WWICS 2006年10月5日
FDA はナノテク対応の準備ができているか?

情報源:Woodrow Wilson International Center for Scholars
Project on Emerging Nanotechnologies
Is FDA Nanotech-Ready?
October 5, 2006
http://www.wilsoncenter.org/index.cfm?topic_id=166192&fuseaction=topics.item&news_id=202942

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年10月24日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/wwics/061005_Is_FDA_ready.html


 【ワシントン】 本日発表された元米食品医薬品局(FDA)政策部門副長官ミカエル・テイラーによる新たな報告書 『ナノ技術製品の規制:FDAは必要なツールを持っているのか?』 は、食品、薬品、医療品、サプリメント(栄養補助食品)、及び化粧品などのナノ技術物質を含む新たな製品を適切に管理するための能力をFDAは持っているのかどうかについて検証している。テイラーの報告書は、2006年10月10日に開催が予定されているFDAの初めての大きな公聴会に先立って発表された。

 新規ナノ技術プロジェクトが委託したこの報告書は、FDAのリソースが深刻に失われていることを指摘している。”規制の責任の範囲を拡大することの圧力及び業務遂行のための増大するコストが、米議会と歴代の政権がFDAの基本的業務にすら十分予算をつけていないことも加わって、ナノ技術を効果的に監督するFDAの能力に対する真の脅威となっている”とテイラーは述べている。

 しかし、テイラーによれば、FDAのナノ対応の欠如は金額だけの問題ではない。”ナノ技術の潜在的なリスクを理解し管理するための能力を妨げているFDAの法的権限の中に重要なギャップがある。このことは特に化粧品とサプリメントの分野において、及びそれらの製品が市場に出された後の監視おいて、真実である。”

 ”アメリカには300以上の製造者が特定されたナノ技術消費者製品が存在する。FDAは、ナノ技術製品の第一波についての情報を収集し、ナノスケール物質が法的、規制的、及び安全のための目的のために、いつ、”新規”となるのかを決定するための基準を策定するための措置を速やかにとるべきである。早急に取り組むことにより、FDAは、対応に遅れず、むしろ規制と安全の問題を防ぐためのよい立場に位置することができる”とテーラーは主張している。

 ”ナノ技術は、FDAが規制するどのような製品カテゴリーにも実質的に適用される技術として急速に出現している”と新規ナノ技術プロジェクトのディレクター、デービッド・リジェスキーは述べている。”しかし、消費者と患者の便益に対するとてつもなく大きなな可能性は、その安全性が理解され合理的に確保されて初めて実現されるであろう。消費者は何が安全で何が安全ではないか判断するためにFDAに頼っている。もしFDAが今、ナノ技術の潜在的なリスクに目を向けなければ、多くのナノ技術に基づく製品に対する公衆の信頼は損なわれるであろう。”

 報告書の中でテイラーは、新たな技術に対する議会とFDAの歴史と、FDAは新規の製品が市場に投入される前にその安全性を確保し、市場に出てからは問題を見つけ速やかに是正することができるようにとする公衆の長期的期待を検証している。”FDAはナノ技術に関して果たすべき主導的役割を持っているが、そのためにはFDAに法的ツールとリソースを与えるよう議会を通じて働きかけるのは社会の責任である”とテイラーは述べている。

 テイラーは彼の報告書が、FDAが必要とするツールと、FDAがナノ技術のリスクを管理することとともにその潜在的な便益をもたらすことに世界的に主導的役割を果たすアプローチについての積極的で必要な議論を引き起こすことを期待している。

 ”潜在的なリスクに目を向けることに加えて、FDAはまた等しく、ナノ技術によって可能となる有益な新たな医療製品の時宜を得た導入を推進するという重要な公衆健康への責任を持っている”とテーラーは述べている。”産業界と健康行政の指導者らは等しく、FDAが、’その通り’、それは安全で有効な新規製品であると言うために必要な十分なツールと知識を持つことを確実にすることに関与すべきである”とテイラーは述べた。

著者について
(省略)

ナノ技術について
 ナノ技術は、原子及び分子のスケールで、通常、1〜100ナノメートルの範囲でものを測定し、観察し、操作し、製造するための能力である。ナノメートルは10億分の1メートルであり、人の髪の毛の幅は約100,000 ナノメートルである。
 ナノ技術の市場規模は莫大である。新規ナノ技術は2005年には300億ドル(約3兆3,000億円)以上の製品に導入されており、それは前年の倍以上である。2014年には、ラックス・リサーチは世界で2.6兆ドル(約290兆円)の製品、又は総生産高の15%にナノ技術が導入されるであろうと予測している。ナノ技術研究開発へのアメリカの投資は年間30億ドル(約3,300億円)であり、それは世界の公共及び民間分野の総投資額の約3分の1になる。


訳注(参考資料)


化学物質問題市民研究会
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