CHE パートナーシップ・コール 2016年6月29日
規制基準の設定に科学を用いる:
欧州連合における内分泌かく乱化学物質の特定


情報源:The Collaborative on Health and the Environment
CHE Partnership Call, Jun 29, 2016
Using Science to Set Regulatory Criteria:
Identifying Endocrine Disrupting Chemicals in the European Union
http://www.healthandenvironment.org/partnership_calls/18522

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2016年7月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/che
/CHE_Call_160629_EU_Endocrine_Criteria.html

訳注:CHE:パートナーシップ・コール
 2016年6月29日に開催されたこの電話会議で、フランスの環境疫学者レミー・スラマ博士の講演が行われました。同博士は EHP 2016年4月25日掲載論文 (当研究会訳: 欧州連合における内分泌かく乱物質を同定するための規制基準の設定に関連する科学的問題) の筆頭著者です。
このパートナーシップ・コールでは著者のスライド資料を見ながら、講演録音(MP3)を聞くことができます(英語 約40分)。
講演の概要
  • 内分泌かく乱物質(EDs):何について話をしているのか?
  • 欧州連合の法律の中の EDs
  • EU 殺虫剤規則
  • EUにより検討された4つのオプション(2014年)
  • 2016年6月15日 欧州委員会の提案


 欧州委員会は、内分泌かく乱化学物質(EDCs)への人間の暴露に関連する健康と環境問題についての増大する懸念に対応して、1999年以来様々な EU の規制文書や機関を通じて EDCs の規制に取り組んできた。これらの中で重要なものは、農薬と殺生物剤を規制する二つの EU の法律であり、それらは内分泌かく乱物質として認められた化学物質を含む農薬と殺生物剤は市場に出すことを許されないと述べている。しかし、これらの法律の実施には、内分泌かく乱特性を持つ化学物質を特定するための基準一式が必要である。欧州委員会は、EU 議会と EU 理事会により、これらの基準を2013年12月までに開発することを義務付けられていた。それなしには 2009年の農薬規則、及び2012年の殺生物剤規則の内分泌かく乱物質に関係する条項は実施することができない。

 今月、欧州委員会は、規制目的のために内分泌かく乱化学物質をどのように特定するかに関する決定一式を発表した。これらの決定は、農薬と殺生物剤が欧州連合内でどのように規制されるかということに直接的に関係する。それらはまた、他のどのような国も何が内分泌かく乱物質であるかを決定するための法的に拘束力のある基準を採択していないので、世界の先例となる。

 EU 及びアメリカの研究所及び大学からの 7人の独立系研究者のチームが、科学的公共政策の対話に貢献する論評を発表した(訳注:当研究会訳:EHP 2016年10月号掲載論文 【最終版 欧州連合における内分泌かく乱物質を同定するための規制基準の設定に関連する科学的問題))。今回の電話会議では、この評論の著者であるレミー・スラマ博士が、欧州連合の法のための内分泌かく乱物質を特定するための基準に関する新たな研究と勧告を議論した。WHO の定義に関する合意に触れた後彼は、EU の内分泌かく乱化学物質ロードマップに概要が示された 4つのオプションを議論した。彼は、科学的基準の決定のための影響評価の役割及びこれら政策のためのの勧告が及ぼす影響に特別の注意を向けた。

講演者紹介

Dr_Slama.jpg(5405 byte)
 レミー・スラマ博士は、環境疫学者であり、Inserm(フランス国立環境・医学研究所)の上席調査官であり、Inserm とグルノーブル大学の、生殖と呼吸器系健康に応用される環境疫学共同研究チームのリーダーである。彼の研究は、胎児と子どもの健康に及ぼす生命初期(子宮内)環境暴露の影響(Developmental Origins of Health and Diseases hypothesis)に特別の焦点を当てつつ、人の生殖と子どもの健康への環境汚染物質の影響を特性化することを目指している。 レミー・スラマ博士は、内分泌かく乱物質に関するフランス研究プログラム(PNRPE)の科学評議会の会長であり、彼は InVS (フランス CDC)の科学評議会のような環境健康にに関連するいくつかの専門家団体と科学評議会に所属し、国際環境疫学学会(ISEE)の選任評議員として活動し、そこでは現在も WHO との交渉の任に当たり、また欧州憲章(European chapter)の評議会委員でもある。スラマ博士は、パリ第11大学から環境疫学の学位を授与されている。

 この電話会議は、Health and Environment Alliance (HEAL) の上席政策担当 Lisette van Vliet が司会を務めている。45分の電話会議は、記録を目的として録音された。

講演者のスライド: Using Science to Set Regulatory Criteria
背景資料:


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る