PubMed 2014年4月
チメロサールを含む不活化インフルエンザ・ワクチンへの
毎年の暴露後の米国幼児の比較薬物動態の推定

アブストラクト

情報源:PubMed 2014 Apr;34(4):735-50.
doi: 10.1111/risa.12124. Epub 2013 Oct 10.
A comparative pharmacokinetic estimate of mercury in u.s. Infants
following yearly exposures to inactivated influenza vaccines containing thimerosal.
Mitkus RJ1, King DB, Walderhaug MO, Forshee RA.
1Office of Biostatistics and Epidemiology, USFDA Center for Biologics Evaluation and Research,
Rockville, MD, USA.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24117921

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年5月7日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/FDA/
2014_Apr_PubMed_thimerosal_in_childhood_vaccines.html

アブストラクト
 幼年時用ワクチン中のチメロサール保存剤の使用は、アメリカでは過去10年間、大幅に廃止されているが、それはワクチンが保存剤を必要としない単回用量容器(single-dose vials)で処方されているためである。ひとつの例外は不活化(訳注1)インフルエンザ・ワクチン類であり、それらは保存剤を必要とする複数回用量容器(multidose vials)と保存剤を使用しない単回用量容器の両方で処方されている。
 ライフサイクルを通じての生物製剤の安全性についての米・食品医薬品局(USFDA)により現在行われている評価の一部として、アメリカにおける不活化インフルエンザ・ワクチン中のチメロサール保存剤に計画的に曝露した幼児の水銀体内負荷が推定され、それは米・環境保護局(USEPA)により確立された参照用量での食事によるメチル水銀への毎日の暴露による幼児の体内負荷と比較された。
 体内負荷は、チメロサール又は同等用量のメチル水銀に偶発的に(episodically)暴露させた幼獣のサルで実施された実験から導き出された動的パラメータを使用して推定された。
 我々は、(低出産体重を含む)幼児の体内水銀負荷(AUC 血中濃度曲線下面積)は、チメロサールへの毎年の暴露後、最初の4.5年にわたり、同じ期間にわたるメチル水銀の最低規制閾値への暴露で推定されたものより2桁低い値であることを発見した。
 さらに、最悪のケースの分析における、チメロサールへの偶発的暴露後の水銀の体内負荷のピークは、どのような場合も、たとえ低出産体重幼児であっても、メチル水銀による対応する水銀安体内負荷を越えなかった。我々の薬物動態分析は、アメリカにおけるある複数回用量容器の幼児ワクチン中で現状のレベルで保存剤として使用される場合に、チメロサールの認知されている安全性を支持するものである。

  2013年公開。この記事は米国政府の成果であり米国における公有物(public domain)である。

KEYWORDS:
MeHg, modeling, pharmacokinetics, safety, thimerosal


訳注1:ワクチン(ウイキペディア)
 ワクチンは大きく生ワクチンと不活化ワクチンに分かれる。

生ワクチン
 毒性を弱めた微生物やウイルスを使用。液性免疫のみならず細胞免疫も獲得できるため、一般に不活化ワクチンに比べて獲得免疫力が強く免疫持続期間も長い。しかし生きている病原体を使うため、ワクチン株の感染による副反応を発現する可能性もある。

不活化ワクチン
 死ワクチンとも呼ばれる。狭義の不活化ワクチンは化学処理などにより死んだウイルス、細菌、リケッチアを使用。取り扱いや効果において同様である抗原部分のみを培養したものを含めて不活化ワクチンと称されることもあり、以下その定義に含められるものを挙げる。生ワクチンより副反応が少ないが、液性免疫しか獲得できずその分免疫の続く期間が短いことがあり、このため複数回接種が必要なものが多い(代表例は三種混合ワクチンやインフルエンザワクチン)。

訳注:関連情報
グランジャン博士のウェブサイト Chemical Brain Drain - News 2014年4月14日 ワクチン中の水銀



化学物質問題市民研究会
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