SAFENANO 2009年8月24日
米環境保護庁
カーボン・ナノチューブの
最終重要新規利用規則を撤回


情報源:SAFENANO 24/08/2009
EPA withdraws final SNURs for carbon nanotubes
http://www.safenano.org/SingleNews.aspx?NewsID=813

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年8月25日


 先週、発表された連邦官報で、米環境保護庁(EPA)は、単層及び多層カーボン・ナノチューブ(CNTs)に対する最終重要新規利用規則(Significant New Use Rule / SNUR)の撤回を告知した。

 化学物質のための有害物質規正法(TSCA)第5条(a)(2)の下に、今年の6月にEPAによって公布されたこれらの重要新規利用規則(SNURs)は、(他の21物質をとともに)CNTsを製造し、輸入し、又は加工しようとする者に対して、重要新規利用として要求される行為として、少なくとも着手90日前に製造前届出(Premanufacture Notice / PMN)を通じて、EPAに届け出ることを求める要求を導入した(訳注1)。

 要求される届出は、EPAに意図する用途を評価し、もし適切なら、提案された用途を事前に規制する機会を提供するためのものであった。本日がコメントの期限であったこれらの SNURsは、新興のナノテクノロジーの規制監視を達成する方向へのひとつのステップであると、多くの人々に見られていた。

 しかし、EPAは、長々しい届出とコメントの手続きを回避することを許す手続きである直接最終規則策定手続き(direct final rulemaking procedures)を利用した SNURs を出した。そのような最終規則は、誰かが反対又は批判的コメントを提出する意図があることの届出を30日以内に提出しなければ、直ちに適用される。先週EPAは、少なくとも、ひとつの反対コメント出すであろうという届出を受けたので、EPAは規則策定プロセスで求められるように、これらの二つの SNURs を撤回した。連邦官報では、EPAは、分離した届出とコメント規則策定手続きの下に、単層及び多層カーボンナノチューブのための提案 SNURs を連邦官報で発表するつもりであると述べた。

 EPAにより補足事項として発表された事前届出申請は、ワシントンDCのWilmerHale社の弁護士 James Votaw によって提出された。 E&E News ニュースの Sara Goodman の記事によれば、この届出は、規則が煩雑で、不明瞭で、どの単層、多層カーボン・ナノチューブに適用されるのか特定していないという懸念から提出された。実際、SNURs 自身はそれぞれのナの物質の一般的名称だけに言及しているが、エンバイロンメンタル・ディフェンス基金(EDF)の上席科学者リチャード・デニソンの最近のブログ(訳注2)によれば、これはTSCAの下では標準的なやり方であるとして、次のように述べている。

 ”ナノチューブの具体的な特定は、製造前届出(PMN)の元々の提出者によって企業秘密情報(CBI)であると主張されているので(訳注3)、EPAはそれらを公開することを禁じられており、したがって一般的名称を使用しなくてはならなかった”。

 元EPA高官であり、新興ナノテクノロジー・プロジェクト(PEN)の上席顧問である J. クラレンス・デービスは、この混乱はナノテクノロジーのような新興テクノロジーを取り扱うときに、有害物質規正法(TSCA)の限界をハイライトしていると述べている。デービスは限界を回避するひとつの方法は、”もしEPAがカーボン・ナノチューブに一般的に適用する規則を発布し、製造者は新たなテストをしなければならないか、又は彼らの物質がすでにテストされた他の物質と十分 に近いということを立証しなくてはならない”ことであると示唆している。

 リチャード・デニソンもまた。、次に示す規制の改正が求められると示唆している。

  • 新規であろうと既存であろうと、化学物質(ナノ物質を含む)の全ての製造者に対し、EPAに自身を特定し(正体を明らかにし)、基本的安全情報を提供することを求めること。
  • 化学物質の会社の製造又は用途に重要な変更がある場合には、EPAへの届出と安全審査の更新の両方を自動的に行うよう求めること。
  • EPAが化学的構造だけに基づくより以上にナノ物質を区別することができるようにするために、物質の化学的特性とともに物理的特性を含めるために、具体的な化学的特定の定義を拡大すること。
  • 会社が化学的特定を化学的安全性に関するどのような情報についても秘密であると主張できることを制限すること。

 EPAはまだ、どのように進めるのかに関するさらなる情報をまだ提供していない。

 出典e: Compiled with materials from the EPA, Meridian News and EDF blogs.


訳注1
Nanotechnology Law Report 2009年6月26日 EPA 多層及び単層カーボンナノチューブに 重要新規利用規則を適用 ジョーン C. モニカ ジュニア

訳注2
The nanotube SNURs: Nano step forward, nano step back/ August 21, 2009 | Posted by Richard Denison

訳注3
エンバイロンメンタル・ディフェンス リチャード・デニソン 2009年7月14日 TSCAにおけるナノ物質の正体隠し


化学物質問題市民研究会
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