米化学会 C&EN 2010年11月1日
科学者ら 米国の食品中にビスフェノールAを検出
有毒物質:BPAが肉、鶏肉、魚、野菜、惣菜、乳児食に

情報源:Chemical & Engineering News, November 1, 2010
Scientists Find Bisphenol A In U.S. Food
Toxic Substances: BPA appears in meat, poultry, fish, vegetables, prepared food, and infant formula
http://pubs.acs.org/cen/news/88/i45/8845news.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年11月6日


 アメリカの食品中のビスフェノールA(BPA)のレベルに関する初めてのデータが、ピアレビュージャーナルEnvironmental Science & Technology (DOI: 10.1021/es102785d)で発表された。検出されたppbという低いレベルは、他の国やアメリカの環境団体の食品に関する以前の報告と一致すると、国立環境健康科学研究所(NIEHS)のディレクターであるリンダ・バーンバウムは述べている。そのレベルが、特に幼児と小さな子どもに懸念があるかどうか議論がなされている。

 ”BPAの安全性の他の側面に関してはアメリカの研究機関から非常に多くの情報を得ることができるのに、これがアメリカの食品中のBPAに関する初めてのピアレビューされた研究であるということは驚くべきことである”とタフツ大学のBPA研究者であるローラ・バンデンバーグは述べている。

 この新たな論文は”店頭での購入”に基づいていると、主著者でありテキサス大学公衆衛生学のアーノルド・シェクターは述べている。この種の研究は一般的に、スーパーマーケットで購入した肉類、鶏肉類、魚類、果物類、野菜類を検査する。科学者らは容器がエポキシ樹脂中にBPAを含むので、缶詰や容器中の食品も含めた。

 共著者であり、食品と残留性汚染物質の分析を専門とするテスト機関の国際的な団体Eurofins Scientificの研究者であるオラフ・パプケは、BPAを分離し、高解像度ガスクロマトグラフと低解像度質量分析計を使用して定量化した。彼は、多くのしかし全てではない缶詰食品中にBPAを検出したが、一般的には缶詰食品はBPA濃度が最も高い。デルモンテの缶詰新鮮グリーンビーンズは、この研究中で最も高いBPAレベルであった。缶詰3種類がグラム当たり26.60〜65.00 ng のBPAを含んでいたが、これは26.60〜65.00 ppb と同等である。パプケはまた、シェフ・ボヤディ(ーChef Boyardee Spaghetti) や ミートボールズ(Meatballs)のようなプラスチック容器中の新鮮な七面鳥の肉や食品中にもBPAを検出したが、それらは同一の食品の缶詰のものよりBPA濃度が高かった。

 シェクターらは、研究対象食品の子どもと成人が摂取するBPAレベルを計算し、米環境保護庁(EPA)のBPA安全制限値である1日当りのBPA 50μg/体重kg より低いことを示した。しかし、バンデンバーグは、コロンビア州にあるミズーリ大学のフレッド・ボンサールを含む他の科学者らとともに、EPAのBPA制限値は高すぎると主張している。

 疫学研究は、BPAへの曝露と成人の心臓疾患及び糖尿病、及び子どもの異常行動とを関連付けているとバンデンバーグは述べている。数十の毒性学研究もまた、アメリカ人に見出されるレベルと同等のBPA濃度が広範な健康問題と関連付けているとボンサールは述べている。

 10月13日、カナダはBPAを公式の有害物質リストに加え、規制対象の可能性を与えた(訳注1)。今年の1月に米食品医薬品局(FDA)は、胎児、幼児、及び小さな子どもの脳、行動、及び前立腺へのBPAの影響についてのある懸念を表明した(訳注2)。

 各社ともBPAを使用しない缶詰ライニングを開発する難問に取り組んでいるが、今回の研究で分析したトマトペーストの缶詰は、検出できないBPAレベルであった。トマトのような酸性食品はBPAの漏洩を高めることが知られているので、この事実は新たな効果的なライニングが存在し、会社はそれらを使用していることを示唆していると、非営利研究グループの沈黙の春研究所(Silent Spring Institute)のラットハン・ルーデルは述べている。

更なる詳細:
Bisphenol A (BPA) in U.S. Food Environ. Sci. Technol., DOI: 10.1021/es102785d


訳注1
CBC News 2010年10月13日 ビスフェノールAは有毒であるとカナダが公式宣言

訳注2
EHN 2010年1月15日 FDAのBPAへの見解に変化 子どもの健康に”多少の懸念”があると発表


化学物質問題市民研究会
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