欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
23. 行動しないことのコストの理解と説明 (概要編)
Mikael Skou Andersen and David Owain Clubb

情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part D Summary
23 Understanding and accounting for the costs of inaction
Mikael Skou Andersen and David Owain Clubb
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-23

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/23_Costs_of_inaction_summary.html


 政策決定プロセスにおいて、一旦行動しないことのコストが見積もられてしまうと、政策策定者は環境的危険性からの早期の警告の信号にだけ対応するよう、立証責任はしばしば配置される。

 この章は、行動しないことのコストの見積りが、研究の長い年月を通じて注意深く展開されたいくつかの重要な環境問題に立ち戻る。その目的は、これらのコストの特定の見積りを示すということではなく、信頼性があり適切な見積りを生成することに関わる方法論的な課題を検討することにある。

 この事例研究はまた、科学的基礎の統合が十分ではない時に、早期の警告信号が行動しないことのコストを見積もるための基礎を、どのように提供することになるのかについての識見を提供する。例えば、飲料水中の硝酸塩のケースは、行動しないことのコストへの予防的アプローチは、よく想像できることを例証している。早期の警告があった時に、科学者らが世界に対してクロロフルオロカーボン類 (CFCs)の破壊影響を警告することに成功したオゾン層破壊物質の廃止は、地球温暖化の追加的な影響として、行動しないことのコストを実際には当初信じられていたよりかなり高いものにするというという、もうひとつの重要な事例を提供した。このことは行動しないことのコストの数値はしばしばひどく過少評価されているということを思い起こさせる。

 最後に、大気汚染の場合には、死亡リスク回避のための異なる見積りを利用することは、政策策定者が行動しないことのより高い及びより低い限界の見積りがあるということを見るのに役立つ。たとえ、より低い限界の見積りが健康影響に対して偏向(バイアス)をもった、多分、非常に保守的なものであっても、それらは多くの状況で、削減努力をしないよりはましであろう。排出負荷を削減することはまた、生物多様性と自然の無形の資産に資することになるであろう。

 環境科学とモデル化を最もよく利用することは、環境保護と予防を優先することに役立つ。コストの見積り作成は経済専門家だけに任せるのではなく、健康、生態学、人口統計学、モデル化など、関連する科学分野の専門性を特色としつつ、より広い議論のための出発点とみなされるべきである。分野間の連携に基づく、よく調査された見積りは、通常の政策策定プロセスではその声を聞くことが難しい散在する人々を強化し、関心を広めることができる。



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る