OECD Press Release 2016年2月22日
家庭廃棄物中のナノ物質がもたらす
リスクに緊急の研究が必要


情報源:OECD Press Release 22/2/2016
Urgent research needed into risks from nanomaterials in household waste
http://www.oecd.org/environment/
urgent-research-needed-into-risks-from-nanomaterials-in-household-waste.htm


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2016年2月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/OECD/
OECD_160222_risks_from_nanomaterials_in_household_waste.html

 新たな OECD 報告書によれば、家庭廃棄物に入り込み、最後には環境中に至るかつてなく増大している工業ナノ物質によりもたらされる人の健康と生態系への可能性あるリスクを評価するために緊急の研究が必要である。

 OECD の報告書 『Nanomaterials in Waste Streams: Current Knowledge on Risks and Impacts (廃棄物の流れの中のナノ物質:リスクと影響に関する現状の知識)』 は、工業ナノ物質は1ミリメートルの100万分の1のサイズの粒子をろ過するようには設計されていない埋立地、焼却炉、そして排水処理施設に入り込んでいると述べている。かくしてナノ粒子はリサイクル製品中はもとより、農業用肥料として使用される下水汚泥中にたまり、また下水処理設備からの廃水は河川や湖に流れ込む。

 既存の研究は、より大きな粒子に比べて容易に皮膚や細胞に浸透することができるナノ物質の特徴は、肺における発がん特性、神経系への有害影響、及び生態系を害する殺菌特性を含んで、健康及び環境リスクをもたらすかもしれない。それにもかかわらず、工業ナノ物質を含む廃棄物は、特別の用心又は取り扱いなしに在来の廃棄物と一緒に処理されている。

 ”ナノ物質は日用品を急速に変えて社会に恩恵を与えているが、あるものは我々の健康や環境に及ぼすかもしれないリスクについて多くの答えのない疑問がある”と、OECDの環境ディレクターであるサイモン・アプトンは述べた。”我々の廃棄物処理システムはそれらを処理できるようにすべきかどうか評価できるようにするために、我々はこれらのリスクをもっとよく理解する必要がある”。

 工業ナノ物質は原子に近いサイズによって引き起こされる新たな特性のために価値がある。それらを含む製品の数は、車のタイヤやテニスラケットからスマートホンの電池、脱臭剤や整髪剤まで1,300以上の製品でその機能を向上させるために製造者がそれらを使用したので、2006年から201年の間に5倍に跳ね上がった。

 同報告書は、最新技術による廃棄物処理プラントは廃棄物からナノ物質の多くを集めるが、世界の多くで使用されている効率の悪いプラントでは、大量のナノ物質が焼却炉からの排気ガスとして、道路に撒かれる灰として、処理された廃水として、環境中に放出され、又は土壌や沈潜物中に浸出するらしいことを意味する。

 最大の懸念は、しばしば肥料として農地に撒かれる乾燥させ堆肥化させた廃水汚泥の中のナノ物質の存在である。例えばフランスでは、全国の廃水汚泥の半分は農業用肥料として使用されている。工業ナノ物質の土壌中への移動、植物や細菌との相互作用、及び地表水への移動については詳細に研究されたことがない。

 同報告書は、廃棄物の流れに入り込むナノ物質のタイプと量、処理施設の中で何が起きているのか、そしてナノ物質を含む残留廃棄物の潜在的な影響に関して研究することを求めている。

 同報告書は、カナダ、フランス、ドイツ、及びスイスによりなされた4つの事例研究を利用している。更なる情報又は著者との連絡について、ジャーナリストはOECDメディアオッフィスのキャサリン・ブレーマーに連絡ください(+33 1 45 24 97 00)。

廃棄物に関するOECDの活動の詳細


訳注:参考情報
CIEL-ECOS-O"I Project 2015年1月 ナノテクノロジー規制とOECD


化学物質問題市民研究会
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