欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
25. なぜビジネスは早期警告への予防に反応しなかったのか? (概要編)
Carl Cranor
情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part D Summary
25 Why did business not react with precaution to early warnings?
Marc Le Menestrel and Julian Rode

http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-25

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/25_Business_summary.html


 過去に会社は、彼等の製品や工場の操業に関連して人の健康や環境への潜在的な危険性についての早期の警告の信号をしばしば無視してきた。この章は、関連する分野をまたがる文献と有名な事例研究、特に『早期警告からの遅ればせの教訓』の両巻で報告された事例をレビューし分析し、早期警告信号の無視に責任ある主要な要因を特定する。

 この章は、いかに経済的動機がしばしば非予防的なビジネス決定の原因となるかを示している。実際にレビューした全ての事例の中で、産業側が潜在的に有害な製品又は操業を継続することは儲けになることが分かった。しかし決定はまた、認識論的な、規制的な、文化的な、そして心理的な側面の複雑な混合によって影響を受けている。例えば、研究環境と規制状況の特性は、早期の警告の信号を否定又は抑制するために、”政策的行動”に参加する機会をビジネス関係者に提供することができる。また、ビジネスの意思決定者は、早期の警告信号により必然的に伴う価値と利害の不一致を認識し受け入れることに対する心理的な障壁に直面する。文化的ビジネス状況は価値の不一致の拒否にさらに寄与するかもしれない。

 この章は、もっと予防的なビジネス意思決定をどのように支えるかに関する一式の意見で締めくくっている。ビジネスと社会の利益相反へのある有名な政策的対応が、ビジネスの合理性を外部影響を内部化する方向に舵を切ることを試みる規制を導入している。保険のような革新的な解決が検討されるべきである。

 なぜビジネス関係者が、早期の警告信号に予防的行動をもって自主的に対応しないのかをもっとよく理解し、明らかにする必要がある。ビジネスを、特に後知恵で非難すると、必ずしも建設的はない共通の反応をもたらす傾向がある。それは、ビジネスが直面する複雑で矛盾さえする動機と推進力をしばしば理解しそこなう。

 公共機関は、例えば異なる産業のために、そして特定の社会的及び規制的決定の脈絡のために、早期の警告信号によりもたらされたジレンマと誘惑を分析し公的に明らかにすることにより、進歩的なビジネスを支えることができるであろう。正確で明確なジレンマの説明は、責任ある関係者が彼等の予防的対応を共有し理解解しあうための更なる動機を作り出すであろう。

 ひとつの追加的な意見が、ビジネス関係者の政策的行動の役割、特に早期の警告信号を隠すことを目的とする行動に注がれている。ビジネスの政策的行動をもっと透明にする規制的取り組みは、適切な力のバランスを維持するのに、したがって健康と環境に危険らしいものを削減しつつ、早期の警告信号から利益を引き出す我々の能力を維持するのに、役立てることができる。



化学物質問題市民研究会
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