IPEN 2022年11月21日
プラスチック中の有害化学物質が
世界的な健康リスクを引き起こし、
循環型経済を害する

プラスチック条約の交渉に先立って、新しいガイドは、
プラスチック中の化学物質による健康と環境のリスクを
代表者らに知らせる
情報源:IPEN, 21 November 2022
Toxic Chemicals in Plastics Pose Global
Health Risks, Poison the Circular Economy

Ahead of the Plastics Treaty negotiations, a new guide informs
delegates on the health and environmental risks from chemicals in plastics
https://ipen.org/news/toxic-chemicals-plastics-pose-
global-health-risks-poison-circular-economy


訳:安間 武(化学物質問題市民研究会
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
更新 2022年11月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/plastic/IPEN/221121_IPEN_Toxic_Chemicals_
in_Plastics_Pose_Globa_Health_Risks_Poison_the_Circular_Economy.html

 プラスチック条約 INC-1 に関する IPEN のクイック ビュー(訳注1)と
その他のリソースは、こちらからご覧ください。


 代表者らは、今月後半に始まるプラスチック条約の最初の政府間交渉委員会 (INC-1) (訳注2)のためにウルグアイのプンタ・デル・エステに向かう予定であるが、IPEN からの新しい報告書は、プラスチックのライフサイクル全体で有害化学物質から人間の健康と環境を保護を保護するために条約を確立することの重要性を概説している。その報告書『プラスチックと有害化学物質の紹介(An Introduction to Plastics and Toxic Chemicals)』が指摘しているように、”プラスチックの健康と環境への影響は世界的な危機である...プラスチックは化学物質を世界中の隅々まで運ぶ−それらは有害化学物質を我々の家庭に持ち込み、最終的には我々の体内に持ち込む。”



 ストックホルム条約の交渉に貢献するために 1998 年に設立された IPEN は、化学物質と廃棄物に関するすべての主要な国際文書に 25 年近く貢献てきた。””プラスチック条約はプラスチック生産による危機を終わらせ、より安全な材料と真に持続可能な循環経済のための革新を促進する重要な協定となるであろう”と IPEN の共同議長であり、条約交渉の公益参加者であるエチオピアのタデッセ・アメラは述べた。 ”我々は、裕福な国からのプラスチック廃棄物がしばしば捨てられるアフリカやその他の地域では、プラスチックが我々の空気、食物、水を汚染し、毎日の健康を脅かしていることを考慮するよう代表者らに強く求める。だからこそ、プラスチックの生産を減らし、廃棄物投棄を終わらせるための規則を採用することが急務である。”

 ウルグアイで開催されるプラスチック条約会議には、主に低中所得諸国の 40 以上の参加組織から IPEN のリーダーらが参加する予定である。交渉のいくつかの重要な問題に関する IPEN の見解と勧告は、こちらから入手できる(訳注1/A>)。 IPEN の調査と研究からの元のデータ、プラスチックによる脅威に関する概要とファクトシート、及びその他の背景情報も、IPEN の Web サイトで入手できる。

 ”我々は管理されていないプラスチック廃棄物に起因する深刻な健康問題に直面しているので、プラスチック条約政府間交渉委員会がウルグアイで開催されることは非常に適切である”と”IPEN 参加組織である地元の非営利団体 RAP-AL ウルグアイのコーディネーターであるマリア・イザベル・カルカモは述べた。”プラスチックのライフサイクルを通じて、有害化学物質が我々の健康と環境に脅威を与えることを代表者らが理解することは非常に重要である。特にラテン・アメリカ、アフリカ、アジアでは、健康的環境への人々の権利を脅かすプラスチック投棄から地域社会を保護する必要がある。”

この報告書には、プラスチックと化学製品の生産をプラネタリー・バウンダリー(planetary boundaries crisis)(訳注3)の危機と呼んでいる最近の出版物の共著者である Bethanie Carney Almroth、Patricia Villarubia-Gmez、及び Zhanyun Wang による序文が含まれている。彼らは序文で次のように述べている。”[プラスチック危機]への対応は、公平、正義、及び人権を注意深く考慮しつつ、世界的で結合力があるべきである。我々は、IPEN によるこの報告書がこれらの問題に関して非常に必要とされている認識を高める上で重要な役割を果たすと確信している。”

 ”プラスチックは、何千もの化学物質で作られた複雑な材料群である。現時点では、廃棄物を管理し、プラスチックが環境や我々自身の体内に侵入するのを防ぐための、安全で計測できる真の手段がない。約束にもかかわらず、リサイクル計画はほとんど失敗に終わっており、循環経済はまだ存在しない。プラスチックの安全な再利用またはリサイクルが保証されるまで、人間の健康と環境を保護するために、これらの材料の生産と使用を減らし、有害な化学物質の使用を段階的に廃止する必要がある”と、スウェーデンのヨーテボリにあるヨーテボリ大学生物・環境科学部のベサニー・カーニー・アルムロトフ博士は述べた。

 IPEN レポートは、プラスチックのライフサイクル全体における毒性の脅威を概説しており、以下が含まれている。
  • プラスチックによる健康被害の概要。プラスチックに使用されている 2,400 を超える物質が懸念される化学物質として知られており、がん、不妊症、知的機能障害、身体発達の遅延、及びその他の健康状態に関連してる。

  • 内分泌かく乱化学物質、残留性有機化学物質、及び健康を脅かし、プラスチックで一般的に使用されるその他の化学物質に関する背景と最新の科学。

  • 化学添加剤の市場が 2018 年の 438 億 2,000 万ドルから 2025 年までに 612 億 5,000 万ドルに成長すると予測されていることを指摘しながら、業界のプラスチック生産の増加による脅威についての議論。

  • プラスチック廃棄物処理計画の誤った約束を暴露し、プラスチック・リサイクルの神話を示す。これには、化学物質と「高度な」リサイクルの数十年にわたる失敗、プラスチック廃棄物燃料による健康と環境へのリスクの概要、及びリサイクルが化学物質を単純に移動させるだけのことの実証が含まれる。プラスチックを新製品に使用することで、より多くの人々を有害な化学物質にさらし、循環型経済を害している。

  • プラスチックが世界中に化学物質を運び、プラスチックが生産されと使用された場所から何千マイルも離れた場所で健康と環境への害をもたらすため、この目に見える汚染を超えて、プラスチックに含まれる化学物質が目に見えない脅威をもたらすことに注目して、海洋プラスチックからの脅威を検討する。
IPEN のウェブサイトで報告書全文をお読みください。


訳注1:プラスチック条約 INC-1 に関する IPEN のクイック ビュー
訳注2:プラスチック条約 INC1
訳注3:プラネタリー・バウンダリー
  • プラネタリー・バウンダリー(ウィキペディア)
     プラネタリー・バウンダリー(Planetary boundaries)は、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念である。地球の限界あるいは惑星限界とも呼ばれる。プラネタリー・バウンダリーは、安全域や程度を示す限界値を有する 9つのプロセスを定めている。・・・

化学物質問題市民研究会
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