欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
19. 革新への渇望:
遺伝子組み換え作物から農業生態学まで (概要編)

David A. Quist, Jack A. Heinemann, Anne I. Myhr,
Iulie Aslaksen and Silvio Funtowicz

情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part C Summary
19 Hungry for innovation: from GM crops to agroecology
David A. Quist, Jack A. Heinemann, Anne I. Myhr, Iulie Aslaksen and Silvio Funtowicz
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-19

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月20日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/19_GM_crops_summary.html


 食料安全保障を確保し、その他の農業関連問題を解決するための革新の可能性は、事実上全ての国の重要課題である。本章は、食料と農業の革新の二つの異なる事例:遺伝子組み換え(GM)作物と農業生態学的手法を考察し、これらは異なる革新戦略が将来の農業と社会の選択にいかに影響するかを描いている。

 GM作物は、非常に生産性が高いが外部の再生不可能な投入(inputs)への依存という点で大いに持続不可能である大量投入単一栽培農業システムであることはよく研究されている。GM作物に認められる知的所有権は、将来の革新の可能性に開かれているというより、むしろしばしば閉鎖的であり、その便益のより大きな分配を可能にする革新の広範な多様性への投資を妨げている。

 科学に基づく農業生態学的手法は、本質的に参加型であり、食料生産、生物多様性と生態系の強化、及び共同体への安全保障の確保における農業の多機能の役割を強化して動的環境に合わせるよう設計されている。それらは、外部・多量投入よりも持続可能な食料安全保障の確保を目的とする農業システムとしてよく研究されている。しかし、それらは成功するためには広範な動機と助けになる枠組みがどうしても必要である。両方のアプローチは、農業という範囲内で、さらにはもっと一般的に社会の範囲内で革新のガバナンスの問題を提起している。

 本章は、貧しい農民の必要に対応する時に、”トップダウン技術移転”アプローチの結果を探求している。ここでは、世界の経済競争の中での経済成長という見地、すなわち既存の農業モデルによって引き起される環境ダメージを低減する又は逆転するための努力と矛盾するかもしれない、又は社会的に責任ある革新への投資を思いとどまらせる活動の中心という見地から、革新はしばしば、枠組まれている。

 探求されているもうひとつの選択は、既に利用可能な資源、すなわち、地域の人々、彼等の知識、必要性、願望、及び土着の天然資源を利用して、その上に構築する”ボトムアップ”アプローチである。このボトムアップ・アプローチはまた、特にそれが食料の品質、健康、及び社会的環境的持続可能性に関連するとき、食料システムの設計についての決定に重要な関係者として公衆を巻き込む。

 選択は、健康と環境の懸念に対応し、地域の小規模農業の生計を確保しつつ、食料の品質、持続可能性及び広い意味での社会的公平への消費者の要求にどのように最もよく答えるかについて示されている。もし我々が今、食料、繊維、及び燃料生産における革新のガバナンスに対応することに失敗すれば、我々は農業設計に失敗するであろうことを現状は示している。



化学物質問題市民研究会
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