EPA 農薬 2011年6月9日/7月更新
ナノテクノロジーを使用する農薬の規制

情報源:EPA Pesticides, Current as of July 2011
Regulating Pesticides that Use Nanotechnology
http://www.epa.gov/pesticides/regulating/nanotechnology.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年12月15日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/epa/epa_110609_Regulating_Nano_Pesticides.html


農薬中のナノテクノロジーに関する背景

 米・連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)とEPAの規制実施は、ナノスケール物質を含む農薬製品を規制する効果的な枠組みを提供している。現在、農薬プログラム室(OPP)は、少なくとも1次元が概略1〜100ナノメートルの間にある意図的に製造された要素部分からなるナノスケール物質を農薬の活性又は不活性成分としてみなしている。

 ナノスケール物質に潜在的に大きな便益をもたらす特別の特性はまた、リスク評価と政策決定に新たな難題を提起している。例えば、その微小なサイズのために、細胞膜又は血管脳関門を通過し、意図しない有害影響をもたらす可能性がある。

農薬中のナノテクノロジーのための新たな政策

 ナノスケール物質は、サイズがもっと大きい物質とは異なるリスクを引き起こす可能性があるので、EPAは、農薬製品中にどのようなナノスケール物質が存在するのかに関する情報を得ようとしている。我々は、農薬製品中に含まれるナノスケール物質に関する情報を収集するために提案した我々の計画の通知を入手できるようにしている。間もなく連邦政府官報で発表されるこの通知は、農薬製品の組成に関するある追加的な情報を入手するためのいくつかの可能性あるアプローチを述べている。

 その通知は3つの要素を含んでおり、そのうち2つは農薬製品中のナノスケール物質に関する情報収集のための代替アプローチを述べ、他の1つは新たな活性成分に関連する問題に目を向けている。
  • すでに登録されている農薬製品中にどのようなナノスケール物質が存在するのか、及び、それが人又は環境に及ぼす潜在的な影響に関する既存の情報を得るために、 FIFRA 6(a)(2) (訳注1) を用いること。
  • FIFRA 3(c)(2)(B) (訳注2) の下に、データ要求通告(data call-in notices)を用いて農薬製品中のナノスケール物質に関する情報を得ること。
  • その通知はまた、たとえ、ナノスケール成分と同等の非ナノスケール形状の成分がすでに登録されていても、FIFRA 及び農薬登録改善法(PRIA)(訳注3)の目的に照らして、ナノスケールの活性又は不活性成分が”新たな”活性又は不活性成分かどうかを、我々はどのようにして1件毎に決定するのかについての新しいアプローチを提案する。
 FIFRA 6(a)(2)のアプローチを使って、EPAは 登録者が彼等の製品に関連する情報をEPAに報告することについて FIFRA による要求に依拠する。特に、農薬の登録後、農薬の環境への不合理な有害影響に関する追加的な事実に基づく情報を得たなら、登録者はそのような情報をEPAに提供しなくてはならない。もし、我々がこの提案を採用するなら、既存の規制もまた、ナノ物質を含む農薬製品のどのような登録申請にもそのような情報を含めることを要求することになるであろう。

 FIFRA 3(c)(2)(B)のデータ要求通告(data call-in notices)を使って、我々はデータ要求通告(DCI)を登録者に送り、登録者に追加的データ又は他の情報−それらは登録者が生成する又は編集する必要があるかもしれない−を求めるかもしれない。もし、我々がこの提案を採用するなら、我々はまた、ナノ物質を含む農薬製品のどのような登録申請にもそのような情報を含めることを要求することになるであろう。我々は、このことが既存の規制の下に実施できるのか、又は我々はその情報がどのような登録申請にも求められるということを明確にするために既存の規制を修正するかどうか、検討中である。

次のステップ

 官報通知が発表されたなら、その官報へのコメントは官報発表後30日間受け付けられるであろう。本件に関する官報通知は、Regs.gov ドケット番号EPA-HQ-OPP-2010-0197 で入手可能である。

 パブリックコメントを検討後、この情報の収集と成分の決定のための我々のアプローチを通知する官報を発行する計画である。

 提案されている政策についてのこの通知を読むためには、Federal Register Notice を見ていただきたい。(訳注0:2011年6月17日発表の官報)

どのようにナノ物質を含むかもしれない製品の登録の仕方

 多くの潜在的な応用の中で、ナノテクノロジーは表面の微生物のような有害生物を防除する製品を開発するために用いることができる。EPAは、連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)の権限の下に、有害生物を防除するための製品を規制している。EPAは、米国内で流通又は販売されるすべての農薬のために厳格な評価と登録(すなわち許可の授与)を適正に実施している。

 農薬製品の製造者は、農薬の使用が一般的に不合理な有害影響を人の健康と環境に及ぼさないことを確実にすることをEPAがレビューするために、科学的及び技術的データを提出しなくてはならない。

 EPAは、会社はEPAの農薬登録担当官に連絡し、ナノテクノロジーの製品であるような又はナノスケール物質を含むであろうどのような農薬の開発にあたり、できるだけ早い時期に申請前会議を開催することを強く勧告する。申請前会議の間に、会社はEPAに次のような情報を提供すべきである。
  • どのようにしてその農薬は作られるのか。
  • どのように使用することが提案されるのか。
  • どのように人と環境はその農薬に曝露することになるのか。
 EPAは、物質やそれが作られる方法に関わりなく、どのような農薬の評価にもこれらの基本的な問いに目を向ける。しかし、ナノスケール物質は特別の特性を持つかも知れないので、EPAのデータ要求は、検討される製品の具体的な特性に合わせる必要があるかもしれない。

ナノテクノロジー殺虫剤での適用

 農薬製品及び農薬処理された製品中でのナノスケール物質の使用は、有害生物の有効な標的化、農薬の使用量の低減化、及び表面消毒の散布頻度の最小化を可能にするかもかもしれない。これらのことは人と環境の安全を改善することに寄与し、有害生物防除コストを低減することができる。例えば、保存剤としてナノ銀は、微生物が引き起こす悪臭をもっと長い間低減し、例えばゼオライト構造又は銀塩の即時溶解からの銀イオンの急速放出とは反対に、ナノ銀からの銀イオンの見込み通りの緩やかで抑制された放出のために、他の(ナノではない)銀保存剤は少ない量で済む。

 多くの組織が、ナノスケール物質の微小なサイズ又はナノスケール物質の強化された特性は特定の条件の下では、新たな増大したハザードを人と環境に引き起こす稼動か検討している。複数の国の政府、学界、及び民間分野の科学者らは、多様なナノスケール物質の人の健康への影響調査を実施しており、その結果、かなりの量の科学的証拠が急速に増大している。最近、政府と専門家のピアレビュー組織はこの証拠をレビューし、概要をまとめ、環境、人の健康及び安全にとってのこの証拠の意味合いについての見解を提供した。

更なる情報
 EPAのナノテクノロジーへの取り組みと連邦政府のナノテクノロジー研究についての更なる情報:

訳注:関連情報
訳注0:2011年6月17日発表の官報

  • http://www.regulations.gov/#!documentDetail;D=EPA-HQ-OPP-2010-0197-0001
    Federal Register Volume 76, Number 117 (Friday, June 17, 2011)
    Pesticides: Policies Concerning Products Containing Nanoscale Materials
    Document ID: EPA-HQ-OPP-2010-0197-0001Document Type: Proposed Rule
    Docket ID: EPA-HQ-OPP-2010-0197RIN:
    Topics: Administrative Practices and Procedures, Environmental Protection, Pesticides and Pests

    この官報では、ナノスケール物質を次のように記述している。

    Instead, OPP will focus on more objective criteria in describing when information about a ``nanoscale material'' in a pesticide product may be relevant to determining whether the product has an unreasonable adverse environmental effect. Specifically, such information may be relevant in this context when the active or inert ingredient and any component parts thereof is intentionally produced to have at least one dimension that measures between approximately 1 and 100 nanometers, regardless of the aggregation or agglomeration state of the final material.

    訳注1:FIFRA 6(a)(2)
    訳注2:FIFRA 6(a)(2)
    訳注3:


  • 化学物質問題市民研究会
    トップページに戻る