EHN 2014年10月14日
BPA が大気中に:
オハイオ、インディアナ、テキサスの
製造工場が上位排出

ブライアン・ビエンコスキー(EHN スタッフライター)

情報源:Environmental Health News, October 14, 2014
BPA in the air: Manufacturing plants in Ohio, Indiana, Texas are top emitters
By Brian Bienkowski, Staff Writer, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2014/oct/bpa-emissions

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年10月18日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_141014_BPA_in_the_air.html


 日用品中のビスフェノールA(BPA)への人々の暴露についての懸念が増す中で、BPA はまた製造プラント近くの大気をも汚染している。アメリカの会社は2013年にこの内分泌かく乱化合物を約26トン排出した。

 研究はまだ少ないが、専門家らは大気が伝達するBPAは、ある人々にとって潜在的に危険な暴露源になり得ると警告している。米環境保護庁の有害物質排出目録(TRI)によれば、BPA の排出を報告している72の工場のうち、最大の排出州はオハイオ、インディアナ及びテキサスである。

 地域社会の近くに住む人々が暴露しているものについて測定した人はだれもいない。しかし、その暴露は局所的で他の BPA 源より小さそうである。

 BPA は環境中で急速に分解する。しかしそれは肺に浸透する粒子に付着することがあり得ると、カリフォルニア大学アーバイン校の生物学教授ブルース・ブルムバーグは述べた。

 ”化合物の吸入は、通常はほとんどの人々が BPA について考慮しないが、大きな暴露経路である”と彼は述べた。

 ポリカーボネート・プラスチック、食品缶づめ内面ライニング、そしてある種の紙レシートを作るために用いられる BPA は、テストしたほとんど全ての人々から検出される。動物テストによれば、低用量暴露はホルモンの変化をもたらし、その暴露は、不妊、心循環系疾患、肥満、がんを含む広範な人の健康影響に関係している。

 この種の唯一の研究において日本の研究者らは、BPA は世界中の大気中のいたるところに存在することを報告した。彼らは、その排出はプラスチックの製造と焼却に由来するのではないかとを疑っている。

 アメリカにおいては、EPA のデータベースによれば、BPA の大気排出の54%が化学物質製造に、21%と20%がそれぞれ金属製造と金属加工に由来する。さらに、アメリカの会社は2013年に BPA 3,313 ポンド(約1,500 kg)を地表水に排出したことを EPA のデータベースが示している。

 大気に排出される BPA の量は近年低下している。BPA 排出を報告する会社の数は過去10年間ほとんど同じであるが、2013年には総トン数は2012年から41%減少しており、10年前と比べると約66%の減少である。

 化学物質製造業界を代表する米国化学工業協会(American Chemistry Council)の報道担当キャスリン St. ジョーンは、そのデータは周囲の地域社会にいる人々が暴露しているかもしれないものを反映していないと述べた。人々のプラントへの近さのような要素及びその排出が連続的なのか又は断続的なのかということは人々の暴露を決定する時に重要である。

 St. ジョーンは、”吸入曝露に懸念があるという証拠は何もない”と付け加えた。もし BPA が吸入されれば、肺の中で吸収されるのか、そしてもし吸収されるならそれは代謝されるのかどうかというように、何が起きるのかに関するどのような情報も研究は提供していない。

 しかし、内分泌かく乱化合物を研究しているミズーリ大学の准教授ウェード・ウェルションズは、空気中に浮遊しているBPAは、皮膚からはもちろん、肺を通じて吸収することはあり得るであろうと述べた。

 ”経口暴露だけの場合より、吸入及び皮膚吸収の両方の場合の方が、もっと多くの BPA を血液へ送り込むであろうと彼は述べた。

 ブルムバーグ及びウェルションズは、これらの経路は腸や肝臓のような代謝器官をバイパスすることがあり得るので、大気伝達暴露は食品暴露よりもっと危険かもしれないと述べた。

 肝臓は、物質を代謝するのに重要な器官であるが、肺は吸収であり代謝ではない”とウェルションズは述べた。

 BPA を吸入することによる潜在的な健康影響を調査した人はいない。規制当局は、潜在的な影響を分析する時には経口暴露だけを対象とするとブルムバーグは述べた。

 BPA 排出が最大のいくつかの地域社会はまた、産業プラントに由来する他の有害物質も多い場所であろう。

 EPA により取りまとめられた産業側の報告によれば、テキサス州のディアー・パークでは、4,100ポンド(約1,900kg)の BPA と280万ポンド(約130万kg)のその他の有害物質が大気中に出ており、オハイオ州のディファイアンスでは、6,600ポンド(約3,000kg)の BPA と387,454ポンド(約176,000kg)のその他の有害物質が大気中に出ている。ダウ・ケミカルのプラントがあるテキサス州のフリーポートは、報告されている昨年の BPA 大気排出が905ポンド(約410kg)であり、他の有害物質は174万ポンド(約80万kg)であった。

 ポリカーボネート・プラスチックや食品缶づめのような消費者製品からの暴露に比べて、大気伝達 BPA についての懸念は小さかった。”しかし、この低いレベルの懸念は、比較的少ないデータに基づいていた”と、BPA の健康影響を研究しているマサチューセッツ大学アマースト校の准教授ローラ・バンデンバーグ(訳注1)は述べた。”このことは我々の分野では詳細に議論されたことがないが、それは議論されるべきである”。

 大気に BPA が排出された時に BPA に何が起きるのかに関する多くの研究はない。BPA は明らかにすぐに分解するが、それはまたダスト粒子に付着することができるとバンデンバーグは述べた。

 研究者らは、2011年に、マーレイ州立大学及びアルバーニ大学及びその周辺の家、大学の建物、及び研究室内のダスト中の BPA についてテストした。彼らは、摂食はやはり主要な暴露経路であるが、人々のダストを通じての BPA 暴露は、実験動物に健康問題を引き起こすのと同じ低濃度であると見積もった。BPA がどの様にダスト中に入り込むのかは明確ではない。それは屋内の発生源からの可能性がある。

 この研究を率いたマーレイ州立大学の学生スダン・ロガナアンは、ダストを通じての人々の一日の暴露の見積もりは、食物暴露に比べて低い。しかし彼女は、”成人と幼児の平均的なダスト吸入を見た時に、幼児への懸念の方が高い。幼児は床の上にいて、てを口に持っていく”と付け加えた。

 ブルムバーグは、大気の汚染監視はBPAのテストまで広げるべきであると述べた。

 ”粒子汚染物質、オゾン、排気ガス中の主要な成分などの物質の吸入曝露を研究する人は多いが、BPAのような化学物質暴露を研究する人は全く少ない”とブルムバーグは述べた。それは現在、大きな未開の分野である”。


訳注1:ローラ・バンデンバーグ


化学物質問題市民研究会
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