LAWR 2012年10月3日
ナノ廃棄物:
ナノマテリアル周辺の曖昧さを改善する


情報源:3 October 2012, source Local Authority Waste & Recycling (LAWR)
Fixing the fuzz around nanomaterials
Dr Steve Hankin, senior consultant in risk assessment and section head at SAFENANO
http://www.edie.net/library/view_article.asp?id=6221&
title=Fixing+the+fuzz+around+nanomaterials&source=2


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

掲載日:2012年10月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/121003_LAWR_fixing_fuzz_around_nano.html


 廃棄物の流れの中でナノマテリアルにより及ぼされる潜在的なリスクについてはほとんど分かっていない。スティーブ・ハンキン博士()は廃棄物という観点からこれが及ぼす課題を見ている。

 ナノテクノロジーは、新たな便益をもたらすとして急速に発展している産業を促進する技術であるが、産業規模の生産に様々な課題を突きつけている。広範な産業分野への拡散、例えば、先端的素材、化粧品、身の回り手入れ品などは、ナノマテリアル残留物を含む新たな廃棄物の流れをもたらしている。廃棄物管理産業にとっての課題は、これらの廃棄物の流れの処理をどのように最良に実施するかということである。

 科学者らはナノマテリアルの環境的運命と及ぼす影響を研究しているが、それらはほとんどが実験室での新品のマテリアルを使用するものであり、経年変化した又は廃棄物の流れの条件下のものではない。現在までのところ、ナノマテリアルの長期的挙動とそれらの環境中での分布に関して明確な結論はほとんど出ていない。

 同じく重要なことは、それらが及ぼすかもしれない潜在的なリスクについての情報がほとんどないということである。ンデケ・ミュゼ(Ndeke Musee)のナノ廃棄物と環境:潜在的な新たな廃棄物管理パラダイム(Nanowastes and the environment: potential new waste management paradigm)は、ナノマテリアルのナノ廃棄物からの管理されない環境への放出について、及び、産業と政府が解決しない場合の潜在的な影響について、深刻な懸念を提起している。

 彼は多くの現実的な提案をしているが、その中で、実際の廃棄物の流れにおけるナノマテリアルの系統的なリスク評価の枠組みの必要性の提案が最も傑出している。ミュゼはまた、よく定義されえたナノ廃棄物分類プロトコール;産業界主導の立法イニシアティブ;そしてナノ廃棄物を取扱い処理するための適切な技術−を要求している。

 ヨーロッパでは、なんらかの動きがある。欧州議会の2009年4月24日の決議(訳注1)は、ナノマテリアルを適切に管理するために、欧州委員会が廃棄物法令のレビューの必要性、排出制限値、及び大気と水の法的環境基準を評価するよう、明示的に要求した。

 欧州委員会はこれに応えて、ブリュッセルを拠点とする環境法と政策のコンサルタントであるミリュー(Milieu)とロンドンを拠点とする AMEC 環境基盤(AMEC Environment & Infrastructure)が共同で実施したナノマテリアルの規制的管理のための環境法のレビュー(Review of Environmental Legislation for the Regulatory Control of Nanomaterials)が2011年9月に発表された。

 それは、廃棄物枠組み指令(Waste Framework Directive)(訳注2)の下にナノマテリアルをカバーするときの主要な課題は、CLP規則(分類表示包装規則)の下での危険物として特定のナノマテリアルを分類に関わる不確実性であると結論付けた。

 Milieu/AMECはまた、たとえ、ナノマテリアルがCLP規則の下で危険物として特定されていたとしても、自治体廃棄物の流れの中でナノマテリアルを含む消費者製品の処分に注意を喚起した。この場合には、上流の製品管理が有害特性を示すことがわかった特定のナノマテリアルの放出を管理するためのひとつの道筋を提案することができるであろう。

 報告書のもうひとつの発見は、科学者らは廃棄物中のナノマテリアルの環境曝露経路への注目が水中でのそれらに比べて少ないということである。このことは観察者等が範囲を評価し、具体的な知識のギャップを特定するのを難しくする。発見が示唆しているように見えることは、この問題に関するEU規制当局と衛生当局の両方が、本質的に定量化できないリスクを管理するために取り組んでいるということである。

 EUレベルでは、規制当局は水枠組み指令(Water Framework Directive)の下に、ナノマテリアルが優先物質としての適格かどうかを評価するために必要な生態毒性学データを持っていない。同時に、廃棄物管理者はリサイクル・プロセスにおけるナノマテリアルの挙動についてほとんど知識を持っていない。一方、CLP規則の下でナノ物質を届け出る製造者等は、特定のナノマテリアルの固有の特性に関するデータを持っていない。

 廃棄物の流れのもう一方の廃水処理プラント操業者は、処理技術がナノマテリアル除去にどのように効率率的に働いているのか決定することができない。ナノテクノロジー研究のコミュニティが新たなマテリアルを開発し、安全性について見ているのだから、おそらく、ナノマテリアルを含む廃棄物が著しい環境的リスクを持つのかどうか、そのコミュニティにより解決される必要がある。

 しかし、廃棄物問題の重要さは認識されている。例えば、英国規格協会(BSI)は工業ようナノ物質(nano-objects)を含む製造プロセス廃棄物の処理ガイド(PAS 138:2012)を発表しているが、それは非束縛状態(unbound)のナノマテリアルを含む製造プロセス廃棄物の安全な処理に関する指針を与えるものである。

 この文書は、適切な処理経路;廃棄物を廃棄物処理業者に運ぶための準備;廃棄物処理に関わる人々に提供されるべき情報などを含む。それはまた、その韓国を適用するときに利用者を助けるための意思決定ツリーを含んでいる。


 ナノテクノロジーに基づく製品の開発を支援する研究プロジェクトにおいてライフサイクルに考慮することへの注目が増大すると共に、リサイクル、生物分解、環境蓄積の可能性、及びそれらの結果としての影響とそれらの緩和のようなナノマテリアル廃棄物問題についての知識が必ずや増大するであろう。

 廃棄物におけるナノマテリアルの環境的影響についての我々の理解はまだ途上にあるが、環境への潜在的な放出を廃絶する又は低減する処理経路を取り入れることは賢明なことである。

(*)スティーブ・ハンキン博士は、SAFENANO におけるリスク評価の上席顧問であり、部門長である。


訳注1
訳注2
諸外国の資源循環政策に関する基礎調査(経済産業省)

訳注3


化学物質問題市民研究会
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