欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
18. チェルノブイリからの遅すぎた教訓
フクシマからの早期の警告 (概要編)

Paul Dorfman, Aleksandra Fucic and Stephen Thoma

情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part C Summary
18 Late lessons from Chernobyl, early warnings from Fukushima
Paul Dorfman, Aleksandra Fucic and Stephen Thomas
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-18

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/18_Chernobyl_Fukushima_summary.html

 日本のフクシマにおける原発事故は、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故のまさに25年後に起きた。それぞれの分析は、今後数十年のエネルギー要求に合致し、一方、気候変動の増大する環境コストと政治的に不安定な世界におけるエネルギー安全保障の確保の必要性に対応する計画を策定する政策決定者と公衆にとって有用であることが分かるであろう貴重な遅ればせのそして早期の教訓を提供している。

 本章は、チェルノブイリとフクシマの事故のいくつかの重要な側面、放射能放出、それらの影響とヨーロッパにおける新たな原発建設への関わりを探求する。さらにまた、原発建設コスト、責任、将来の投資、そして人々と環境に影響を与える予測可能なまた予測できない出来事のリスク評価について学ばれるべき教訓もある。

 健康影響はフクシマ事故の後から出始め、今後5〜40年の間に報告されるかもしれないので、学ばれるべきひとつの重要な教訓は事故の多様な因子特性に関連している。将来の放射線防護、予防的措置、及び曝露した集団の生物学的監視を計画するに当り、電離放射線への曝露後のがん疾病と非がん疾病に関する利用可能なデータを統合すること;影響を受けた個人の年令、性差、及び地理的分散を考慮して、データ解釈への複雑なアプローチを採用すること;及び曝露とがんのタイプごとの発病診断との間の潜伏期間の評価を統合すること−は非常に重要となるであろう。

 どのような綿密に計画された厳格な原子力リスク評価であっても不確実性と複雑性が伴うのだから、 予期される発生の蓋然性による事故の程度を重みづけるための試みは、本質的な理論的計算は事前に条件付けられた仮定一式に基づくしかないという理由で、疑わしいことは明らかである。このことは、難解な哲学的な論点ではなく、むしろ原子力リスクの適切な管理のための重要な結果を伴う非常に現実的な論点である。設計ベースの予測を超える事故の連鎖への対応に失敗して、規制当局はリスクベースの見込みに基づく評価が非常に限定されたものであったと強調する。このアプローチの早急な再評価と現実的な適用が遅れている。

 原子力エネルギーのリスクとベネフィットに関する見解がどのようなものであったとしても、壊滅的な事故とその後の経済的結果が政治と政策決定プロセスに織り込まれなくてはならない。原子力のリスクに関する今回の集合的知識の脈絡の中で、計画された全ヨーロッパの責任体制が重要な再評価を必要とするであろう。


フルレポートを後日紹介予定



化学物質問題市民研究会
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