欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
24. 早期の警告者と遅れた被害者の保護 (概要編)
Carl Cranor
情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part C Summary
24 Protecting early warners and late victims
Carl Cranor
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-24

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/24_Early_warners_late_victims_summary.html


 多くの早期警告からの遅ればせの教訓の章は、差し迫った危害についての不都合な真実を公衆や規制当局にもたらすとして早期警告科学者らは嫌がらせを受けた。若い科学者らがそのような嫌がらせの恐れから、議論のある分野に参加することを躊躇させられたという証拠もある。さらに、警告が無視された結果、被害が起きた場合、被害者に迅速で公平な補償がなされることは過去の例ではしばしば難しいことが明らかにされている。

 まずこの章は、差し迫った危害の証拠を特定する早期の警告科学者やその他の人々を励まし、保護するのに役立てる公益通報者保護法を拡大する考え方を探求する。ドイツでの例のように、職業的科学者のもっと大々的な関与や特別報奨金の利用のような補足的な措置もまた有用であろう。

 次にこの章は、汚染(pollution and contamination)による被害者補償のための改善されたメカニズムを探求する。水俣病に関する章は、メチル水銀中毒の被害者が適切な補償を得るのに長い年月がかかった極端な例を示している。1956年から2004年の間、被害者等が補償の公平なレベルと責任の法的認知を獲得するのにほとんど50年かかった(訳注1)。他の事例研究もまた、適切な補償を受けるのに同様な長い遅れの事例を示している。

 現在は広範な公衆への便益を提供しているが、潜在的には小さな被害者グループに犠牲をもたらすかもしれないナノテクノロジー、遺伝子組み換え作物、携帯電話の使用のような、新たに出現している技術のどのような将来の犠牲者に対しても、正義を提供するための選択肢が検証された。大規模技術による将来の環境被害のコストを最小化し満たすのに役立てるための保険の利用もまた探求されている。

 補足的なパネル文書はアスベストと中皮種の事例を述べているが、そこではイギリスの高等裁判所は、当初の呼吸系疾病である石綿症の認知の後に、連帯責務(joint and several liability)とその後のアスベストがんの予見可能性の両方に対応する革新的な方法を開発した。個人的な損害の分野でのそのような法的開発は、環境被害及び個人の損害の両方における長期責務(long-tail liability)の将来の方向を示すことができる。



訳注1:参考情報
2004年、最高裁は、政府と熊本県の被害拡大の防止に対する不作為を指弾し、彼らの責任を認めた。(関西訴訟)


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る