EHN 2012年11月26日
新たな防汚化学物質(PFBS)の血中レベル
6年毎に倍増


情報源:Environmental Health News, November 26, 2012
New stain repellent chemical doubling in blood every 6 years
By Craig Butt and Wendy Hessler
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2012/08/
2012-1120-fluorinated-stain-repellent-rises-in-blood/


オリジナル:Glynn, A, U Berger, A Bignert, S Ullah, M Aune, S Lignell and PO Darnerud. 2012.
Perfluorinated alkyl acids in blood serum from primiparous women in Sweden:
Serial sampling during pregnancy and nursing, and temporal trends 1996-2010.
Environmental Science and Technology
http://dx.doi.org/10.1021/es301168c

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年10月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_121126_PFBS_doubling_in_blood_every_6_years.html


 廃止された防汚剤PFOSは、人体内で着実に減少しているが、その代替品の人体内レベルは急速に上昇しており、6年毎に倍増していることをスウェーデンの研究が示している。女性のパーフルオロブタンスルホン酸(PFBS)の血中レベルは、1996年から2010年の間、毎年11%上昇した。これらの曝露はまだPFOSのレベルよりはるかに低いが、潜在的な影響があるのかどうか分かっていない。

何をしたか?

 この研究は、スウェーデンのウプサラ (Uppsala)地域の妊婦と授乳中の女性の血中及び母乳中の残留性汚染物質の時間的傾向を検証する、もっと大きな調査の一部である。

 血液サンプルは、出産3週間の後、19歳から41歳までの初産婦から集められた。サンプルは、2003年と2005年を除く1996年から2010年まで、毎年、収集された。毎年、何人かの個人の血液サンプルが分析のために共同管理され、3つの共同管理サンプルが分析された。

 調査は、PFBS 及び PFOSを含んで13種類のパーフルオロアルキル酸(PFAAs)の調査が実施された。この調査はまた、最終的にはPFOSに分解することが知れれているパーフルオロオクタンスルフォン酸塩(FOSA)も測定した。

 この調査のユニークな点は、非常に低いレベルでPFBSを測定することができたということである。それは研究者がPFBSの経年傾向を検出することを可能とする改善された分析技術のおかげであった。

 時間的な傾向の検証に加えて、この調査はまた、妊娠中及び出産後の異なる段階におけるPFAAの傾向を調査した。

何がわかったか?

 この調査は、スウェーデン女性のPFBS血中濃度は1996年から2010年の間、毎年11%増大したことを示した。そのレベルは6.3年毎に2倍になった。これは人体中のPFBSが増加していることを示す最初の調査である。

 しかし、同じ期間、PFOSのレベルは毎年8.4%下降した。この調査はまた、パーフルオロデカンスルホン酸(PFDS)、 PFOA 及び FOSA のレベルが減少していることを示した。

 対照的に、二つのパーフルオロカルボン酸(PFCAs)であるパーフルオロノナン酸(PFNA)及びパーフルオロデカン酸(PFDA)の血中レベルは1996年から2010年の間にそれぞれ 4.3%t 及び 3.8%、増大した。

 この調査はまた、鎖がより長いパーフルオロカルボン酸(PFCAs)であるペルフルオロドデカン酸(PFDoA)、ペルフルオロトリドデカン酸(PFTrA)、及びペルフルオロテトラドデカン酸(PFTA)も探したが、PFCAsは女性の血中には見つけることができなかった。

何を意味するか?

 防汚剤として使用されたPFOSベースのフッ素化合物に代替するパーフルオロブタンスルホン酸(PFBS)は、毎年6%の増加で人体に蓄積している。これは人体中のPFBSが増加していることを示す最初の調査である。

 この調査は、スウェーデン女性のPFBSレベルは急速に増加していることを示した。このことは、人間はPFBSおよびその前駆物質に広く曝露していることを意味する。これらの化学物質への曝露は1996年から2010年の間に劇的に増大した。

 超えらの発見は、PFBSは非常に半減期が短い(26日)ので人体には蓄積しないと考えられていたので、驚きであった。しかしこの新たな調査は、PFBSは警告すべき速さで人対中に蓄積していることを示している。

 しかし、PFBSのレベルは、まだPFOSよりも75倍低い。

 この調査は、増加するPFBSレベルに関連する健康影響があるのかどうかを調べていない。PFBSに関する毒性学的調査はほとんどなく、その毒性影響は一般的にPFOSやPFOAより低い(Lieder et al. 2009)。

 PFBSベースの化学物質は、3MがPFOSベースの化学物質の製造を止めてから、その代替として2002年に導入された。今回の調査は、PFBS レベルは2002年までは増大を始めていなかったことを示している。恐らく、このPFBSの血中レベルの増大は、2002年以降の商業生産に於けるPFBS の前駆物質使用との増大と環境中への放出の増大の反映である。

 この新たな調査はまた、PFOSとFOSAレベルがスウェーデン女性の血中で減少していることを示した。FOSAは、PFOS前駆物質が体内で代謝されるときに形成される。

 これらの結果は、2001年の3MのPFOS禁止は、PFOS血中レベルに急速な影響を及ぼしたことを示している。アメリカの研究(Kato et al. 2011; Olsen et al. 2012)及びノルウェーの研究(Haug et al. 2009)もまた、3MのPFOS禁止後、PFOSの血中レベルが減少していることを示した(訳注1)。

 対照的に、PFNA とPFDA のレベルはスウェーデン女性で増大していることが示された。これらの化学物質は、ある種のポリマーや表面活性剤で使用されているフッ素テロマー系化合物の分解物質である。それらは、PFOS関連化学物質と同様な用途で使用される。さらに、PFNAは ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の製造に使用され、わずかな量が最終製品中から検出される。フッ素テロマー化学物質は3MのPFOS禁止の3MのPFOS禁止後に増大している。これらの化学物質の血中レベルの増大は、商業製品注の前駆物質の使用の増大が最もその原因であるように見える。

 この調査はスウェーデンの女性だけを調査したので、世界の他の地域での傾向を確認する必要があるであろう。それはフッ化化合物の使用は世界の異なる地域で異なるからである。例えば、中国は2003年にPFOS関連化学物質の製造を開始した。中国に於けるそれらの生産は世界に対する新たなPFOSの汚染源である。

 ある化学物質のレベルが我々の体内で増加するということは我々の曝露が増大していることを意味するので、科学者らは懸念している。しかし、汚染レベルが野生生物や人間に有害影響を引きこすほどであるかどうかを調べる必要がある。PFBSレベルの増大が人の健康に影響を及ぼすかどうかを調査するために将来の研究が必要である。


訳注1
米化学会 ES&T サイエンス・ニュース 2008年5月21日 PFOS 廃止が問題を精算



化学物質問題市民研究会
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