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EHN 2013年6月27日
EPA 低用量ホルモン影響に対する
古い化学物質テスト手法を弁護する


情報源:EHN June 27, 2013
EPA defends chemical testing of low-dose hormone effects
By Brian Bienkowski, Staff Writer, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2013/epa-low-dose

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年7月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/130627_EPA_defends_chemical_testing_of_low-dose.html

 米環境保護庁(EPA)は、ホルモンかく乱化学物質の現状のテスト手法は健康を危うくするかもしれない低用量影響を検出するために適切であると結論付けた。

 これは昨年3月、環境中及び消費者製品中に見出される多くの化学物質の安全性をテストするための政府の数十年の時代遅れの戦略を批判した12人の科学者により書かれた報告書への返答として出されたものである。

 科学者らは特に、”非単調用量反応”と呼ばれる現象に注目した[訳注1]。この現象は、ホルモン様化学物質はしばしば、典型的な挙動を示さないことを意味する。それらは低用量で健康影響を及ぼすことができるが、高用量では影響を及ぼさないか、又は異なる影響を示す。EPA はしばしば、実験動物を高用量で暴露させ、それから人々や野生生物が暴露する低用量に外挿するというテスト手法で化学物質のリスクを評価している。

 エストロゲン(女性ホルモン)、テストステロン (男性ホルモン)又は甲状腺ホルモンなどと同様な作用をする数十の物質が、環境、食品、農薬、消費者製品などの中に見出される。これらの化学物質が微量で人々を害するという考えに議論がある。

 先週完成したEPAの報告書案”科学の先端(State of the Science)”は、そのような低用量反応は”生物学的なシステムでは起きるが、一般的には共通ではない(not common)”と結論付けた。

 ”実験動物でみられる低用量影響が、エストロゲン、アンドロゲン、又は甲状腺のもたらす結果によって人や野生生物の集団に見られるかもしれない有害影響を予言するという再現可能な証拠は、現在、存在しない”と同報告書は述べた。

 ”したがって、現在のテスト戦略は、エストロゲン、アンドロゲン、又は甲状腺経路の有害な混乱の可能性を有する化学物質を誤って特性化することはなさそうである”。

 この報告書は、内分泌かく乱化学物質に関する科学をレビューした食品医薬品局(FDA)、国立環境健康科学研究所(NIEHS)、及び国立子ども健康発達研究所(NICHD)の科学者と管理者からの情報をもって、EPAの役人により書かれた。それは、科学担当のEPA副長官 Robert Kavlock により署名された。

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タフツ大学のローラ・バンデンバーグは、現在のテスト手法を批判した報告書の主著者であった。
 連邦政府チームは昨年6月に、それより数か月前にタフツ大学の研究員である主著者ローラ・バンデンバーグらにより発表された”科学者らの報告”に対応するために、委託された。 Environmental Health News の創始者であり、Environmental Health Sciencesの主任科学者であるピート・マイヤーズもローラ・バンデンバーグらの報告書の上席著者であった。

 EPAの報告書案は、米国科学アカデミーの審議会でピアレビューされるであろう。

 化学会社を代表するアメリカ化学産業協議会(ACC)は、EPAの結論を称賛した。

 EPAは”科学者の主流が長年述べてきたこと、すなわち内分泌かく乱と有害影響をもたらすとする非単調低用量暴露の噂の科学的証拠は、仮にあったとしても非常に弱いと断言している”−とこの産業団体は事前に用意した声明書の中で述べた。

 バンデンバーグは、これらの化学物質のリスクをどのように評価するかについての議論は残るが、非単調用量反応は存在することをEPAが認めたことは、長年の科学の頂点を極める前進の第一歩であると述べた。

 しかし彼女は、EPAが新たな報告書の中で、いくつかの”奇妙で多分政治的な決定”をしたと付け加えた。

 高用量テスト手法が低用量における安全性を予測することができるというEPAの信念は、”ホルモンがどのように作用するかについての我々の知識と全く反対のものである”と、バンデンバーグはメールでEHNに述べた。”それら[内分泌かく乱化学物質] は、高用量において明らかに有毒であるが、低用量ではホルモンのように完全に異なる作用をする”。

 2012年の報告書で、バンデンバーグと彼女の仲間らは、ビスフェノールA(BPA)−ポリカーボネート・プラスチックやいくつかの食品缶詰の内面、紙レシートなどに見出される−のような化学物質や、トウモロコシで最もよく使用されている農薬アトラジンを人の健康を守るには不適切にテストされている化学物質の例として挙げた。

 ”内分泌かく乱化学物質の低用量が人の健康に影響を及ぼすことは、環境暴露が人の疾病と障害に関連していることを疫学的研究が示しているように、もはや推測ではない”とジャーナル『Endocrine Reviews』に発表された彼らの報告書の中で科学者らは述べた。

 彼らは、胎児から年を取った成人まで、不妊、心臓疾患、肥満、がん、そしてその他の障害を含んで、広範なヒト健康への影響の証拠を例証した。

 EPAは、アトラジンに関して、世界中の数十人の著者らによる、両生類、爬虫類、魚類、鳥類、哺乳類へのこの化学物質の一貫した低用量影響を示す新しい発表を使用すべきであったのに、時代遅れの研究を用いたとバンデンバーグは述べた。

 前立腺へのBPAの低用量影響の彼らの議論もまた、”約10年古いものであり、欠陥のある実験設計とポジティブ・コントロールに失敗している産業界から金の出ている研究に信任状を与えている”と、彼女は述べた。


訳注1:低用量暴露関連情報


化学物質問題市民研究会
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