NRDC ジェニファー・サスのブログ記事 2008年3月9日
科学者ら化粧品中のナノ物質を警告

情報源:NRDC Jennifer Sass's Blog, March 9, 2008
Scientists warn against nanomaterials in cosmetics
http://switchboard.nrdc.org/blogs/jsass/scientists_warn_against_nanoma.html
Natural Resources Defense Council (NRDC)

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年8月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/NRDC/080309_Sass_nano_cosmetics.html


 欧州連合の科学委員会は、日焼け止めを含んで化粧品中のナノ物質の潜在的なリスクを評価するための現在のアプローチは不適切であると結論付ける報告書 (訳注1)を発表した。リスク評価アプローチの徹底的なレビューの後に同委員会は、”日焼け止めに現在使用されている不溶解性ナノ物質の安全性レビューが必要である”とし、化粧品に用いられている全てのナノ物質について個別のリスク評価を勧告した。重要なことに、同委員会はまた、ナオ物質が皮膚を浸透し体内に残留し、臓器と体組織に蓄積し、健康障害を引き起こす可能性を評価するために、”新たな方法論を早急に開発する”ことを求めた。現在までのところ、ほとんどのテストは健康な無傷の皮膚で行われていたので、同報告書はナノ物質が傷のある、日焼けした、又は疾病のある皮膚を浸透する可能性を検証するテストを特に求めている。

 地球の友による2007年8月の報告書訳注2)は、ナノ物質と日焼け止めに関するもっと多くの情報を報告している。

 多くの日焼け止めは亜鉛またはアルミニウムのナノ物質を含んでいる。通常のサイズでそれらは日焼け止めとして効果があるが、ナノスケールでは日焼け止めにもっと流動性と白ではない透明性を与えて化粧品としての付加価値を高めている。それらの潜在的なリスクはどうか? 私はドロッとした白い日焼け止めで十分である。

 工業ナノ粒子はまた防臭剤、歯磨き、シャンプー、皮膚老化防止クリーム、爪磨き・・・などにも使われているが、表示義務はないので消費者はそのことについてほとんど知らない。さらに”ナノ”という言葉に加えて、製品がナノ粒子を含んでいるかもしれないヒントとして”粉状化”又は微小化”という言葉を探すとよい。もし確かでなければ製造者に電話して聞き、彼らがなんと言うか私に知らせていただきたい。

 EU科学委員会報告書をもっと調べたいならエンバイロンメンタル・ディフェンスの”ナノテクノロジー・ノート”ブログでチェックするとよい。


訳注1
■欧州委員会/消費者製品科学委員会(EC / SCCP)
  化粧品中のナノ物質の安全性に関する意見 エグゼクティブサマリー


訳注2: NGOによる「ナノ日焼け止め」に関する評価

■地球の友(FoE)の報告書
 『ナノテクノロジーと日焼け止め−ナノ日焼け止めを避けるための消費者ガイド 2007年8月』
Nanotechnology & Sunscreens - A Consumer Guide for Avoiding Nano-Sunscreens, August 2007
Friends of the Earth Australia

結論:ナノ粒子を含む日焼け止めを使用しないことを推奨。

 危険な紫外線から守るために日焼け止めをたっぷり塗ることで、新たな危険に身を曝しているかもしれない。日焼け止め製造者は二酸化チタンや酸化亜鉛のような日焼け止め成分を肌に塗った時に白色ではなく透明にするためにナノ粒子を加えている。これらのナノ粒子は適切な表示や信頼ある情報なしに加えられている。混乱をなくすために”地球の友”は120社以上の日焼け止め製造者にナノテクノロジーに関する会社の方針及び製品にナノ粒子を含んでいるかどうかを問い合わせた。わずか9社だけがナノ粒子を含まない製品を売っていると述べ、24社はナノ粒子を含む日焼け止め製品を持っていることがわかり、95社は会社の方針及び成分が不明であるか又は調査へ回答しなかった。このことは表示義務と規制の必要性、及び消費者がどの日焼け止めを使うか注意を払う必要性を強調している。

■コンシューマー・リポート(CR)の報告書
 『ナノテクノロジー 我々の最初のテスト』
Nanotechnology: Our first test
結論:ナノ粒子成分と効能は関係ない。

 日焼け止め中のナノ粒子が人に直接的な健康影響を与えるかどうかは主にそれらが皮膚上層部を浸透するかどうかによる。研究によれば通常の状況では皮下組織まで達しないが、ざ瘡、湿疹、日焼け、又は髭剃りによる傷などにより損傷を受けた皮膚は浸透しやすいかも知れない。
 適切な安全評価がなされるまで、これらのナノ成分への暴露を避けたい人は二酸化チタンや酸化亜鉛をラベル表示していない日焼け止めを選択できるかもしれない。このことは不十分な日焼け保護に甘んじることを意味しない。我々のテストは効能とこれらの成分とは関係がないことを示している。さらに、最高得点のアメリカの製品Neutrogena Ultra Sheer Dry-Touch SPF 45 は二酸化チタンと酸化亜鉛のどちらも含んでいない。

■エンバイロンメンタル・ワーキング・グループ(EWG)の報告書
 『日焼け止め ナノテクノロジー 概要』
Sunscreen Nanotechnology - Summary
結論:ナノサイズの成分を含むいくつかの日焼け止めを推奨。

 調査当初はナノサイズのは二酸化チタンや酸化亜鉛を含む日焼け止めに反対する結論になると考えていたが、最終的には考えが変わり、ナノサイズの成分を含むいくつかの日焼け止めを推奨する。
 ナノ粒子を含むかもしれない亜鉛とチタン日焼け止めの比較に基づく便益の評価は、言うまでもなく全てのナノスケール製品や製造プロセスを推奨するものではない。しかし、我々はナノサイズの亜鉛とチタンは日焼け止めの、特に紫外線暴露の既知の危険性に対する用途として合理的な選択であり、アメリカにおける紫外線からの保護にとって限られた選択であることがわかった。
 粉状又はスプレー形の無機日焼け止めによるナノ粒子吸入の可能性について、特に顔や子どもへの使用を宣伝文句で謳っているなら、懸念がある。EWGは、粉又はスプレー形状で売られている無機ベースの日焼け止めは避けるよう消費者及びこれらの製品の製造者に勧める。
 消費者は、どのような製品もその安全性と効能について、FDAが包括的な日焼け止め基準を最終的に策定し、日焼け止めが効果的であり、人にも環境にも安全であることを保証するために全ての日焼け止めを再評価するまで、完全な信頼を持つことはできないであろう。

■Nanowerk Spotlight 2008年8月20日ブログ記事
 『日焼けによる皮膚のダメージはナノ粒子の皮膚浸透のリスクを増大させる/概要紹介
Sunburn increases risk of nanoparticle skin penetration By Michael Berger
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=6838.php
結論:クオンタムドット・ナノ粒子は、健康な肌に比べて紫外線でダメージを受けた肌で、より容易に浸透する。
  • 浸透した微量のナノ粒子が、状況、ナノ粒子の生体内での溶解性、及び排出ルートに依存して、有害影響を引き起こすことがあるということは想像できる。
  • 日焼け止めに使用されている二酸化チタン及び酸化亜鉛の有害副作用影響はまだ報告されていない。
  • 実験にクオンタムドットを使用した理由は、皮膚中で直接的な蛍光画像を可能としたからである。
  • クオンタムドットの効率的な紫外線吸収と蛍光特性は、様々なバイオテクノロジー、軍事、セキュリティーの分野での用途が急速に拡大し、化粧品や紫外線遮断応用分野での用途が検討されている。
  • これらの物質は、潜在的な長期的有害健康リスクを避けるために、皮膚浸透を防ぐよう設計されることが必須である。
  • ロチェスター大学の科学者らの研究目標は、浸透のメカニズムと程度に与えるナノ物質表面化学とサイズの影響を完全に特性化することである。


化学物質問題市民研究会
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