ETCグループ ニュース・リリース 2006年4月7日
ナノ製品のリコールは
ナノ技術のモラトリアムの必要性を裏付ける


情報源:News Release ETC Group April 7, 2006
Nanotech Product Recall Underscores Need for Nanotech Moratorium:
Is the Magic Gone?
http://www.etcgroup.org/documents/NRnanoRecallfinal.pdf
http://www.etcgroup.org

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年2月13日


 ETCグループは本日、ナノ技術の実験室での研究の全世界でのモラトリアムと、人工ナノ粒子を含有する消費者製品のリコールを求めて、2003年の要求を新たにする。特に摂取される、体に適用される、又は環境に放出される製品は緊急を要する。ナノ技術製品であると称する”マジック・ナノ”というナノテク浴室洗浄剤をリコーすることにしたドイツ当局の決定を見れば、その行動の必要性は明らかである。少なくとも77人の人々がこの製品を使用した後に3月下旬に呼吸器系に障害が出たと報告されている。6人が入院したが、呼吸器系の障害は緩和されたので退院した[1]。”マジック・ナノ”を販売したした会社はクレイマン社(Kleinmann GmbH)であり、イリノイ・ツール・ワークス社(アメリカのフォーチュン200企業で45か国に650の子会社と49,000人の従業員を持つ)のドイツにある子会社である。クレイマン社は”マジック・ナノ”をスプレーポンプ付きエアゾール・スプレーとして販売した。リコールはスプレーだけに適用された[2]。使用したとされるナノ化学物質の成分に関する情報も、問題がナノ粒子に関係があるのかどうか、または粒子と通常のスプレー用高圧ガスとの相互作用なのかについての情報もない。

 ナノ技術産業は直ぐに反応して、リコールされた製品はナノ粒子を含んでいないかもしれない;会社は単にハイテクらしく見せるために”ナノ”を営業用に標榜しただけかもしれない−と指摘した。ニューヨークのラックス・リサーチのアナリスト、ミカエル・ホルマンはワシントンポスト紙にナノテク産業は製品の安全を確保するために政府規制当局と密接に連絡をとっていると述べた。

 ”彼らは密接に協力して働いているかも知れないが、彼らは公衆の安全に対し迅速に働いているわけではない”−とカナダを拠点としナノ技術を監視している民間組織ETCグループの代表パット・ムーニーは述べている。”我々は実際、ナノ技術がナノテク製品のリコールの原因であったのかどうか知らない。重要な点は、もし同じ化学物質がマクロスケールですでに精査されているなら、どこの国の政府もナノスケール物質を規制していないということである。表示要求もなく、合意されたナノ技術の定義、又はナノ粒子を測定する手法もないので、健康と安全について決定することは非常に複雑である”−とムーニーは述べている。

 ナノ技術は一般的に、そのサイズが100ナノメートル(nm)以下(人間の髪の毛の径の約 1/ 80,000 )で、その量子力学的効果(ナノスケールで生じる特性の変化)を利用する。一般的に70nmのナノ粒子は肺を通過し、50nmのナノ粒子は細胞に入り込み、30nmのナノ粒子は血液脳関門を通過することができる。そのように小さい粒子は体の免疫システムが検出できないだけでなく、それらはマクロスケールの時には見られない新たな特性を示す。例えば、不活性であるために歯科で使用される酸化アルミニウムは、ナノスケールでは自然に爆発し、潜在的なロケット燃料用としてテストされている。

 ”それは予測できない特性の変化であり、’ナノ’を全く新たな異なるものにする。これらの変化に対応する規制が存在しないので、我々はこのような製品の市場への導入の一時停止(モラトリアム)を2003年以来要求してきた”−とETCグループのノースカロライナ事務所のホープ・シャンドは述べた。”規制の目を逃れたナノ製品がすでにある。しわ止めクリーム、日焼け止め、チョコレート・ダイエット・セーキ、歯磨き粉、農薬、食用油、ビタミン・サプリメント、その他、たくさんある[3]。2004年6月、英国王立協会・王立技術アカデミーは、ナノ粒子形状の成分は製品中での使用が許可される前に関連する科学諮問委員会によって十分に安全評価を受けるよう勧告している[4]。”

 ETCのモラトリアム要求はナノ技術の実験室研究を含む。”合意された安全基準や規制監視なしに作業者にナノ粒子の研究や取り扱いをさせるのは非倫理的である”−とシャンドは述べている。

 今日まで、科学界も政府もいまだにこの研究のための”最善の実施(best practices)”を確立していない。科学者らと規制担当者らは早急に安全基準及び、監視と新たな情報を入手した場合の基準の更新のメカニズムを確立しなくてはならない。

 ETCグループのモラトリアム要求に関する更なる情報については下記を参照のこと:
Size Matters II! The Case for a Global Moratorium / ETC Group April 14, 2003
http://www.etcgroup.org/article.asp?newsid=392

訳注:
ETCグループ 論文 2003年4月 小さなことではないU:全世界でモラトリアム サイズが問題だ!(当研究会訳)

問い合わせは下記にどうぞ

Pat Mooney, ETC Group
etc@etcgroup.org +1 613 241-2267

Jim Thomas, ETC Group
jim@etcgroup.org +1 613 241-2267

Hope Shand or Kathy Jo Wetter, ETC Group
hope@etcgroup.org +1 919 960-5223
kjo@etcgroup.org +1 919 960-5223

Silvia Ribeiro
silvia@etcgroup.org + 52 5555 6326 64


参照
[1] Rick Weiss, "Nanotech Product Recalled in Germany," Washington Post, April 5, 2006.
  訳注:WP 2006年4月6日記事紹介/ドイツでナノ製品がリコール
[2] http://www.kleinmann.net/html/index.php?name=News&file=article&sid=115
[3] See the Nanotechnology Consumer Products Inventory compiled by the Woodrow Wilson International Center for Scholars: http://www.nanotechproject.org/index.php?id=44
  訳注:WP 2006年3月10日記事紹介/今、ナノテクは消費者製品に全力を注ぐ:ウィルソン・センターのナノ技術消費者製品目録
[4] Royal Society and Royal Academy, Nanoscience and nanotechnologies: opportunities and uncertainties, July 2004, p. 85. On the Internet: http://www.nanotec.org.uk/finalReport.htm
  訳注:ナノ科学、ナノ技術:機会と不確実性−要約と勧告/英国王立協会・王立技術アカデミー報告 2004年7月29日



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