ケムセック(ChemSec) 2011年5月3日
SIN List Ver 2.0
新たに追加された内分泌かく乱性22物質


情報源:The International Chemical Secretariat May 3, 2011
The 22 new substances on the SIN List
http://www.chemsec.org/images/stories/2011/chemsec/SIN_List_2.0_22_new_substances.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年5月31日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/SIN_List/22_new_SIN_substances.html


SIN List 経緯:
・2011年5月3日 SIN List Ver2.0 が発表され22の内分泌かく乱物質が追加された (このページ)。
・2009年10月13日 SIN List 1.1 が発表され、89物質が追加された。
・2008年9月17日 SIN List 1.0(日本語訳) 及び物質の選択方法が発表された。


SIN リストVer 2.0 は22の内分泌かく乱化学物質を追加した。これらは、REACH基準によれば、それらの内分泌かく乱特性のために、非常に高い懸念のある物質(SVHC)(以後、高懸念物質)として特定されるものである。ここでは、これらの22物質、その内分泌かく乱特性、どのように使用されているか、そして、これらがどのような製品中で見つけることができるのかを示す。

3-benzylidene camphor
3-ベンジリデンボルナン-2-オン
Ethylhexyl methoxycinnamate
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
4-methylbenzylidene camphor
rac-(1R*,4α*)-1β*,7,7-トリメチル-3-
[(4-メチルフェニル)メチレン]ビシクロ[2.2.1]
ヘプタン-2-オン
Metam natrium
メタムナトリウム
4-nitrophenol
4-ニトロフェノール
Methyl tertiary butyl ether (MTBE)
メチルターシャリーブチルエーテル
4,4´-dihydroxybenzophenon
4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン
Pentachlorophenol
ペンタクロロフェノール
Benzophenone-1
オキシベンゾン-1
Perchloroethylene
パークロロエチレン
Benzophenone-2 オキシベンゾン-2Propylparaben
プロピルパラベン
Benzophenone-3
オキシベンゾン-3
Quadrosilan
クアドロシラン
Butylparaben
ブチルパラベン
Resorcinol
レソルシノール
Dicyclohexyl phthalate (DCHP)
フタル酸ジシクロヘキシル
Tert-butylhydroxyanisole
t-ブチルヒドロキシアニソール
Diethyl phthalate (DEP)
フタル酸ジエチル
Thiram
チラム
Dihexyl phthalate (DHP)
フタル酸ジヘキシル
Zineb
ジネブ


3-benzylidene camphor, CAS 15087-24-8
3-ベンジリデンボルナン-2-オン
3-ベンジリデンボルナン-2-オンは、UV(紫外線)フィルターであり、 強力なキセノエストロゲンである。それはまた、免疫系と脳機能に影響を与える。生まれる前にこの物質に曝されたラットには、数ある影響中で、オスの成熟の遅れ、不定期な発情期サイクル、体重の低下などがある。
別名:3-BC


4-methylbenzylidene camphor, CAS 36861-47-9
rac-(1R*,4α*)-1β*,7,7-トリメチル-3-[(4-メチルフェニル)メチレン]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オン
このUVフィルターは、最も強いエストロゲンUVフィルターのひとつであるとみなされている。それはまた、抗アンドロゲンであり、黄体ホルモンや甲状腺ホルモンに影響を与える。ラットでは、母親が曝露した仔ラットのメスの生殖行動及びオスの精巣に影響を及ぼす。rac-(1R*,4α*)-1β*,7,7-トリメチル-3-[(4-メチルフェニル)メチレン]ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-オンは、野生の魚とともにヒト母乳や天然の水の中で検出されている。デンマークEPAは、12歳以下の子どもの使用を制限するよう制限するよう勧告している。
別名: 3-(4-methylbenzylidene) camphor, 4-MBC
3-(4-メチルベンジリデン)-ショウノウ


4-nitrophenol, CAS 100-02-7
4-ニトロフェノール

4-ニトロフェノールは、染料と皮革を薄黒くするために用いられる。それはまた、薬と農薬の製造のための試薬として使用され、またディーゼル機関燃焼から放出される。ラットでは、この物質はエストロゲン作用及び抗アンドロゲン作用を持つ。それは、いくつかの性ホルモンのレベルを変更し、メスとオスの両方の生殖器官に影響を与える。
別名:p-nitrophenol
p-ニトロフェノール


4,4'-dihydroxybenzophenone, CAS 611-99-4
4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン

4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノンは、エストロゲン作用を持つUVフィルターであるが、抗アンドロゲンとして強い作用を示す。染色体の異常である異数体を引き起こし、従って生殖に影響する。


Benzophenone-1, CAS 131-56-6
オキシベンゾン-1

オキシベンゾン-1は、弱いエストロゲン又はもっと強い抗アンドロゲンとして作用するUVフィルターである。屋内のダストや下水処理施設の排水中で検出されている。

別名:2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、resbenzophenone


Benzophenone-2, CAS 131-55-5
オキシベンゾン-2
Benzophenone-2 はいくつかの内分泌系に影響を与えるUVフィルターである。エストロゲン及び抗アンドゲン作用を持ち、甲状腺機能に影響を与える。免疫作用及び代謝にも影響を与える。Benzophenone-2 は、尿道口がペニスの先端ではなく下側に位置する出生障害(尿道下裂)と関係している。
別名:BP-2, 2,2’,4,4’-tetrahydroxybenzophenone
2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン


Benzophenone-3, CAS 131-57-7
オキシベンゾン-3
オキシベンゾン-3は、UVフィルターとして一般的に使用されており。尿、ヒト母乳、地表水、魚類で検出される。Benzophenone-3 は、は内分泌かく乱物質であり、様々な系に影響を与える。抗アンドロゲン作用及び抗プロゲステロン作用とともにエストロゲン作用がある。免疫系、副腎及び脳下垂体、及び甲状腺ホルモンに影響を与える。ある影響は非常に低用量で起きる。人間では、妊娠中の尿中高濃度benzophenone-3は女児の低出生体重、男児の高出生体重と関連している。
別名:BP-3、oxybenzone, BP-3, oxybenzone, 2-hydroxy-4-methoxybenzophenone
2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン


Butylparaben, CAS 94-26-8
ブチルパラベン
ブチルパラベンは、身体手入れ用品中で用いられる。最もエストロゲン作用の強いパラベンの一種であり、甲状腺ホルモンにも影響を与える。パラベンは、ヒト尿中と屋内ダスト中で検出される。
ブチルパラベンは、精子の運動、精子数、及び脂質代謝に影響を与える。ブチルパラベンに曝露した妊娠ラットについて、この物質の濃度は母ラット血漿中より羊水及び胎児中の方が高く、胎児での生体蓄積性を示している。
別名: butyl-4-hydroxybenzoate
4-ヒドロキシ安息香酸ブチル


Dicyclohexyl phthalate (DCHP), CAS 84-61-7
フタル酸ジシクロヘキシル
フタル酸ジシクロヘキシルは、非常に多くの用途を持った可塑剤である。セルロース及び塩ビ製品、塗料、インク、食品容器包装中などに見出される。替地内ダスト中で繰り返し検出されている。 DCHP は、エストロゲン作用が最も強いフタル酸エステル類のひとつであり、甲状腺ホルモンと脳伝達物質にも影響を与える。非常に低濃度で代謝に影響を与える。DCHP を餌とともに与えられたラットは、深刻な生殖障害を持ったオスの仔を生む。


Diethyl phthalate (DEP), CAS 84-66-2
フタル酸ジエチル
フタル酸ジエチルは、香料担体とともにプラスチック製品や化粧品を含む非常に多くの用途を持っている。フタル酸ジエチルはエストロゲン作用があり、甲状腺ホルモン、骨格形成、及び代謝に影響を与える。フタル酸ジエチルへのヒト曝露の影響には大きな個人差があり、香水は重要な曝露経路である。この物質はまた、環境の水サンプル中でも検出されている。ヒトの尿サンプル中のフタル酸ジエチル代謝物のレベルは、インスリン抵抗性、肥満、乳房の早熟、乳がんとの関連性を示している。


Dihexyl phthalate (DHP), CAS 84-75-3
フタル酸ジヘキシル
フタル酸ジヘキシルは、可塑剤として使用され、道具の柄や塩ビ床材を含む、多くの異なる製品中で見出される。フタル酸ジヘキシルは甲状腺機能、神経系、骨形成に影響を与え、エストロゲン作用がある。妊娠中にフタル酸ジヘキシルを投与されたラットのオスの仔は、生殖器官に深刻な奇形を示す。
別名:Di-n-hexylphthalate (DnHP)
フタル酸ジ−n−ヘキシル


Ethylhexyl methoxycinnamate, CAS 5466-77-3
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
メトキシケイヒ酸エチルヘキシルはUVフィルターである。この物質は、エストロゲン、プロゲステロン、甲状腺ホルモンを含むいくつかの ホルモンに影響を与える。妊娠中及び授乳中にメトキシケイヒ酸エチルヘキシルに曝露したメスラットの仔は、精子数の減少や行動及び学習への影響を含んで様々なホルモンや神経学的な欠陥を患う。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルヒトの母乳、天然の水の中で見出され、水生生物に生体蓄積する。
別名:Octyl methoxycinnamate 2-ethyl-hexyl-4methoxycinnamate, Octinoxate, EHMC
4-メトキシケイヒ酸2-エチルヘキシル


Metam natrium, CAS 137-42-8
メタムナトリウム

メタムナトリウムは塗料、防腐剤としての皮革なめし、及び広範な殺微生物剤で使用される。メタムナトリウムに曝露すると発達障害や奇形を引き起こし、脳信号伝達、免疫系、行動に影響を与える。1991年にアメリカでメタムナトリウムが大量にサクラメント川に流出した。この流出で水生生態系が全滅し、川の近くに住む人々に呼吸器系障害や皮膚炎症を引き起こした。

別名:Synonyms: metam sodium, Vapam, sodium methyldithiocarbamate
N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウム


Methyl tertiary butyl ether (MTBE), CAS 1634-04-4
メチルターシャリーブチルエーテル

MTBE は、抽出溶剤、及びオクタン価向上ようガソリン添加剤として使用される。アメリカで、MTBE による地下水汚染が繰り返し起きた。MTBE は非常に水溶性が高く、環境中では容易には分解しない。一般的な曝露経路は、給油所における吸入である。この物質は、内分泌かく乱物質であり、特有の不快な味がする。ラットとマウスの両方でオスとメスの生殖系に影響を与え、学習及び記憶を損なう。


Pentachlorophenol, CAS 87-86-5
ペンタクロロフェノール

ペンタクロロフェノールは、主に木材用防腐剤として使用されるが、接着剤及びでん粉中でも使用される。長年、広範囲に使用されており、ヒト及び環境サンプル中で見出すことができる。最近は、健康と環境への影響についての懸念のために、その使用は減少している。ペンタクロロフェノールは、甲状腺機能をかく乱し、性ホルモン、脳の発達、代謝を阻害することを示している。
別名:PCP


Perchloroethylene, CAS 127-18-4
パークロロエチレン
ドライクリーニング工場の近くの住人又はそこで働く人は、血中に測定可能なレベルのパークロロエチレンをしばしば持つ。パークロロエチレンに曝露した妊娠マウスは、子宮重量の減少を示し、胎児が小さい。一方曝露した若いオスは運動行動の変化を示しした。クロロエチレンはまた、アセチルコリンのレベルを変更し、カルシウムチャネルを阻害しつつ、脳への信号伝達に影響を与える。ドライクリーニング労働者の疫学的調査は、パークロロエチレン屁の曝露と神経系障害との関連性を見出している。

別名 Perc, Tetrachloroethylene
テトラクロロエチレン


Propylparaben, CAS 94-13-3
プロピルパラベン
プロピルパラベンは、身体手入れ用品中で使用される防腐剤である。プロピルパラベンは、エストロゲン及び抗アンドロゲン様特性を持ち、オスラットの精子生成を減少する。デンマーク国立食品研究所の最近の報告書によれば、子どもたちのプロピルパラベンの推定血中濃度は、若い動物に内分泌かく乱作用を引き起こすのと同様なレベルである。プロピルパラベンは、非常によく使用されている。ヒトの尿サンプル、ヒトの母乳、及び川で見出される。別名:propyl-4-hydroxybenzoate, E216
4-ヒドロキシ安息香酸プロピル


Quadrosilan, CAS 33204-76-1
クアドロシラン
クアドロシランは、潤滑油として及び乳房インプラントで使用されている。いくつかの動物種で強い内分泌かく乱性が示されている。精子の形成のかく乱する抗アンドロゲン作用があり、またメスの生殖機能をかく乱するエストロゲン作用がある。
別名:2,6-cis-diphenylhexamethylcyclotetrasiloxane
2α,6α-ジフェニル-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン


Resorcinol, CAS 108-46-3
レソルシノール
レソルシノールには、ゴムや樹脂、化粧品、医薬品、髪染めなどを含む多くの用途がある。レソルシノールは、甲状腺、甲状腺ホルモン、グルコース代謝に影響を与える。
別名:resorcin,1,3-benzenediol
レソルシノール; 1,3-ベンゼンジオール


Tert-butylhydroxyanisole (BHA), CAS 25013-16-5 t-ブチルヒドロキシアニソール
BHA の主要な用途は、食品、食品容器包装、動物餌、化粧品、ゴム、及び石油製品での酸化防止剤と防腐剤である。BHA はまた、医薬品でもよく使用されている。BHA は抗エストロゲンとともにエストロゲン作用を持っている。BHA を与えられたラットは、テストステロンと甲状腺ホルモンのレベル低下、精子の異常を示す。対照群と比べて、仔は小さく、性的成熟が遅く、生殖器官が小さい。同様な作用がブタにも観察されている。
別名:butylated hydroxanisole, E320
ブチルヒドロキシアニソール


Thiram, CAS 137-26-8
チラム
チラムは、例えば、ゴム製品製造など産業用に使用される。それはまた、作物殺菌剤や例えば家畜が果樹を食べるのを防ぐための動物忌避剤として使用される。チラムは、特に早い発達期の間に多くの内分泌かく乱作用を及ぼす。ノルアドレナリン(訳注:副腎髄質でできるホルモン)を阻害するが、それにより黄体化ホルモン(LH)に影響を与え、その結果、メスの排卵を遅らせれる。それは脂肪代謝にも影響を与える。
別名:tetramethylthiuram disulphide
テトラメチルチウラムジスルフィド


Zineb, CAS 12122-67-7 ジネブ
ジネブは、塗料、表面処理剤、及び農薬として使用される。ジネブは非常に有毒であり、妊婦はこの物質を取り扱わないよう勧告されている。それはまた、甲状腺機能と脳の発達を阻害する。ジネブへの職業曝露は他の障害もある中で特にパーキンソン病と生理周期に関連している。
別名:Zinc ethylenbis (dithiocarbamate)
N,N'-エチレンビスジチオカーバメート


関連情報
Endocrine disrupters on the SIN List
SIN List 1.0 では内分泌かく乱物質として25物質リストされているが、今回のSIN List 2.0では22物質追加され、SIN List での内分泌かく乱物質は47物質となった。
■SIN List 1.0 での内分泌かく乱25物質(日本語名称)
  1. 4-Tert-Butylphenol(4-tert-ブチルフェノール)
  2. Benzophenone (ベンゾフェノン)
  3. Bisphenol A (ビスフェノールA)
  4. Chlorinated paraffins (CPs) (塩化パラフィン)
  5. Deca-BDE (デカブロモジフェニルエーテル)
  6. Dibutyltin (DBT), and other dibutyltin compounds (ジブチルスズ及びその他のジブチルスズ化合物)
  7. Diisononyl phthalate (フタル酸ジイソノニル )
  8. Galaxolide (ガラクソリド)
  9. Hexane (ヘキサン)
  10. Naphthalene (ナフタレン)
  11. Nonylphenolethoxylates (ノニルフェノールエトキシレート)
  12. Nonylphenols (ニルフェノール)
  13. Octamethylcyclotetrasiloxane (オクタメチルシクロテトラシロキサン)
  14. Octylphenoles (オクチルフェノール)
  15. Octylphenolethoxilates (オクチルフェノールエトキシレート)
  16. Perfluorooctanoic acid (PFOA) (ペルフルオロオクタン酸)
  17. PFOS, and other perfluorooctane sulfonic acids
  18. Styrene (スチレン)
  19. Sulfluramid (PFOSA) (スルフルラミド)
  20. Tetrabromobisphenol A (TBBPA) (テトラブロモビスフェノールA)
  21. Tonalide (トナリド)
  22. Tributyltin compounds (トリブチルスズ化合物)
  23. Triclosan (トリクロサン)
  24. Triphenyltin compounds (トリフェニルスズ化合物)
  25. Tripropyltin compounds (トリプロピルスズ化合物)


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