2009年5月11-15日
第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)
報告書(ナノ関連)


情報源:
International Conference on Chemicals Management Second session Geneva, 11-15 May 2009
Report of the International Conference on Chemicals Management on the work of its second session

http://www.saicm.org/documents/iccm/ICCM2/ICCM2%20Report/ICCM2%2015%20FINAL%20REPORT%20E.pdf#search='Report%20of%20the%20International%20Conference%20on%20Chemicals%20Management%20on%20the%20work%20of%20its%20second%20session'

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年11月12日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ICCM/ICCM2_nano_report.html

F. 新規の政策課題
1. ナノテクノロジーと工業ナノマテリアル
(12ページ)

87. ナノテクノロジーを急速に展開する新規の課題として会議の議題に含めることについて一般的な支持があった。
 多くの代表は、ナノテクノロジーは経済において重要な便益を提供するであろうが、それが環境と健康の両方にリスクを及ぼすという社会的及び文化的条件が予防的アプローチを正当化するという事実に注意を向けた。
 また、政府とその他の利害関係者が情報を共有し他の組織に相乗的効果を及ぼすことの重要性に関する一般的な合意があった。
 この文脈において、多くの参加者は経済協力開発機構(OECD)の仕事を喝采したが、一人の代表は開発途上国を十分に含めていないと述べ、もう一人の代表は市民社会による参加に役立っていないと述べた。
 何人かの代表は、この課題の世界的規模の特性を強調し、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する特定の活動を含めることによって世界行動計画を補足するとする、ある政府参加者によって提案された提案(訳注1)を支持する表明をおこなった。
 他の代表は、開発途上国及び移行経済国が経験している異なる問題、特にリソースの利用可能性の問題に焦点を当てた。
 一人の代表は、持続可能なプログラムと特にナノマテリアルを扱う資金調達のための効果的で効率的なメカニズムを特に開発途上国に関して作り出すことを提案した。
 いくつかの国は世界行動計画の中にそのようなメカニズムを含めることに賛意を示したが、ある一人は行動計画を修正するための提案に関する長々しい論争を開始することに反対すると警告した。
 何人かの代表はこの分野における継続した研究及び開発の必要性を強調した。
 多くの代表は、特に輸入国が輸入品中に含まれている物質を完全に知ることを確実にするために明確な製品ラベル表示が必要であることに注意を向けた。
 一人の代表は全ての利害関係者の一部と全体としての会議に関する論点に対して先を見越したアプローチを強く促した。

88. ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する特定の活動を含めることによって世界行動計画に関する会議用書類を取りまとめた一人の代表は、この課題を世界行動計画に新たな新規政策課題として含めたいと望んでいたと述べた。
 時間不足のため提案された活動((訳注2))についての徹底的な討論は行われなかったので、今回は行動計画に追加されなかった。
 ナノテクノロジーを世界行動計画に加えることについては第3回会議(ICCM3)の議題に含まれるべきであると彼が提案し、他の代表者らによってその提案は支持された。
 彼は議題を開発する先例を作ることは望まないが、この提案はすでに今回の会議でなされていたということを根拠に正当化されると付け加えた。
 彼は、彼の国は第3回会議のための新たな提案を喜んで準備すると述べた。
 会議は、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルの課題を追加することを世界行動計画の議題に含めることに同意した。

89. 討議に続き、会議は新規の政策課題を討議するために設立されたコンタクト・グループにこの課題を付託することに同意した。


5. 包括的決議 (13ページ)

98. 会議はナノテクノロジーと工業ナノマテリアル、製品中の化学物質、有害物質と電気・電子廃棄物のライフサイクル、及び塗料中の鉛の問題をひとつの決議に統合し、その決議を新規の政策課題を検討するための様式に併合した。したがって、今回の報告書の Aannex I に示される新規の政策課題に関する決議 II/4 を採択した。


Annex I
決議 II/4: 新規の政策課題


E
ナノテクノロジーと工業ナノマテリアル
(37ページ)

 会議は、
 ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関連して潜在的な便益と、人と環境へのリスクがあることを認めつつ、
 またナノテクノロジーと工業ナノマテリアルの開発は、持続可能な開発に関する世界サミットの化学物質に関連する2020年目標と合致すべきであることを認めつつ、
 さらにナノテクノロジーと工業ナノマテリアルの国家開発の妥当性は全ての国により真価を認められるべきことを認めつつ、
  1. 政府と他の利害関係者は、開発途上国と移行経済国がナノテクノロジーと工業ナノマテリアルを潜在的な便益を最大にし潜在的なリスクを最小にするよう責任を持って使用し管理するための能力を強化することの支援を奨励し、

  2. 政府と産業は、人の健康と環境を守るための、例えば労働者と彼らの代表の関与を含んで、適切な行動を促進することを要求し、

  3. ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルのライフサイクルを通じて責任ある管理を促進するにあたり、規制的、自主的、及び協力的アプローチの役割を認め、

  4. 潜在的な便益を実現し、人の健康と環境への潜在的なリスクをよりよく理解することを目的とするさらなる研究がなされるべき必要性に同意し、

  5. 政府、政府間組織、国際組織、非政府組織、産業界、学界、及びその他の利害関係者が相乗効果と理解を最大にするために研究を協力して行うよう求め、

  6. 政府と他の利害関係者がナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する公衆との対話を開始し又は継続し、アクセスできる情報とコミュニケーション・チャンネルを提供することにより、そのような関与のための能力の強化を勧告し、

  7. 国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の「包括的方針戦略」パラグラフ 15(C)に従い企業機密情報を保護することの必要性を認めつつ、ナノマテリアルを含む製品に関連する人の健康と環境の安全情報の広範な普及を促進し、

  8. 民間分野を含んで、政府、政府間組織、国際組織、非政府組は下記のためのリソースを利用可能とすることを要求し、
    (a) 異なる利害関係者の必要を理解して、関連情報へのアクセスを容易する
    (b) 新たな情報が利用可能になったらそれを共有する
    (c) 例えば、もし適切なら職場での使用を通じて、そのような情報の理解を増すために、来るべき地域的、準地域的、国家、及びその他の会議を利用する

  9. 特に開発途上国と移行経済国に関連する課題を含んでナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに焦点を合わせた報告書を作成し、その報告書を第1回作業部会会合(Open-ended Working Group)及び第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)で利用可能とするよう、政府と他の利害関係者に要請し、

  10. 経済協力開発機構(OECD)、国際機関共同化学物質管理計画(Inter-Organization Programme for the Sound Management of Chemicals)に参加している他の組織、及び国際標準化機関(ISO)を含む、関連する国際組織に対し、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルの更なる理解を得るという考えをもって、利害関係者との対話に関与するよう要請し(訳注3)、

  11. SAICMのウェブサイト及びその情報クリアリンング・ハウスやのような既存の情報交換システムの役割と、追加的情報交換が適切に開発される得るべきことに言及する。

訳注1
SAICM/ICCM.2/10/Add.1 2009年4月7日 第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)SAICM 新規の政策課題 Annex I ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する共同行動についての決議 (提案)

訳注2
Appendix
出典:International Conference on Chemicals Management Second session
SAICM/ICCM.2/10/Add.1 / 7 April 2009
SAICM: emerging policy issues Annex I
Nanotechnology and manufactured nanomaterials
Proposed elements of a resolution
[Resolution on cooperative actions on nanotechnology and manufactured nanomaterials]
http://www.saicm.org/documents/iccm/ICCM2/meeting%20documents/ICCM2%2010%20Add1%20emerging%20issues%20actions%20E.pdf

日本語訳(当研究会)
SAICM/ICCM.2/10/Add.1 2009年4月7日 第2回国際化学物質管理会議(ICCM2) SAICM 新規の政策課題 Annex I ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する共同行動についての決議 (提案)
ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルについての知識と情報に関する
国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチの世界行動計画に
新たな作業領域を追加する提案
知識と情報に対処する作業領域(目的2)
作業領域 活動 行動主体 目標時間枠 進捗の指標 実施の側面
ナノテクノロジーと工業ナノマテリアル 1. 環境健康と安全影響の理解を増し、責任ある開発と環境的に利益のある応用を促進し、倫理的配慮の理解を増し、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する合意を得た基準を開発し促進すること 国家政府、政府間及び国際的組織、大学研究所、産業、非政府組織 2009 - 2015 調和のとれた確認されたテストと評価の手法が利用可能である。WSSD目標達成に有用な応用が利用可能である。政府と公衆は、環境的健康と安全及び倫理的、法的、社会的影響を知っていること 健全な化学物質管理のための組織間プログラムによる様々なモジュールの調整
  2. ナノテクノロジー影響に関する研究及び持続可能な開発に関する世界サミット2020年目標の実施計画で求められる行動に合致するのに役に立つかもしれない応用のための資金を支援し、実施可能なら、増やすこと 国家政府、政府間及び国際的組織、大学研究所、産業 2009 - 2020 工業ナノマテリアルの環境健康と安全の影響がよりよく理解さること。WSSD目標達成に有用な応用が利用可能であること リスク評価とリスク管理戦略がこの取り組みに取り入れられることが重要
  3. 労働者、消費者、一般公衆の意図しない暴露と環境への放出を、特に有害な工業ナノマテリアルまたは環境または人の健康への影響に関して不確実性がある場合、防止し最小化するための措置をとること 国家政府、政府間及び国際的組織、大学研究所、産業 2009 - 2012 ナノマテリアルの製造者と川下ユーザーは有害ナノマテリアルについて情報を与えられること。暴露を最小化する措置が適切に取られていること 化学物質安全データシートまたは他の方法で全サプライチェーンを通じて川下ユーザーに情報を与えるステップが適切な場合にはとられること

訳注3
 会議に参加したNGOs代表(IPEN)は、会議後のプレスリリースで次のように述べている。
 国連及びその加盟国の大部分は軽視され、ダカール宣言はこの会議の準備期間中に弱められた。英語だけで夜遅くの会議で協議された草案は、経済協力開発機構(OECD)と国際標準化機構にすっかり委ねられてしまった。予想されたことであるが、これは代表者らの支持を得ることに失敗した。
IPEN Press Releases SAICM 2009年5月15日 NGOs ナノに関する第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)の結果に失望



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