EHN 2014年2月11日
農薬はテストで明らかになるより
もっと有害かもしれないことを
研究が発見

解説:ジョン・ピーターソン・マイヤーズ

情報源:Environmental Health News, Feb 11, 2014
Pesticides may be more dangerous than testing reveals, study finds
Synopsis by John Peterson Myers
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2014/Feb/
pesticides-are-more-dangerous-than-testing-of-active-ingredient-alone-reveals/


オリジナル:Mesnage, R, N Defarge, J Spiroux de Vendomois, and G-E Seralini. 2014. Major pesticides are more toxic to human cells than their declared active principles. BioMed Research International 2014 Article ID 179691
http://dx.doi.org/10.1155/2014/179691

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年2月16日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_140211_Pesticides_may_be_more_dangerous.html


 農薬のテストは活性成分に焦点を当てる。しかし実際に売られる農薬に多くのその他の”不活性成分”が加えられる。これらの添加物は現在の安全テストが示すよりもっと農薬を有害にすることができることを新たな研究が暗示している。

 フランスの科学者らのチームは、商業的に売られている農薬の活性成分だけに焦点を当てた研究はその潜在的な危険性を著しく過小評価すると結論付けた。

 その研究は、農薬中の不活性成分は活性成分の効果を強め、時には1,000倍とすることができることを示唆している。テストされた9種のうち8種の商業製品は、それらの活性成分単独の場合より数百倍の毒性があった。

 通常、農薬の安全性テストは、害虫を標的にする化学物質である活性成分に関してだけ実施される。しかし、消費者や農民に売られる農薬は、”不活性”であるとみなされる他の化学物質との複雑な混合物であり、このことはこれらの添加物は生物学的な影響を及ぼさないかのように思わせる。

 カーン大学(University of Caen)の科学者らは3つのヒト細胞株を3つの除草剤、3つの殺虫剤、及び3つの殺菌剤の活性成分に暴露させた。それから彼らはその細胞株を”不活性”成分を含む商業用農薬に暴露させ、その結果を比較した。

 新たな発見がもし確認されたなら、農薬の安全性に著しい関わりを持つことになるが、それは不活性成分が一般的に農薬の効果を高めるなら、安全基準は人の健康を保護しないかもしれないからである。

 この研究では、殺菌剤は概して最も有毒であり、次に除草剤が続き、それから殺虫剤という順序であった。

 BioMed Research International 誌に発表されたこの研究によれば、モンサントにより販売されている活性なグリホサートを使用する商業除草剤ラウンドアップは、テストされた除草剤及び殺虫剤の中で最も有毒であった。芝生、庭、そして大豆やトウモロコシなどの作物の雑草を枯らすために用いられるグリホサートは、アメリカで最も広く使用されている除草剤のひとつである。

 除草剤 Matin を除いて、商業用調剤はそれらの活性成分単独より毒性が強かった。同研究によれば、テブコナゾール(訳注:ドイツ・バイエル社によって開発されたトリアゾール系殺菌剤)は、商業用農薬と活性成分との相違が最も大きく、調剤は活性成分だけより1,000倍以上有毒であることを示した。米・環境保護庁はテブコナゾールを可能性ある発がん性物質としてリストし、スウェーデン化学物質庁は、可能性ある内分泌かく乱物質として分析している。

 同研究中の他の商業用農薬には、ネオニコチノイド農薬コンフィドール(イミダクロプリド)及びポリセクト(アセタミプリド)、除草剤スターラン(フルロキシピル)、そして殺菌剤 Eyetak(プロクロラズ)が含まれる。

 この研究は、単純で短期間で比較的感度の低い毒性測定−何パーセントの細胞が生き残るかという細胞生存能力に依存したので、これらのデータを安全基準を設定するために使用することはできない。多くの有害影響は細胞死を引き起こさないので、農薬のテストは内分泌かく乱性のようにもっと感度の高いエンドポイントを用いる必要がある。


訳注:関連記事
EHN 2009年6月22日 除草剤がヒト細胞を殺す ”不活性”成分に関する議論が激しくなる



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る