EHN 2011年9月7日
紫外線ブロック化学物質は
ヒト細胞内及びマウスで生成される
男性ホルモンを低下させる


情報源:Environmental Health News, September 7, 2011
UV blocker curtails male hormone made in human cells, mice
Synopsis by Brandon Moore
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2011/08/
2011-0906-uvblocker-reduces-testosterone/


オリジナル論文:
Kim, Y, JC Ryu, H Choi and K Lee. 2011. Effect of 2,2,’4,4’-tetrahydroxybenzophenone (BP2) on steroidogenesis in testicular Leydig cells. Toxicology http://dx.doi.org/10.1016/j.tox.2011.06.013.

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年9月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/
ehn_110902_DEHP_alters_memory_system_in_rat_brains.html


 身体手入れ用品を安定させるために添加されている紫外線ブロック化学物質が内分泌かく乱物質として働き、男性の生殖ホルモンの生成を低下させる。

 研究者等は、様々な化粧品や身体手入れ用品の中に見出される BP2と呼ばれている紫外線(UV)放射ブロック化学物質が、培養されたヒト睾丸細胞とオスマウスの両方で、テストステロン(訳注:男性ホルモンの一種)ホルモンの生成を低下させることを示した。

 これは、BP2曝露が、ヒト細胞を含んで、哺乳類における生殖プロセスに影響を与えることができることを報告した最初の研究である。以前の研究の結果と統合すると、新たな発見は、身体手入れ用品を安定させるために使用された時に、BP2が内分泌関連健康リスクを及ぼすかどうかを理解するために、今後、多くの研究が必要であることを示唆している。

 ベンゾフェノン(BP)化学物質は、紫外線光を吸収するのでフィルター効果がある。 BP2 として知られるものは、化粧品や身体手入れ用品中に加えられているが(訳注1)、それは製品が太陽光により分解するのを防ぐためである。香水、口紅、髪の毛や肌の手入れ用品、プラスチック包装などがこのBP2 を含む。BP2 はヒトの尿から検出されているので、ヒトはそれに曝露していることがわかる。

 以前の研究は、BP2が生殖に重要なホルモン、とりわけ甲状腺ホルモンを阻害することができることを示唆している(訳注2)。ヒト細胞系での研究によれば、この化学物質は甲状腺ホルモン生成に関わるある重要な酵素を不活性にすることができる。多くの機能の中のひとつは、甲状腺ホルモンはオスの睾丸中のテストステロン生成を促進し、実験動物及びヒト血中で巡回するレベルを増大することである。

 しかし、BP2 がヒトと哺乳類動物における生殖ホルモンにどのように影響を及ぼすのかについて扱った研究はほとんどなかった。したがって研究者等は、BP2 が甲状腺ホルモン信号をかく乱し、その結果、睾丸のテストステロン生成能力を変えることができるかどうかについて調査した。

 二段階アプローチが取られた。研究者等は実験室でヒト睾丸細胞をBP2に曝露させた。彼等はまた、5週齢のオスのマウスに50mg/kg体重のBP2を注射し、睾丸と血液をサンプル採取した。実験室での細胞(ヒト)とマウスの睾丸の両方が遺伝子及びタンパク質のマーカーについて分析された。テストステロンとプロゲステロン(訳注3)のホルモンが実験室での細胞(ヒト)とマウスの睾丸及び血液で測定された。

 その結果、BP2は睾丸ホルモン生成に影響を与え、重要なオス生殖ホルモンであるテストステロンのレベルを低下させたことが示された。しかし、甲状腺ホルモン信号によって制御されるステロイド生成酵素のレベルに対しては、BP2は全く正反対のやり方でふるまった。BP2は、甲状腺ホルモンが刺激する遺伝子を抑制し、甲状腺ホルモンが抑制する遺伝子を活性化した。BP2のこの影響は甲状腺ホルモンが存在しなくても観察され、BP2による甲状腺ホルモン信号の直接的な拮抗作用だけの影響より大きかった。

 言い換えれば、BP2 は、正常な甲状腺ホルモン信号を妨害することに必ずしも直接的に関連しないやり方で、オスのテストステロン生成を減少させた。この結果は、様々な寄せ集めで(ごたまぜ)を示唆している。BP2 は、以前の研究が示す様に反甲状腺作用を持つが、それだけでなく、エストロゲンとしての作用のように、他の種類のホルモン信号を妨害するかもしれない。

 内分泌かく乱物質としてBP2が演じる正確な役割と、その影響がテストストロンのレベルをどのように低下させるのかをを解きほぐすために、更なる研究が必要であろう。


訳注1:ベンゾフェノン2 関連情報
  • ケムセック(ChemSec) 2011年5月3日 SIN List Ver 2.0 新たに追加された内分泌かく乱性22物質 Benzophenone-2, CAS 131-55-5
    オキシベンゾン-2
    Benzophenone-2 はいくつかの内分泌系に影響を与えるUVフィルターである。エストロゲン及び抗アンドゲン作用を持ち、甲状腺機能に影響を与える。免疫作用及び代謝にも影響を与える。Benzophenone-2 は、尿道口がペニスの先端ではなく下側に位置する出生障害(尿道下裂)と関係している。
    別名:BP-2, 2,2’,4,4’-tetrahydroxybenzophenone
    2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン

  • ベンゾフェノン/ウイキペディア
    ベンゾフェノン (benzophenone) は、示性式 (C6H5)2COで表される有機化合物であり、代表的な芳香族ケトンの一つである。紫外線を吸収する性質がある。
訳注2:ベンゾフェノン2 と甲状腺ホルモン 訳注3:プロゲステロン 参考資料


化学物質問題市民研究会
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