ウッドロー・ウィルソン国際学術センター
新規出現ナノ技術プロジェクト
ナノ技術の影響を管理する
J. クラレンス(テリー)・デービス
(エグゼクティブ・サマーリー他の紹介)

情報源:Woodrow Wilson International Center for Scholars
Project on Emerging Nanotechnologies
Managing the Effects of NANOTECHNOLOGY
by J. Clarence Davies
http://www.wilsoncenter.org/events/docs/Effectsnanotechfinal.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年1月24日
更新日:2006年3月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/wwics/managing_effect_nano.html

 内 容
序言
エグゼクティブサマリー
著者について
T.ナノ技術の特性
 1. ナノ技術の定義
 2. 急速な開発
 3. 有効なデータの欠如

U.既存の法規制権限

 1. 有害物質規正法

 2. 労働安全衛生法

 3. 食品医薬品化粧品法

 4. 環境法 - CAA, CWA, RCRA
 5. その他の法規
V.既存の法規の適用
 1. 調整の仕組み
 2. 既存法規の修正
 3. 既存法規の強化
W.新規の法規
 1. 解説
 2. 長所と短所
 3. その他の選択
X.環境的に有益な技術のためのインセンティブ
 1. 調査研究
 2. 税制上の優遇措置
 3. 取得プログラム
 4. 規制の利点
Y.新たな制度的権限
 1. 国際的な調和
 2. 先見能力
 3. 調査研究
 4. 公衆参加
引用文献


 序 言
 この論文には二つの目的がある。ひとつはナノ技術の有害影響に対処するために政府がとり得る措置の説明である。もし重要な項目の記述が落ちていれば、それは不注意か無知のためである。

 もうひとつの目的はナノ技術を管理するために何がなされるべきかを決定することに関連する証拠を提供することである。この研究を開始した当初の私の意見は新たな法規制は必要ないというものであったが、私がナノ技術の特異な側面についてもっと知るようになり、また既存の規制の弱点についてもっと知るようになるにつれて、新たな法が必要であるという結論に傾いていった。しかしこの論文は、ある新たな法を主張するものではない。もし、そのような目的なら、もっと違った書き方をしたであろう。むしろ、この論文はは政策的分析であり、読者に対し取るべき方策の道筋について考えるための情報を提供するものである。簡単に言えば、この論文は情報の提供を意図したものであり、説得することが目的ではない。

 この論文のタイトルについて言及する必要がある。今後の数十年間でナノ技術は我々の生活の多くの側面を、望むらくはより良い方向に変えるように見える。新たな物質と製品は、多くの物事に対する我々の現在の手法に革命をもたらすであろう。私はその様なことの影響についてここで議論するつもりはない。この論文が対象とする時間枠は今後の5年から10年であり、ナノ技術の潜在的な有害影響の管理について主に目を向ける。

 私は、惜しみない支援と励ましをいただいた”新たに出現しているナノ技術に関するプロジェクト”に、そしてまた、絶え間ない支援をいただいた”将来のためのリソース”に感謝する。多くの方々がこの論文を読み、著者からの愚かな質問に答えるために貴重な時間を割いていただいたことに感謝する。特にこのプロジェクトを立ち上げたジュリア・ムーア、そしてウッドロー・ウィルソン国際学術センターのメンバーであるデーブ・リジェスキー、アンドリュー・メイナード、バーバラ・カーン、そしてエバン・ミケルソンに感謝する。貴重な時間を割いてくださったそのほかの方々には、ウイリアム・ライリー、マイク・テーラー、マーク・グリーンウッド、ミカエル・モドマイヤーがいる。ジェフ・ポロにはすばらしい編集をしていただいた。これらの人々の協力のおかげで、この論文は非常によいものになったが、この論文に含まれる全てについての責任は、ひとり著者にある。


 エグゼクティブ・サマリー
 ナノ技術は、100ナノメートル以下の極小のスケールで物質を製造し使用する技術である。100ナノメートルは人の髪の毛の太さの約800分の1であり、赤血球の直径の70分の1である。ナノスケールでの物質は、同一組成の通常のサイズの物質に比べて、物理的にも化学的にも生物学的にも非常に異なった特性をしばしば持つ。我々はナノ技術の可能性ある有害影響についてほとんど分かっていないが、公衆の健康と安全が有害影響を受けないことを確実にするために、政府の何らかの規制が必要であるということは十分に分かっている。この論文は、連邦政府の法規制全体を眺めつつ、現在可能な管理の選択肢を検証した結果、以下のような結論を得た。

既存の諸規制を用いてナノ技術に対処するのは難しい。
 ナノ物質を検証し規制するための法的根拠となるものとして、多くの良く知られた既存の法律、例えば有害物質規制法、労働安全衛生法、食品医薬品化粧品法、その他主要な環境法(清浄大気法、清浄水法、資源保護再生法)がある。しかし、これらの法の全ては法的権限の重要な欠陥、あるいはリソースの全体的な欠如、あるいはその両方をもっている。特にナノ技術は構造と機能においてより複雑となり、その適用がより多様になっているので、潜在的なリスクを特定し公衆を保護するためには、既存の規制の基礎は非常に弱い。

ナノ技術の潜在的なリスクを管理するために新たな法が必要かもしれない。
 新たな法は、製造者に対しその製品が許容できないリスクを及ぼさないことを示す持続可能性プランを提出することを求めるかもしれない。その期間について、この論文でさらに議論されている。新たな法を通すことは不可能ではないが政治的な障害は非常に大きく、既存の法の下にナノ技術に適合させようと試みることはやりがいのあることである。

新たな仕組みと制度的能力が必要となる。
 この論文はナノ技術の有益な適用を推進するいくつかの仕組みについて述べている。それらには、調査研究、税制上の優遇措置、取得プログラム、及び規制のインセンティブなどを含む。そこから4つの分野での制度的必要性が導かれる。すなわち、国際的な協調、先見能力、健康と環境に及ぼす有害影響に関する調査研究、及び公衆参加である。

 もし、ナノ技術の可能性ある有害影響を管理するために特別なことが何もなされないなら、望ましくないことが広範に引き起こされるであろう。公衆は保護されないままに放置されるかも知れず、政府は新規の技術に対応するよう作られていない既存の法律を適用しようと苦闘し、産業界は公衆の反発を受け、市場を失い、財政的基盤を揺るがされるかもしれない。ナノ技術によってもたらされる課題は、ナノ技術が持つより良い生活のための約束と同様に、数も多く動も大きい。もし、ナノ技術がその約束を満たすことになっているなら、社会はこの技術が有害影響を持っているかどうかあるいは及ぼすかどうか、これらの影響はどのようなものなのか、そして将来どのようにして防ぐことができるのかという問題に素直に向き合わなくてはならない。

訳注:
 ナノ材料への被爆がヒトの健康に及ぼし得る影響を特定する為の原則:スクリーニング戦略の要素  (解説:NEDO海外レポート No.966, 2005.11. 2)からの引用

(注1)EPA の汚染防止・毒物部(Office of Pollution Prevention and Toxics = OPPT)では、ナノ材料リスク管理のために新たな規制を策定するのではなく、既存の化学物質統制法である『有害物質規制法(Toxic Substance Control Act = TSCA)』を使うことを検討し、「ナノ材料自主的パイロット計画(nanoscale materials voluntary pilot program)」を草稿した。2005 年6 月23 日には首都ワシントンでこのパイロット計画に対して利害関係者から広く意見を聴取するため公開会合が開催され、EPA はその結果を踏まえて、米国汚染防止・毒物諮問委員会(National Pollution Prevention & Toxics Advisory Committee =NPPTAC)の下にナノ材料に関する特別作業部会(Interim Ad Hoc Working Group onNanoscale Materials)を設置。この特別作業部会の策定したナノ化学品に関する自主報告プログラム草案は2005 年9 月29 日の公開会合で紹介され、そこで得られた一般からのインプットを考慮に入れた自主報告プログラム案が10 月12 日にNPPTAC 本委員会へ上程されるに至っている。しかしながら、10 月12〜14 日に開催されたNPPTAC 会合では、同プログラムの名称、目的、対象者、インセンティブ、実施期間やスケジュール等で合意が得られず、11 月末または12 月初めに公開の電話会合を開催して最終提言をまとめることとなった。ナノ化学品の自主報告プログラムに関するNPPTAC の最終提言は首都ワシントンで2005 年12 月7 日から9 日まで開催される「ナノ化学品の安全性の取り扱いに関するOECD ワークショップ」において紹介される見通しである


T.ナノ技術の特性
 ナノ技術は、原子又は分子のスケールに近い人工的に作られた物質の製造及び使用に関する技術である。ナノ技術は、肉眼では見ることのできない非常に小さい構造を原子毎に操作する。それは基本的に新たな機能と特性を持つ物質、装置、及びシステムを作り出す能力を提供する。
  ナノ技術の将来性はとてつもなく大きい。それはほとんど全ての製造プロセスと製品に影響を与える。今後の20〜30年間に潜在的なナノ技術の適用は、コンピュータの処理速度の向上、いくつかの異なるがんの治療、もっと効果的な照明とバッテリ容量、海水淡水化装置のコスト削減、決して汚れのつかない布やクリーニング不要のガラスなどを生み出すであろう。便益はほとんど無限であるが、それらはナノ技術の潜在的な有害影響が検証され管理されてはじめて実現されるであろう。
 ナノ技術は新しいが、その影響を理解し、管理する取組は長期にわたるであろう。世界のコミュニティはナノ技術の有害影響を削減するよう試みているので、これらの影響の我々の理解は着実に増大するであろう。同時に、技術の進歩と商業的適用が増大し、新たな課題と問題が生じるであろう。この論文がカバーするトピックスは今後20〜30年間のことである。この技術の3つの側面はそれをどのように管理するかという問題に関連する。一番目は定義である。ナノ技術は広い範囲の様々なプロセスと物質をカバーする。人はナノ技術を規制し又は管理することについて語ることが、青いもの(blue)又は非常に大きなものを規制又は管理することよりも、理に適っているかどうか検討しなくてはならない。二番目はナノ技術の急速な開発である。新しい適用が直ぐに見つかり、新たな物質と新たな用途に広がり続ける。三番目はナノ技術の可能性ある有害影響である。現時点では、我々は非常に僅かしか、これらの影響について知っていない。

1.ナノ技術の定義

 ナノ技術の定義は混乱し議論を引き起こしやすく、天然に発生するナノサイズの物質、及び燃焼や産業プロセスの副産物として生成されるその他のナノサイズ粒子があるという事実によって複雑になる。ナノ技術のどのような定義においてもサイズは重要であるが、循環において様々な定義がある。定義上の相違は学問上の興味だけでなく、法律に関連するナノ技術の定義は、何が規制されるのか、どのように規制されるのか、そして規制プログラムがいかによく機能するか−ということにかかってくる。
 アメリカ国家ナノ技術イニシアティブ(NNI)はナノ技術を、”寸法が概略1〜100ナノメートルの物質の理解と管理・・・ナノ技術は、このサイズの物質の画像化、測定、モデル化、及び操作に関わる”として定義している。(http://www.nano.gov 10/06/05にアクセス) ヨーロッパではナノ技術を100ナノメートル以下の人工構造を持った適用と製品を扱う技術として、もっと単純に定義する傾向がある(Swiss RE 2004 p.11; The Royal Society 2004,p.5)。比較とし人間の髪の毛の太さは約80,000ナノメートルであり、赤血球は約7,000ナノメートルである(Royal Society 2004, p. 5)。
 この論文の脈絡において、定義の疑問が少なくとも2つの重要な疑問をさらに提起する。1) サイズだけでプロセス又は物質を集めて規制又は管理することは理に適っているか? 2) 製造者及び規制者の両方が何が含まれ何が含まれないか知ることができるよう定義は公式化することができるか?
 ナノ技術を切り離したカテゴリーとして規制することを合理的とする基本的な理由は、ナノ物質が通常の物質とは異なった振る舞いをするということである。ナノ物質の特性はしばしば、古典的な物理学や化学の法則では予測できない。より大きな物質に適用する電気学の法則はナノ物質に適用できないかもしれない。通常のサイズの物質では導電性があってもナノサイズでは絶縁性があるかもしれないし、その逆もありえる。我々は毒性及び環境影響について、ナノ物質がこれらに関し同様に異なる特性を持つかどうか十分には分かっていないが、しかし、例えば、ナノ物質の毒性は物質の重量よりも表面積により関連しているように見える(Oberdorster 2005, Maynard 2005)。確かに、ほとんどの化学物質規制で仮定されている物質の量と曝露との直接的な関係は、ナノ物質を扱う場合には有効な指針ではない。
 ナノ物質を異なるものとするもうひとつの要素は、その物理的及び生物学的挙動を決定する構造の重要性である。ある専門家らは、ナノ物質と言うよりナノ構造物質と言う方を好む。多くの場合、ナノ製品は炭素、チタン、あるいは金の分子又は原子から出発し、例えばナノドットやナノチューブのような基本的な形状に形成される。これらの形状は、より大きな構造に結合され、及び/又は、繊維、樹脂、又はガラスなどの他の物質に結合される。ナノ製品の挙動は最初の化学物質からは予測できない、あるいは、物質の構造が主要な決定要素なので、しばしば基本ナノ形状と同等である。これに関しては、化学的ポリマーに似ており、興味深いことには有害物質規正法(TSCA)はポリマーを除外している。
 もし、上述したような相違があるなら、ナノ技術を取り扱う上で既存の規制と管理プログラムは非常に有効であるようには見えない。このことは必ずしも既存の法令を使うことができないということではないが、少なくとも調整や修正が必要である。この論文の第U章及び第V章は既存の法律のナノ技術への適用について議論する。切り離したカテゴリーとしてナノ技術の管理を議論する時に、ナノ技術プロセスとナノ技術物質を区別することが有効かもしれない。後者のナノ物質は、まず間違いなく政府の規制プログラムに基本的な変更を求めるであろう。一方、ナノ技術プロセスは労働安全衛生法(OSHA)と既存の環境法の下に、もっと従いやすいかもしれない。第U章はこのことについてもっと詳しく議論する。
 定義に関する疑問−規制する者と規制される者は、何がナノ技術で何がナノ技術でないかを明確に区分けすることができるかどうか−に対する答えは定義の詳細とそれを適用する技術的能力に依存する。これらの問題は現時点では解決できないが、様々な産業分野を通じて、一般的に何がナノ技術かということに関しては合意があるように見える。

2.ナノ技術の急速な開発

 現代は技術開発の急速化によって特徴付けられるが、ナノ技術は特に急速に開発されている。この分野は、ノーベル賞受賞の物理学者リチャード・ファインマンが”微細”な世界に目を向けるよう求めた1959年まで、特定されていなかった(Ratner and Ratner 2002, p.38)。2001年、『サイエンス』誌はナノ技術を”今年のブレークスルー”に指名した。現在、ナノ技術には数百の異なる商業的適用がある。国家科学財団は、ナノ関連商品とサービスは2015年には1兆ドル(約110兆円)市場になると予測している(Roco and Bainbridge 2001, p.3. このしばしば引用される数値はほとんど分析ベースではない。Miller et al 2005, p.175.を参照のこと)。
 現在のナノ技術開発のスピードのために、政府が原因であるる規制その他の遅れは産業界にコスト負担を及ぼし、初期投資金額が少ない小企業には死活問題である。政府はどのような企業又は産業分野に対しても不公平な優位さをもたらすようなことは避けるよう試みるかもしれないが、同じ土俵を保つことは不可能であろう。規制は必然的にある企業を他者のコストで儲けさせることがある。大きな企業は小さな企業より有利であろう。製品の急速な導入に依存する企業は、それ程依存しない企業に比べて不利である。
 ナノ技術の急速な開発はまた、政府の管理者は常に古い情報を扱っており、ナノ技術の影響についてのデータは商業的適用に遅れることを意味する。研究と規制のための優先度は常に変わることが必要である。我々は、デービッド・リジェスキーが述べているように、”製品、プロセス、及び組織の急速な改善によって支配され、結果に適応する又は結果を形成するための我々の従来の管理体制の能力を超えるスピードで全てが動いている”世界に移行してしまった。彼は、”あなたは、既存の枠組みがこの変化の速度についていけるかどうか考えているかどうか、もう一度考えるべきである”と警告している(Rejeski 2004, p.45.)。
 これらの結果は、政府はナノ技術の有害影響を扱うべきではないということを意味するわけではない。そのような困難はナノ技術管理システムを設計し実施する時に認識され考慮に入れられる必要がある。

3.有効なデータの欠如

 ナノ技術が着手されてからほとんど時間が経過していないのだから、その有害影響についての知識の欠如は驚くに当たらない。ナノ技術の有害影響を扱った研究調査はの総数は少ないが、増加している(概要:Maynard 2005, Oberdorster 2005, and Thomas 2005)。
 ナノ技術の潜在的な有害影響についての懸念は曝露と毒性の両方に関連している。ナノ構造微粒子の非常に小さいサイズは曝露の独特な問題を引き起こす。ナノ粒子は吸入されると潜在的に肺の奥深くに浸透することができ、皮膚を通じて吸収されるかも知れず、一度人間の体のどのような部分にでも入り込むと、体内全体を巡るかもしれない。オバドルスターら(Oberdorster et al (2005))は、”ナノスケール微粒子の生物学的活動とバイオキネティックスは多くのパラメーターに依存する。すなわち、サイズ、形状、化学的特性、結晶性、表面特性(面積、有孔性、電荷、表面変位、コーティングの風化)、凝塊状態、生体残留性、用量などである”と指摘している。ナノ物質が一度環境中に放出されると、環境はそれらをとどめておくことは不可能であろう。暴露についての懸念は空論ではない。ナノ技術の現在の商業的適用の多くは、化粧品や衣類、薬剤のように高曝露の用途である。
 ナノ技術の毒性の側面は研究が始まったばかりである。メイナード(Maynard (2004))は、ナノ構造物質が独特な健康リスクを及ぼすかもしれないことを示す多くの定量的な指標があると述べている。質量と容量の化学的特性に比べて粒子表面積と活性度はナノ粒子の肺疾患毒性のより良い指標かもしれない(Maynard (2004))。ナノ粒子は、鼻から神経を通じて脳に移動するかもしれない(Oberdorster 2005)。カーボン・ナノチューブは肺に重大な炎症をもたらすかもしれない(Maynard 2005)。魚によるいくつかのテストは毒性を示したが、致命的な影響ではなかった(Oberdorster 2005)。ナノ技術の有害影響について我々が持っているこのことやその他の断片的な知識は明らかに初歩的であるが、懸念を正当化する潜在的又は実際の影響が存在することを示すのに十分である。


U.既存の法規制権限
 アメリカの政治システムでは、かつて商業製品を規制する新たな法律を制定することが容易であったことは決してなかった(Lazarus 2004)。現在の政治的風土では、それはほとんど不可能である。従って、ナノ技術の健康と環境への影響に目を向ける必要があると考える人々は既存の規正法に注目した。これらの規正法について以下で検証する。それぞれの主要な法律について、私はその法律がナノ技術に適用できる範囲、そして、もし適用された場合の規制制度の長所と短所に目を向けた。
 適切な法的権限だけが規制プログラムが成功するための要求事項ではないということを頭に入れておくことは重要である。適切な人的及び金銭的リソース及びそのリソースと権限を利用する意思もまた必要である。以下に議論するプログラムの多くはそれらの法的義務を満たすために必要なリソースを持っていない。私は個々のプログラムの議論の中で、大きな問題のある事例を指摘するであろう。

1.有害物質規正法 (TSCA)

 ニクソン大統領の環境品質評議会が、根拠があろうとなかろうと有害化学物質に関連する多くの懸念を取り扱う方法として、最初に有害物質規正法(TSCA)を提案した。1976年に制定されたこの法律の主要な目標は、新規化学物質が適切な安全システムなしに市場に出されることを防ぐこと、及び既存の化学物質の規制の中にあるギャップを埋めることであった。この法律は議会において民主党による気乗りのしない支持のもとに制定された。
 有害物質規正法(TSCA)の範囲は非常に広く、その結果、ナノ技術を規制する主要な手段となり得ると考えられる。天然資源防衛協議会(Natural Resources Defense Council)やグリーンピースを含む広範な環境団体連合は、ナノ技術を有害物質規正法(TSCA)の条項の下で規制することを要求した(comments from NRDC et al in EPA Docket OPPT-2004-0122, submitted June 9, 2005)。
 有害物質規正法(TSCA)の範囲は、少なくとも二つの点で広い。第一に、多くの環境法とは異なり、環境のひとつの側面(大気、水、など)だけを対象範囲として限定していない。したがって、その規制範囲は全ての潜在的な影響を包含するものであり、特定の媒体に起こるものだけではない。このことはナノ物質とその製品は特定の環境のある部分に限定されないので適切そうである。
 第二に、この法律は、”特定の分子構造持った有機物又は無機物”として幅広く定義される”化学物質とその混合物”に向けられている(TSCA sec.3(2)(A))。農薬、医薬品、化粧品、及び医療装置のような他の法規で明確にカバーされる製品類は有害物質規正法(TSCA)の範囲から外される。前述の環境連合は、全ての人工ナノ物質は有害物質規正法(TSCA)の下での新規の化学物質であり、そのように規制されるべきであると主張している(comments, p.2)。
 例えナノ物質が新規物質のTSCA基準に合致しなくても、この法律にはこれらの物質をその傘の下に収めることができる他の条項がある。これは”著しく新規な用途規定 (SNURs)”の条項である。もし既存化学物質が、その影響が変わるような−例えばヒトの暴露が増加する(TSCA sec. 5(a))ような−新たな用途で使用されるなら、EPA長官は、既存化学物質を新規化学物質のように規制すると宣言することができる。この新規用途条項は、個々の特定のナノ物質を新規用途規定(SNUR )の対象としなくてはならないのなら、そのようなアプローチは非現実的で時間とリソースを要することになり、実行可能な方法ではないかもしれない。しかし、TSCA(sec. 26(c))は、個々の化学物質に関して取られる措置はまた、化学物質の”カテゴリー”として適用することができると規定している。カテゴリーは”物理的特性”が似た化学物質のグルーープを含むこととして定義されており(sec. 26(c)(2)(A))、ナノ物質はサイズのような似た物理的特性を共有しているのでナノ物質をカバーするのに適切であるように見える。
 TSCA の下にナノ物質を含めようとしたときに生ずる最も難しい課題は、おそらく、T.1. ナノ技術の定義−で議論した構造の重要性である。化学物質が基本的なナノ物質の形状(例えば、ナノ量子、ナノチューブ)に形作られた時点で、ナノ物質がTSCAの権限下に置かれたとしても、最終製品からの暴露やその毒性はその時点では予測できない。したがって、ナノ技術の有害影響を取り扱う努力は最終製品に向けられなくてはならない。しかし、基本的ナノ物質形状の製造者が全ての可能性ある用途を追跡することを期待することは合理的ではないし、現実的でもない。さらに、ナノ物質がもっと大きな構造や他の物質に結合される次の段階までに、TSCAがカバーするものとして定義された分子の同一性(molecular identity)を失っているかも知れない。ナノ技術サプライチェーンの追跡とともに、用途の報告を要求する基本ナノ物質形状に関するラベリングはこの困難に対する部分的な解決をもたらすかもしれない。しかし、これは、既存の法的カテゴリーをナノ技術製品に適用しようと試みる時に生じる問題の明確な例である。
 現在、TSCAの新規化学物質届出要求は、化学物質のいくつかのカテゴリーを免除している。同法(sec. 5(h)) はEPA長官に免除を与える権限を与えているが、何が免除されるかはEPA長官が発布する規定によって定義される。ナノ技術に最も関連する免除は年間製造量が10,000キログラム以下の化学物質の免除である(Code of Federal Regulations, Title 40, Ch.1, part 723.5)。これは年間製造量が11トン以下のものと同等であり、ほとんど全てのナノ製品をを除外することになる。もしTSCAがナノ技術に適用されることになれば、それは明らかに不合理である。EPAはナノ物質を除外するような低生産量物質の免除を修正する必要があるが、除外項目をいじることは困難がともなうであろう。
 TSCA は劇的な長所と短所を併せ持つ法律である。その長所は、適用範囲が柔軟性をもって広いこと(上述)、及び化学物質のリスクに対し幅広い措置をとることができることである(TSCA sec. 6)。その措置には、EPA長官が課そうと望むほとんどどのような要求も含めることができる。
 TSCA の長所は、EPAが措置をとるのを難しくする障壁や障害によってバランスしていないことである。法律全体はリスクと便益のバランスを前提としている(see especially TSCA 6(c)(1))。そのようなバランスは議論や訴訟を引き起こす。同法は、EPAが訴訟に巻き込まれることに関連する少なくとも3つの問題点がある。
 第一に、同法における法的レビューのための技術基準は、規定作成記録中の相当量の証拠によって支えられている(TSCA 19(c)(B)(i))。この基準は適合することが非常に難しく、大気浄化法(Clean Air Act)、水浄化法(Clean Water Act )及び、ほとんどの他の環境法に適用されているもっと易しい”任意”で”気まぐれ”な基準と対照的である(see Corrosion Proof Fittings v. EPA, 947 F.2d 1201, para.15)。その結果は、TSCAの下で発布される規定をEPAが守ることは非常に難しいということである。
 第二の短所は、化学物質についての知識がないことは、リスクがないことを意味するとTSCA は暗示的に仮定していることである。最も関連する Ssection (5(e)) は、”Catch 22 (訳注:戦争の狂気を描いた小説の題名/この場合はジレンマの意”の典型である。そこでは、もしEPAが”化学物質の健康と環境への影響について熟慮した評価ができる”十分な情報を持っていないなら、その化学物質が”不合理なリスクを示すかもしれない”ことを示すことができた場合にのみ−それはまさにそのように示すことができい事柄である−、その製造を遅らせるか禁止することができると述べている。理論的にはEPAの措置のために使えるもうひとつの基準がある。これは、化学物質が大量に製造されれば大量のヒト又は環境暴露があるというものである。実際には、この基準はほとんど使われたことがない。それはほとんどの新規化学物質は当初は生産量が少なく、そして著しい暴露の可能性を示すことは困難であるからである。生産量は潜在的なリスクに関連する指標ではないかもしれないので、ナノ物質にとってはこの問題は大きい。
 第三の問題は、この法はEPAがある化学物質を規制する前に、様々な要求に合うことをEPAに求めていることである。これらの要求の困難さは、EPAが10年を費やしてこの規制案を支える分析を行ったにもかかわらず、分析が適切ではなかったこともあって、EPAのアスベスト規制案に一撃を食らわせた”腐食耐性継ぎ手訴訟(訳注:Corrosion Proof Fittings case)”によって劇的に示された。例えば、TSCA は提案される規制は”最も煩雑でない規制”であることを求めており、裁判所はEPAはアスベストを規制する他の可能性ある全ての方法のコストと便益の分析をしていないと批判した。
 この法律中に含まれるこれらやその他の欠点のために、TSCAは弱い規制になっている。さらに、政府のほとんどの規制プログラムについて言えることであるが、有害物質規制の事務所にこの法によって求められる仕事を実施するために十分な人がいないという単純な問題がある。

2.労働安全衛生法 (OSHAct)

 労働安全衛生法(OSHAct)は1970年に制定され、それ以来しばしば改正されてきた。同法は労働省管轄の労働安全プログラムと、健康・教育・福祉省(現在の保健社会福祉省)の労働衛生機能が結合したものである。労働省が労働安全衛生法(OSHAct)を主管する。
 OSHAct の基本的な機構は、基準を設定し、検査を通じて基準を執行し、違反に対して罰則を科すために設立されたに労働省内の労働安全衛生局(OSHA)である。労働安全衛生基準は、OSHAct(sec. 3(8))の中で、”安全又は健康な雇用と雇用の場所を提供するために合理的に必要な又は適切な条件又は、ひとつ以上の実施、手段、方法、運転、又はプロセスの採用又は使用を求める基準である−と定義されている。”この記述はナノ技術をカバーするのに十分に広い。
 ナノ技術を取り扱うためにOSHActを用いることの困難さは、他のほとんどの環境法に生じさせるものと同じである。ナノ製品の検出には高価で複雑な装置を必要とし(Ratner and Ratner, 2002, pp.3942)、毒性の観点からどのパラメータを測定すべきかしばしば不明確である。実際的な目的で、工場又は一般環境での据付、検出、制御方法(例えば、フィルターなど)は現在は有効ではないかも知れず、又は非常に高価であるか扱いにくいかも知れない(or a discussion, see Maynard 2005)。
 さらにOSHA のひとつの弱点を指摘する必要がある。EPA と同様に OSHA は伝統的にリソースが足りない。1980会計年度には OSHA の従業員は2,950人であった。25年後、経済は格段に拡大し職場の数も非常に増えたのに、OSHA の従業員は2,208人である(Dudley and Warren 2005,Table A-3, p.21)。EPAは、州の機関が検査や執行のような人手のかかる作業を行っているので、基本的な機能を遂行することができた。しかし、OSHAct を実施するために、OSHA 基準を執行することができる OSHA 承認の計画を持っている州はわずか21州に過ぎない。さらに3つの州が、州及び地方政府の従業員を守るだけの承認された計画を持っている(www.osha.gov, accessed 9/7/05)。アメリカには数百万の職場があり、OSHA の検査員が訪ねる機会は高くない。

3.食品医薬品化粧品法 (FDCA)

 食品医薬品化粧品法(FDCA)は100年の歴史を持つ法律であり、もともとはインチキ薬による中毒を防ぎ、ひどく不衛生な食品加工場を清潔にするために制定された。長年の間に、しばしば改正されその範囲も増大する対象分野をカバーするために拡大されてきた。
 ナノ技術適用の5つのタイプがFDCAの範囲にある。医薬品、生物医薬品(Biologics)、医療装置、化粧品、及び食品である。(医療装置は大づかみには病気の治療と診断に使われる全ての医療用品)。医薬品、生物医薬品、及び医療装置は、化粧品とは全く異なる規制が行われている(産業界の展望からのFDAとナノ技術の議論については Miller et al 2005, pp.83102 を参照)。
 医薬品、生物医薬品、及び医療装置は販売される前に食品医薬品局(FDA)の承認を得なくてはならない。承認手続きには時間がかかり厳格である。その製品が安全であることを示す責任は製造者にある。ある人々からはその手続きは時間がかかりすぎるとして批判され、他の人々からはまだ十分に厳格でないと批判されている。最近、FDAの決定に政治的な干渉があった事例として、緊急事後避妊薬(モーニング・アフター・ーピル)の承認決定を遅らせたという有名な事例がある。しかし、全体として、医薬品、生物医薬品、医療装置の承認手続きは合理的によく機能している。
 化粧品は全く扱いが異なる。FDCAは化粧品について悪口をたくさん言われているが、アメリカでは化粧品は本質的には規制されていないというのは言い過ぎである。FDCAは、”粗悪品(adulterated)”あるいは”不正表示(misbranded)”の化粧品の州間通商を禁止している。”粗悪品”は大雑把に健康に有害なものとして定義される。”不正表示”は、ラベル表示が間違っている、あるいは誤解を与える、あるいは要求される情報を表示していないことを意味する。しかし、化粧品の製造者はFDAに登録を要求されておらず、また、製品成分のデータの提出を求められておらず、また、化粧品関連の傷害をFDAに報告することを求められていない。たとえ、FDAが何かの機会にある化粧品が粗悪品又は不正表示であることを見つけても、その製品を回収(リコール)させる権限も製造者に対して措置をとる権限もない。FDAができることの全ては、司法省に対しその製品を市場から排除すために訴訟を起こすことを請求することだけである(参照 www.cfsan.fda.gov accessed 9/17/2005)。
 食品に対するFDAの規制は容器と食品添加物に焦点をあてている。医薬品に関するFDA規制のように、いくつかの食品関連の激しい議論があった(例えばサッカリン)。食品添加物として遺伝子組み換え食品を規制しないというFDAの決定は厳しく批判され、またFDAは食品中の残留農薬の不適切な監視のために非難された。しかし、FDAのFDCAの下での法的権威は適切であり、入手可能なリソースと実行すべき規制業務との間に大きな不均衡はない。これらの事実に照らして、ナノ技術ベースの医薬品、生物医薬品、及び医療装置、さらには多分ナノ技術ベースの食品添加物及び容器はFDCA権限の下に十分に規制されるように見える。一方、FDCAの下でナノ技術化粧品を規制することは合法的であり官僚的であるが、公衆は、化粧品を他の替わりの制度で規制することにより保護される方がよいであろう。


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クラレンス・デービスの報告書『ナノ技術の影響を管理する』 WWICS による紹介(当研究会訳)

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化学物質問題市民研究会
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