欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
15. 洪水:早期警告システムについての教訓 (概要編)
Zbigniew W. Kundzewicz
情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part B Summary
15 Floods: lessons about early warning systems
Zbigniew W. Kundzewicz
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-15

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/15_Floods_summary.html


 洪水は、増大している深刻な問題である。激しい降雨がますます頻繁に起こるようになり、増大する人工的な影響が、どのようなレベルの降雨からも大規模な洪水という結果をもたらし、基幹施設の場所選定に不備があり、洪水による損失の可能性を増加させている。

 この章は、この報告書で示されている他の多くの事例とは異なり、洪水を特定の出来事や学ぶことのできる教訓として対応するよりむしろ、効果的な早期の警告システムのための現象と要求として洪水に焦点を合わせる。

 洪水は完全には防ぐことはできない。洪水の発生は”失敗”とみなす必要はなく、逆に言えば損失の最小化が”成功”であるとみなされる。どのような洪水にも学ぶべき教訓はあり、それらを次の洪水に備えて利用することが重要である。完全な安全を保証できるような洪水防止措置などないということを我々が受け入れるならば、人の洪水に対する脆弱性を削減するために、パラダイムの一般的な変更が必要である。”洪水と共に生きる”という態度と、それらを計画に織り込むということは、洪水を根絶しようと絶望的な努力をするよりも持続可能性があるように見える。

 洪水予測警報システムは、一連の関連性がうまく機能しないか、又は完全に失敗するするので、うまくいかない。その他の点では素晴らしい要素を含むシステム中のある唯一の弱点が、全体のシステム能力を不十分なものにするかもしれない。システムの成功には、要素の十分な統合と多様な機関の間の連携と協力が必要である。

 この章は、河川の洪水の難題を主に取り扱う。それは3つの短い付属文書により補足されている。第一は、氾濫原(訳注1)の複雑で、動的で多様な生態系に光を当てるが、それはしばしば、洪水対策の工事により悪化される。その莫大な経済的価値にもかかわらず、自然に近い氾濫原は世界でもっとも脅威に曝されている生態系のひとつである。
 第二は、降水パターンと降水量の予測における不確実性と、極端な流れと洪水レベルとの関連性を議論する。そのような不確実性は科学者と政策策定者に同じ様に難題を提起する。
 第三は、気候変動と海面の上昇のような要素に帰する、沿岸洪水のリスクの増大に目を向け、欧州の予防的措置の経験をレビューする。



訳注1 氾濫源/ウイキペディア
氾濫原(はんらんげん、flood plain)とは、河川の流水が洪水時に河道から氾濫する範囲にある平野部分をいう。谷底平野や扇状地、沖積平野、三角州などで洪水時に浸水する範囲も同様に氾濫原といえる。河川の下流部によく発達する。



化学物質問題市民研究会
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