欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
12. 増強殺生物防汚剤:歴史は繰り返しているのか? (概要編)
Andrew R. G. Price and James W. Readman
情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part B Summary
12 Booster biocide antifoulants: is history repeating itself?
Andrew R. G. Price and James W. Readman
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-12

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/12_Biocide_antifoulants_summary.html


 トリブチルスズ(TBT)は、環境や貝類に対する立証された有害性のために、欧州共同体が1989年にその使用を制限するまで、船舶及びボートのための塗料中の効果的な防汚剤として広く使用された。その後、防汚塗料の性能を強化するために増強殺生物剤が導入された。それらは、TBTに比べて水生生物へのダメージが小さいと信じられた。しかし、その後、増強殺生物剤もまた著しい環境リスクをもたらすことが判明した。

 この章は、増強殺生物剤使用の背景、それらの非標的種への潜在的な生理学的及び生態学的影響、及び、とられた対応措置について概説している。環境的に侵略性の少ない解決をまだ研究しているある産業の将来に影響を及ぼすことことができる教訓とともに、警鐘を鳴らす科学が述べられている。

 増強殺生物防汚剤は、EU及び世界中でサンゴ礁や海草藻場から開放停泊地に至るまで、生物の様々な生息地を脅かしている。それらの殺生物性は、サンゴ褐虫藻、植物プランクトン、付着生物などが特に影響を受けやすい。TBTに比べて、非常に特定の作用を持つ防汚剤である増強殺生物剤は、より広い範囲の影響を持つ。増強殺生物剤への移行による広範な生態系影響はほとんど分かっていないが、それらは海洋食物連鎖の基礎に影響を与えるので、少なからぬ懸念がある。

 毒性学的観点からは、増強殺生物剤はTBTsと同様な内分泌かく乱作用を持つ恐れはない。しかし、現在の環境中での濃度では、あるものは一次生産者に損害を与え、あるものは残留性を持ち得る。それらの使用を管理するために法律が導入されているが、規制の厳格さは国によって異なる。これらの地理的差異に目を向ける必要があり、将来の殺生物製品及び防汚剤への新たなアプローチがもっとよく評価されるべきである。

 政策策定者にとっての課題は、増強殺生物剤の使用結果から生じる個別の変化から目標ではない生物学的対象を保護することである。残留性、生物蓄積性、及び有毒性(PBT)基準は、利用可能な殺生物剤からの関連する潜在的影響を評価するために使用することができ、したがって、適切な法律を目標に定めることができる。防汚剤に対応するための新しい物質と戦略を特定することを目指す水平思考は、将来、高い配当をもたらすことになるであろう。



化学物質問題市民研究会
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