EHN 2014年4月29日
ある調査が
BPA への暴露で流産リスクが増大することを発見

解説:ブライアン・ビエンコースキー、EHN スタッフ・ライター

情報源:Environmental Health News, April 29, 2014
Miscarriage risk rises with BPA exposure, study finds
By Brian Bienkowski, Staff Writer, Environmental Health News
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/news/2014/apr/bpa-miscarriages

オリジナル:Conjugated bisphenol A (BPA) in maternal serum in relation to miscarriage risk
Ruth B. Lathi, M.D.email, Cara A. Liebert, M.D., Kathleen F. Brookfield, M.D., Ph.D., M.P.H., Julia A. Taylor, Ph.D., Frederick S. vom Saal, Ph.D., Victor Y. Fujimoto, M.D., Valerie L. Baker, M.D.
http://dx.doi.org/10.1016/j.fertnstert.2014.03.024

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年5月3日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_140429_Miscarriage_risk_rises_with_BPA_exposure.html


 新たな研究によれば、妊娠初期に高レベルのビスフェノールAに暴露した女性には、最も低いレベルで暴露した女性よりも83%大きな流産リスクがある。

 科学者らはこの新たな調査は、ポリカーボネート・プラスチックを作るために用いられ、食品缶詰や感熱紙レシートなどで使用されている、いたるところで見出される低レベルのこの化学物質が人の生殖に影響を与えるかもしれないという証拠に新たに加わるものであると述べた。

 この調査には、スタンフォード大学生殖クリニックを受精後約4週間以内に訪れた115人の妊婦が関わった。研究者らによれば、女性らの血中でBPAが多く検出されるほど、流産のリスクが高まる。

 ”BPAは、胎児の発達に有害影響を及ぼすことができるので、不妊のカップル又は流産を再発する人はBPAへの暴露を減らすようにした方が良い”と、スタンフォード大学の産科・婦人科准教授ルス・ラティ博士をリーダーとする科学者らは書いた。この調査は、ジャーナル『生殖と不妊』(journal Fertility and Sterility)に発表された。

 しかしこの新たな調査は、BPAが流産を引き起こすということを意味するものではない。この調査の結果は妊娠初期のひとつ又はふたつの血液テストに基づいおり、この結果が再現できるかを確かめるためにもっと多くの女性がテストされる必要があるであろう。

 さらに、参加した女性らは、生殖医療センターで治療を受けていたので、もともと高い生殖リスクがあったようである。このことは、調査結果は一般集団に必ずしも当てはまらないかも知れないということを意味する−とロチェスター大学医学センターの産科・婦人科准教授エミリー・バーレットは述べた。彼女はこの研究には関わっていなかった。

 115人中68人の女性が流産したが、それは米国人口における流産比率の概略3倍である。

 ”これらは生殖医療を求めている女性なので、典型的な集団ではない”と、バーレットは述べた。

 限界はあるが、これはこの化学物質(BPA)を妊娠問題に関連付ける、”もうひとつの証拠”であると、バーレットは述べた。

 2005年、日本における小さな調査が、 妊娠第1三半期の流産を3回又はそれ以上経験した45人の女性は、妊娠問題の経験がない32人の女性より血中のBPAが3倍以上高かったことを見出した(訳注1)。

 この新たな調査では、科学者らは女性のBPA測定に基づき、彼女らを4つのグループに分け、彼女らの流産率を比較した。最も高い暴露グループの女性らは流産のリスクが83%高かったが、2番目と3番目のグループの女性らは58%及び30%のリスク増大であった。

 ”この調査は、時間のある一点で血中のBPAを測定し、その限定されたデータを健康影響−この場合は流産−と統計的に関連付けることを試みるという他の調査と同じ欠陥を持っている”と、化学物質製造者を代表する米国化学工業協会(ACC)の報道担当キャスリン St. ジョーンは用意された声明の中で述べた。

 ほとんどの流産は、妊娠期間の最初の7週間以内に生じる。この新たな調査でテストされた初期段階は、暴露を測定するために”確かに非常に重要なひとつの期間”であると、バーレットは述べた。

 アメリカでテストされた人々の約90%が体内にBPAを持っている。

 バーレットは、ほとんどの研究者らは人のBPAを測定するための現在の標準は、自由形式と共役形式の両方を含む総BPAを求めるために尿をテストすることであるということに合意していると述べた。自由BPAはエストロゲンに関連し、体に作用する。ラティと同僚らは血液中の共役形式だけを測定した。

 この調査の共同著者であるミズーリ大学教授フレデリック・ボンサールは、人々の体内中のBPAのどの様な測定にも賛否両論があると述べた。血液サンプルは環境からの自由BPAによって汚染されやすいが、この調査は共役BPAだけを見ることによってこの問題を回避したと、彼は述べた。

 微量のBPAは人々を害するかどうかについて、科学的論争が現在ある。米・食品医薬品局(FDA)は、人々が食品を通じて暴露する低用量では安全であると述べた。FDAは、BPAは低用量を投与されたラットの健康に影響を与えないとする調査を今年の初めに発表した。しかし大学・研究機関の研究者のある者らは、このFDAの調査は欠陥があると指摘した。

   他の動物実験はBPAを、染色体異常子宮内膜症子宮発達の変化を含む女性の生殖問題に関連づけた。

 2008年、連邦機関である国家毒性計画(NTP)は、妊婦のBPAへの暴露は胎児又は幼児を害するという”わずかな懸念”があると決定した。2年後、環境保護庁は、それは化学物質の懸念であると宣言してBPAをさらに調査するという行動計画を発表した。

 知られている流産のリスク要素には、肥満、母親のホルモン、生殖器官及び免疫系の問題、喫煙、そして薬物とアルコールの乱用がある。

 ラティと同僚らは女性がどのようにしてBPAに暴露したのかについて調査しなかった。彼女は、将来研究者らが妊娠中にBPAを回避することが流産リスクを低下させるかどうか検証したいと望むであろうと述べた。

 ”これらは、我々が普通であると考える暴露をしている普通の妊婦である”とラティは述べた。”我々の患者が米国中の他の誰よりも高い暴露をしていると考えなければならないようなことは何もない”。


訳注1
Our Stolen Future (OSF)による解説 ビスフェノールAへの暴露は習慣流産に関連がある



化学物質問題市民研究会
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