ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)
2011年4月12日
消費者製品中のナノ銀の安全性:
多くの疑問が未解明のままである


情報源:Federal Institute for Risk Assessment 12.04.2011
Safety of nano silver in consumer products: many questions remain open

http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2011/10/
safety_of_nano_silver_in_consumer_products__many_questions_remain_open-70234.html


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年5月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/bfr/110412_bfr_safety_of_nanosilver.html


 ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、ナノ銀の健康リスクに関するデータ状況は不完全であることを確認する。

 ナノ銀の毒性に関する意見の中でドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、健康リスクの最終評価できるデータが揃うまで、食品及び日用品中でのナノ銀の使用を控えるよう勧告していた(訳注1)。主に産業側は、消費者製品と食品中のナノ銀の健康リスクの評価のために十分なデータが利用可能であるとして、BfRによるこの評価に反対した。このような状況なので、BfR は、包括的な消費者保護のための既存のリスクと可能性ある選択肢を議論するために、協会や産業の代表、研究及び科学の分野の専門家をワークショップに招聘した。
 ”討議において、BfRの警告の言葉が確認された”とBfRの所長のアンドレアス・ヘンゼル博士は述べた。"ナノサイズ銀粒子の具体的な影響について、しっかりした科学的発見が入手できないという事実が続いているからである”。

 例えば、化粧品やその他の消費者製品中で、金属銀や銀化合物が、主に抗菌効果のために、使用されている。布製品では、医療/治療用途だけでなく、衛生の分野でもある役割を果たしている。線維の抗菌仕上げは、汗と微生物腐敗の結果としての臭いの形成への対処に主に使われる。ナノサイズの銀粒子の使用は増大している。ナノ粒子は径が100ナノメートル以下の粒子である。

 BfRの意見、No. 24/2010でBfRは、ナノサイズの銀粒子(ナノ銀)について、現在までまだ述べられていない追加的な有毒影響を持った毒性学的影響の側面があるかもしれないと指摘した。多くのナノ物質について、ナノ粒子形状の特別な物理化学的特性のために、異なる毒性学的影響を有する可能性があることが知られている。
 BfRワークショップは、ナノスケール銀は現在までのところ、ナノ特有の側面を考慮しつつ検証されたものとして、わずかな毒性学的データしか利用可能ではないことを示した。さらに、使用される粒子及び用量についての特性化は長年にわたり不十分である。その理由は、とりわけ、対応する分析手法が利用可能ではないからである。
 現在ではしばしばナノ物質であるとみなされるコロイド状の銀に関する多くの古い研究は、現代的な毒性学の基準に合致しない。もっと最近の研究で、銀については現在まで知られていなかった影響を明確に示すものはある。これは、経口及び吸引投与後に生じる肝臓中の組織、及び吸入曝露後の肺の中の組織の病理学的変化、特定の器官の病理学的パラメーターの変化などを含む。

 市場に出す前に又は市場に出し続ける前に、健康評価のために提出しなくてはならないある製品の成分の毒性データの種類と範囲に関する要求を定義する法的規制は、わずかしかない。銀ベースの殺生物剤製品は、認可手続きの枠組みの中で、将来、検証されるであろう。対応する健康評価で、申請者は対応する毒性データを提出しなくてはならない。しかし、布製品のような消費者製品については、届出や認可のの義務はない。
 産業側は当局に評価のための毒性学的データの提供を義務付けられていないので、これらのデータが欠如し、ナノ銀を含む製品の健康リスクは評価できないか、あるいは非常に困難である。一般に、布及び製品からのナノ銀粒子の放出に関する情報はほとんど入手することができない。さらに、特定の用途における銀又は抗菌剤に対する耐性の脅威への可能性ある影響に関するデータは不十分である。
 体内への取り込みは同様にまだ十分に明確にされていない。吸入後の気道(肺、気管支)を通じての取り込みと吸収された粒子の体内での分布(毒物動態)についての詳細はほとんど知られていない。さらに、皮膚への影響(感作能力、刺激影響)のみならず、生殖毒性、慢性毒性、発がん性に関するデータが欠如している。

 日用品及び消費者製品は、適切な使用中又は予見できる誤使用において、法的規制に基づくどのような健康リスクにもならないかもしれない。最終的な人と環境の安全性評価は、現在までのところ銀のナノスケール形状についてのデータがないために利用可能ではないのだから、BfRは消費者製品中のナノ銀の広範な使用はしないことを勧告し続ける。

ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)について
 ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、連邦食品・農業・消費者製品省(BMELV)管理下の科学研究所である。BfRは連邦政府及び州政府に食品・化学物質・製品の安全性の全ての局面に関して勧告する。BfRその評価業務に密接に関連する課題に関し、自身で研究を実施する。


訳注1
ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)2010年6月10日 プレスリリース ナノ銀は、食品、織物、化粧品にふさわしくない



化学物質問題市民研究会
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