_dh/groups/dh_digitalassets/documents/digitalasset/dh_124899.pdf

訳注5
Report by Britain's Mobile Telecommunications and Health Research Programme in 2007
http://www.mthr.org.uk/documents/MTHR_report_2007.pdf

訳注6
Mobile Telecommunications and Health Research Programme
http://www.mthr.org.uk/

訳注7
ICNIRP Guidelines
GUIDELINES FOR LIMITING EXPOSURE TO TIME-VARYING ELECTRIC, MAGNETIC, AND ELECTROMAGNETIC FIELDS (UP TO 300 GHz)
http://www.icnirp.de/documents/emfgdl.pdf

訳注8
COSMOS study
http://www.ukcosmos.org/



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