欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
13. 水環境中のエチニルエストラジオール(低用量ピル) (概要編)
Susan Jobling and Richard Owen
情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part B Summary
13 Ethinyl oestradiol in the aquatic environment
Susan Jobling and Richard Owen
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-13

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月25日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/13_Ethinyl_oestradiol_summary.html


 数十年間の調査が、環境中に放出されると、エストロゲンと呼ばれるある種類のホルモン(訳注:女性ホルモンの一種)は、合成されたものでも自然に発生するものでも、野生生物に深刻な影響を与える可能性があることを示している。それにはオスの魚の異性特性があり、繁殖力を弱める。そのような影響は、通常致死性ではないが、生涯にわたる不可逆的なものである。

 この章は、これらのエストロゲンのひとつであり、避妊ピル中の活性成分であるエチニルエストラジオール(EE2)に関する科学的な証拠と規制の議論を記述している。1938年に最初に開発されてから、それは廃水処理設備を通じて環境中に放出されている。現在では、野生生物種が内分泌かく乱化学物質のカクテルに曝露し影響を受けているということは明白であるが、EE2が、環境中で非常に低レベルであっても重要な役割を果たしているということにも、合理的な科学的確実性がある。

 2004年、イングランドとウェールズの環境庁は、リスク管理の検討を正当化するのに十分な証拠であると判断して、このことを受け入れた。2012年、初めて合成されてからほとんど75年後に、欧州委員会は、水枠組み指令(欧州の水域の保護と保全のための主要な法律)の下に、EU全域の”優先物質”としてEE2を規制するという提案をした。この提案はその後修正されて、規制的”環境品質基準”に関するどのような決定も少なくとも2016年まで遅らせることになった。

 その理由の一部は、EE2の規制が高価な代償をもたらすことである。提案された環境中の規制値にするということは、非常に低レベル(ppt)のEE2を下水処理施設の排水から相当な金額をかけて除去するということを意味する。

 この価格は、我々が喜んで支払うようなものであろうか? あるいは単に、予防的行動の価格はそのように高価であるということ、ピルは飲むには苦すぎるということであろうか? 数十年間、柔軟性のある生殖を享受してきた社会、そしてその意図しない結果の抑制と管理のために最終的に支払う社会は、どの程度までこの決定に関与したのであろうか? そしてこのことは、我々の環境中のいたるところに潜入し、同様に低いレベルで水生動物に亜致死性の影響をもたらしている数千の他の医薬品に対してどのような意味を持つのであろうか?



化学物質問題市民研究会
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