NY州立大学バッファロー校 2011年7月18日 ニュースリリース
セレン化カドミウム量子ドット
土壌中で分解し毒性を放出する


情報源:University at Buffalo News Release July 18, 2011
Cadmium Selenide Quantum Dots Degrade in Soil, Releasing Their Toxic Guts, Study Finds http://www.buffalo.edu/news/12731

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年7月28日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/news/110718_UB_Cadmium_Selenide_Quantum_Dots.html

【バッファロー、ニューヨーク州】−カドミウム及びセレンからなる量子ドット(訳注1)は土壌中で分解し、有毒なカドミウム及びセレンのイオンを周囲に解き放つことをニューヨーク州立大学バッファロー校(UB)の研究が明らかにした。

 ジャーナルES&T(Environmental Science and Technology)での発表が許可されたこの研究は、量子ドット及びその他のナノ物質が廃棄処分された後に、環境とどのように相互作用するかについて、もっと多くを学ぶことの重要性を示したと−この研究を指導した化学教授ダイアナ・アガは述べた。

 量子ドットは、約 2〜100 ナノメートルの径を持つ半導体ナノ結晶である。量子ドットはまだ消費者製品中では一般的に使用されていないが、科学者らは太陽光パネルから生物医学的画像に至るまで広い範囲の技術においてこの粒子の適用を探求している。

 ”量子ドットはまだ広く使用されていないが、それらは多くの可能性を持っており、このナノ物質の用途が増大することを予想できる”と、6月下旬に国家科学財団の資金援助を受けた環境中のナノ物質に関するワークショップで発表したアガ教授は述べた。”我々はまたそれらの環境中での発生もまた増大するであろうと予想することができ、我々はこれらの物質が環境中に入り込んだときに問題を引き起こすかどうかもっと先を見越して学ぶ必要がある”。

 ”量子ドットは生物分解するので、我々はこの研究から何らかの有害影響の可能性があると結論付けることができる。しかし、将来、分解を防ぐためにこのナノ物質の表面を変えてその化学的特性を修正することができる可能性がある”と彼女は述べた。

 アガの使用後量子ドットの研究は、量子ドットと酸化ナノ粒子の環境的移動、生物学的分解、及び生物的蓄積を調査するために環境保護庁(EPA)から400,000ドルの資金提供を受けたものである。

 ES&T に発表されるこの新たな研究に関する協力者は、博士課程 Divina Navarro、助教 Sarbajit Banerjee、及び准教授 David Watsonであり、全てUBの化学部門所属である。

 実験室での研究で、同チームは2種類の量子ドットをテストした。セレン化カドミウム量子ドットと、硫化亜鉛のシェル(殻)で保護されたセレン化カドミウム量子ドットである。科学的文献中で、シェルで被覆された量子ドットは、より安定であることが知られているが、アガのチームは両方の量子ドットともに、15日以内に有毒成分が土壌中に漏れ出すことを明らかにした。

 廃棄された量子ドットが地下水に漏れ出す可能性を調べるために設計された関連する他の実験で、科学者等はそれぞれのタイプの量子ドットのサンプルを細長い土壌のカラム(柱)の頂部に置き、次に雨を模擬した塩化カルシウム溶液を加えた。

 彼等が観察したこと:二つのカラムのそれぞれで検出されたほとんど全てのカドミウムとセレン−被覆されていない量子ドットを保持するカラムの中では90%以上が、被覆された量子ドットを保持するカラム中では70%以上が、土壌の上部1.5センチの部分にとどまっていた。

 しかし、ナノ物質がどのように移動するかは、土壌中に存在する他のものに依存した。研究チームが塩化カルシウムの代わりにエチレンジアミン四酢酸(EDTA)をテストカラムに加えると、量子ドットはもっと速く土壌中を移動した。EDTAはキレート化剤(訳注2)であり、しばしば石けんや洗浄剤中で見出されるクエン酸に似ている。

 データは、通常の状態で土壌上部に残っている量子ドットは、EDTAのようなキレート化剤が意図的に導入されなければ、あるいは植物浸出液のような自然に生ずる有機酸が存在しなければ、地下水まで達することはありそうにないことを示唆している。

 アガは、たとえ量子ドットが土壌の上部に残っていて、地下水の帯水層を汚染しなくても、粒子の分解が依然として環境に対しリスクを及ぼすと述べた。

 異なるジャーナルでの発表のために提出された別の研究で、彼女らは硫化亜鉛シェルで被覆された量子ドットに対するシロイヌナズナ植物(Arabidopsis)の反応をテストした。同チームは、この植物はナノ結晶体(訳注:量子ドットのこと)を根系に吸収しなかったが、この不純物(異物)に接触すると典型的な植物有毒反応(phytotoxic reaction )を示した。言い換えればこの植物は量子ドットを毒物として扱った。


訳注1:量子ドット関連資料

訳注2:EDTA関連資料


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る