EHN 2013年3月5日
BPA は、出生前の成長の遅れに関連する

情報源:Environmental Health News, Mar 05, 2013
BPA is associated with slower growth before birth
Synopsis by Craig Butt
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2013/01/
2013-0206-dutch-bpa-low-fetal-weight-head-size/


オリジナル:Snijder, CA, D Heederik, FH Pierik, A Hofman, VW Jaddoe, HM Koch, MP Longnecker and A Burdorf. 2013. Fetal growth and prenatal exposure to bisphenol A: The Generation R Study.
Environmental Health Perspectives http://dx.doi.org/10.1289/ehp.1205296

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年3月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_130305_BPA_slower_growth.html


 オランダの研究によれば、ビスフェノールA(BPA)は人々の体内で普通に見られる濃度で、胎児の成長を遅らせるかもしれない。妊娠中に母親のBPAベルが高かった赤ちゃんは、低いBPAレベルの母親から生まれた赤ちゃんに比べて頭が小さく体重も20%低い。BPAは、ポリカーボネート・プラスチックを製造するために使用され、食品缶詰の内面ライニングやいくつかの感熱紙領収書などで使用されている。カリフォルニア州は最近、BPAを生殖毒性物質としてリストすることを意図している。


 この研究は、人間における胎児期のBPA曝露と成長の間の関係を検証した数少ない研究のひとつである。この研究がユニークである点は、BPAが妊娠中に複数回、測定されたということであり、それは、1回だけのサンプルに基づく以前の研究より曝露を正確に見積もることができ、強い結果をうることができるということである。BPAのレベルが高い女性から生まれた赤ちゃんは、BPAのレベルが最も低い母親から生まれた赤ちゃんより、頭が小さく、胎内での成長も遅かった。BPAのレベルが最も高い母親から生まれた赤ちゃんは、頭のサイズは11%小さく、成長はは20%遅かった。

 女性に見られた曝露レベルは、アメリカとカナダの全国健康調査で報告された典型的なレベルであった。

 BPAは、胎内でエストロゲン(女性ホルモン)の様に振舞うことができる内分泌かく乱化学物質である。専門家らは、妊婦、発達中の胎児、及び成長中の子どもの曝露を特に懸念している。人と動物の研究は、いたるところを汚染しているこの化学物質と生殖、行動、及び内分泌影響とを関連付けている。

 母親のBPA曝露と胎児の体重増加を検証したいくつかの研究には矛盾があった。そのひとつの理由は、BPAは人の体内から素早く排出されるので、測定するのが難しいということかもしれない。

 この研究のユニークな点は、その懸念に目を向けたということである。尿中のBPAレベルは妊娠中、1〜3回測定された。人の体内中のレベルは変動し、度々変化するので、測定の回数を多くすれば、ある期間を通じて変動を平滑化することにより、BPA曝露の見積り精度を向上させることができる。

 興味深いことに、母親のBPAレベルと胎児の成長の関連は、母親の尿が3回測定された場合にのみ、観察されたということである。

 BPAは、ポリカーボネート・プラスチックや樹脂を製造するために使用され、いくつかのプラスチック製食品/飲料容器、食品缶詰の内面ライニング、感熱紙領収書、歯科詰め物などによく使用されてる。BPA含有製品の使用は広範に行なわれているので、ほとんど全ての人が体内に小量のBPAをもっている。

 近年、BPAの有害な健康影響についての懸念が、、特に幼児や子ども用製品中での使用の削減をもたらしている。さらに、カリフォルニア州は1月下旬に、BPAを生殖毒性物質であると宣言することを意図していると発表した。

 研究対象グループは、オランダのロッテルダムの219人の妊婦からなっていた。尿は、2004年2月と2005年11月の間に妊婦から収集された。尿中のBPAは、99人の女性が1回だけ、40名が2回、80名が3回測定された。胎児の大きさは、第二及び第三周産期に超音波画像から決定された。出生時に体重、身長、及び頭囲が測定された。成長は出生前及び出生後の、これらの計測値から計算された。

 研究者等は、母親の年令、喫煙、教育、及び民族性のような個人的及び社会経済的な要素を考慮した。

 この研究の限界は、BPA曝露だけが考慮され、女性の体内の他の内分泌かく乱化学物質は測定されなかったということである。

 将来の作業は、ビスフェノールSやビスフェノールAF(訳注1)のようなBPA代替物質の胎児の成長への影響を調べことである


訳注1


化学物質問題市民研究会
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