SAICM/ICCM.2/10/Add.1 2009年4月7日
第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)
SAICM 喫緊の政策課題 Annex I
ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する
決議の提案される要素


情報源:
International Conference on Chemicals Management Second session
SAICM/ICCM.2/10/Add.1 / 7 April 2009
SAICM: emerging policy issues Annex I
Nanotechnology and manufactured nanomaterials
Proposed elements of a resolution
[Resolution on cooperative actions on nanotechnology and manufactured nanomaterials]
http://www.saicm.org/images/saicm_documents/iccm/ICCM2/meeting%20documents/
ICCM2%2010%20Add1%20emerging%20issues%20actions%20E.pdf


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年4月29日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/ICCM/ICCM_nano_proposed_resolution.html

Annex I ナノテクノロジーと工業的ナノマテリア
(訳注:ファシリテータ:アメリカ、スイス)

ナノテクノロジーと工業的ナノマテリア
説明

1. 共同ファシリテーターは、もし会議が、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する決議を策定することを決めるという前提で、今後の討議に向けての出発点としての下記の要素を策定した。

提案する決議の要素
ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する決議

2. ナノテクノロジーとナノマテリアルの使用に関連して潜在的な便益と新たな機会がある。しかしまた、課題、潜在的な環境健康と安全リスク、倫理的及び社会的問題もある。これらの課題について意識を高める必要がある。

3. ナノテクノロジーは、典型的には 1〜100nmの範囲のサイズで、、特定材料、デバイス、及びシステムの可視化、特性化、製造を扱う。

4. 特に行動を起こしていない政府は、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルの自国の状況への関連性を検討したいと望むかもしれない。これは、例えば、ナノテクノロジーの考慮をナショナル・プロファイルに統合することによって実現できる。

5. 工業ナノマテリアルの環境健康安全、及び環境的に有益な応用に関して、学界、産業界、及び政府により様々な活動行われている。関連する利害関係者はこの情報をできるだけ多く、クリアリングハウスを通じることを含めて、公開することを考慮すべきである。

6. 政府や非政府組織の国や地域の活動に加えて、政府間や国際的な組織の関連作業を考慮することが重要である。工業ナノマテリアルの潜在的な環境、健康、及び安全についてのリスクを特定するための現在の取り組みはまだ完全には結論を出しておらず、そのような取組は地球規模で拡大され支援されるべきである。[経済協力開発機構 OECD は、二つの作業部会(WPMN と WPN)を非メンバー国及び他のオブザーバーの積極的な参加のために開放してきた。関心を持つ非OECD諸国又は他のオブザーバーはOECD事務局にコンタクトし、それらの活動に参加するよう促される。]

7. いくつかの政府は、ナノテクノロジーに基づく新たな応用に焦点を合わせた研究と開発に向けて相当なリソースを投入している。これらの政府は、そのようなリソースを環境健康と安全影響の研究のための適切な合計にバランスさせることを検討したいと望むかも知れない。

8. 工業ナノマテリアルは、持続可能な開発に関する世界サミットの化学物質に関連する2020年目標に貢献する方法で製造され使用されることを確実にする必要がある。リスク評価とリスク管理戦略がこの取り組みに導入されることが重要である。政府は、途上国や移行経済国における活動を含めて、持続可能な開発に関する世界サミットのヨハネスブルグ実行計画が求める活動に合致するために有用かもしれないナノテクノロジーの応用に関する研究に資金を当てることを検討したいかもしれない。

9. 工業ナノマテリアルの健康、環境、安全への影響に関する調査を続ける一方で、政府と産業は労働者と消費者の暴露及び環境への放出を防止する又は最小にするための措置を、特に有害な工業ナノマテリアルについて、又は工業ナノマテリアルの環境と人の健康への影響に関して不確実性がある場合、考慮すべきである。適切な場合には、全サプライチェーンを通じて化学物質安全データシート又は他の手段により川下ユーザーに知らせる措置がとられるべきである。

10. [工業ナノマテリアルを取り扱う多くの国と地域の活動は急速に発展しているが、多くの国は包括的な政策の枠組みに欠けている。全てを含んだ世界的な政策の枠組みの欠如もまた言及されている[3]。]

原注[3]:二つの作業部会は工業ナノマテリアルに関する作業部会とナノテクノロジーに関する作業部会である。

11. [子ども、妊婦、老人などの工業ナノマテリアルに対する特別の脆弱性が認識され、彼らの健康を保護するための適切な安全措置が強調される]。

12. [さらなる人の健康と環境への潜在的なリスクのよりよい分析を支援するための研究と研究戦略が求められる。]

13. [工業ナノマテリアルに対処するために、途上国及び移行経済国の必要と能力はよりよく理解されなくてはならない。]

14. [工業ナノマテリアルによって及ぼされるリスクを最小にすることを目的として、国内製品と輸入製品とを区別することなく、工業ナノマテリアルを受容する又は拒絶する国家の権利が認められる。]

15. [ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルは新たに出現している重要な課題である。第2回国際化学物質管理会議(ICCM2)は、”ナノテクノロジーと工業ナノマテリアル”という新たな作業分野及び現在の解決に対し、Appendix に示されるような新たな特定の活動を含めるために、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)の世界行動計画を修正することを決定する。]

次のステップ

16. [政府と産業は、ナノマテリアルがそのライフサイクルを通じて予防的な方法で扱われることを確実にすべきである。]

17. [ナノマテリアルを含む製品はすでに市場に出ているが、ナノマテリアルのための基準はまだ利用可能ではない。したがって政府は、既存の知識に基づいていかにナノマテリアルを安全に扱うかについて勧告すべきである。]

18. 政府と利害関係者は工業ナノマテリアルの潜在的な便益とリスクを検討するための対話を立ち上げる又は継続するべきである。

19. 政府、政府間、及び国際間組織、大学、民間セクター、その他の利害関係者は、[科学者ではない人のために意図されたエグゼクティブ・サマリーをもって、]意識を高め、情報に基づくく決定を可能にするために、一般公衆が容易にアクセスできる工業ナノマテリアルのライフサイクルに関連した使用とリスクに関する情報を作成すべきである。[情報伝達技術(IT)を採用したクリアリング・ハウス・メカニズムは、国内及び国際的情報の有用な共有を効率的で単純でよく構築された方法で行うことに著しく役に立つ。公衆がアクセスできるナノテクノロジー研究と政策決定に関する情報へのアクセスを提供するインターネット・ベースのウェブ・ポータルは、情報に基づく意思決定と政策結果の公衆の受容を促進するのに役に立つ。]

20. [市民社会の能力は、工業ナノマテリアルに関連する意思決定に効果的に参加できるよう強化されなくてはならない。[国の教育システムはナノマテリアルの潜在的な便益とリスクに関する情報を共有することに関わるべきである。]]

21. 研究者と大学人は、ナノマテリアルの潜在的な[特に、子ども、妊婦、老人のような特別に脆弱なグループに対する]リスクを効果的に評価するために必要な知識を増やすべきである。

22. 政府と産業は現実世界の条件の下に工業ナノマテリアルの全ライフサイクルを含んで、リスク評価の知識のギャップを埋めることを継続すべきである。

23. [産業は、工業ナノマテリアルに関連するリスク評価、リスク防止措置の選択、リスクの調査など労働安全衛生プログラムと措置を開発する時には、労働者とその代理者を関与させるべきである。]

24. [適切な場合には][特に有害な工業ナノマテリアルについて、又は工業ナノマテリアルの環境及び人間の健康影響に関して不確実性がある場合]、労働者の暴露及び環境への排出を防止し又は最小にするための措置がとられるべきである。

25. [工業ナノマテリアルを利用する研究者は、既存および計画中の研究プログラムに関し環境・健康・安全専門家、及び医学界と協力すべきである。]

26. [国際社会は、人の健康と環境に対する潜在的なリスクに関する効果的な研究戦略を開発し、資金をつけ、共有することを継続すべきである。]

27. 政府と組織は、ナノマテリアルの川下ユーザーに工業ナノマテリアルの健康と安全リスク及び新奇な特性について、例えば化学物質安全データシートを使用して、いかに最良に情報を伝達するか、どのようなレベルの情報が適切かを検討すべきである。

28. [産業は、工業ナノマテリアルの環境・健康・安全(・労働)に関するスチュワードシップ・プログラムの中で、職場のモニタリングを含むコミュニケーションと意識の向上を継続しまたは立ち上げ、産業と他の利害関係者の間の更なる協力的アプローチを調査すべきである。]

29. 政府と利害関係者は、現在の法的枠組の変更、スチュワードシップ・プログラム、自主的な取り組みの必要性を検討しつつ、工業ナノマテリアルに関する安全情報の共有を促進すべきである。

30. [諸国と組織は、財政的支援を提供することを目的に、途上国と移行経済国が工業ナノマテリアルに関連する科学的、技術的、法的、及び規制の政策専門性を構築することを支援するための協力体制を確立するべきである。]

31. [彼らの能力にしたがって、政府は、すべての利害関係者を含み国際的な組織の支援を得て彼らの国の行動規範策定に協力し、[世界的な討議に積極的に参加するよう働きかける][時宜を得たやり方で世界の行動規範の開発の実施可能性を評価する]べきである。]

32. [製造者は、適切な場合には製品ラベルを通じて、また適切な場合にはウェブサイトとデータベースを通じて、消費者に潜在的なリスクについて知らせるために、工業ナノマテリアルの内容をに関する適切な情報を提供すべきである。]

33. 政府間組織及びその他の関連組織は、政府がこれらの行動を実施するのを支援すべきである。

34. [政府と産業はナノマテリアルの代替を促進することを探究すべきである。]

35. [国際社会は、先進国および移行経済国を含む政府と市民社会のための能力構築を開発し資金提供すべきである。]

36. [政府は特定用途のためのナノマテリアルの登録システムを確立すべきである。]

37. [非政府組織はナノマテリアルの健全な管理に関連する側面に関与するよう働きかけられるべきである。]

38. 政府、政府間、国際間、及び非政府の組織、産業、及び他の利害関係者はこれらの勧告を支持すべきである。

39. [会議は、世界保健機関及び国際労働機関が、先進国、途上国、及び移行経済国に関連するナノテクノロジー及び工業ナノマテリアルからの職業健康リスクに関する指針文書を開発することを要求する。]

40. [会議は、SAICMの包括的方針戦略(環境省仮訳)の14(g) ”世界的な懸念となっている既存及び新規で到来しつつある問題が、適切なメカニズムによって十分対処されることを確実にすること” を満たし実現することを支援する会期間作業部会を設立する。この作業部会は、(ナノテクノロジーに関する既存の情報の見直し、ナノマテリアルを含む製品、潜在的な健康と環境影響に関する情報交換を含む)途上国および移行経済国に関連する課題を探究することを課されている。さらに、この作業部会は、途上国および移行経済国のために、ナノマテリアルとナノテクノロジーに関連する特定の法的枠組みと政策に関する法的指針とともに、ナノテクノロジーを囲む社会的及び倫理的課題に関連する文書を作成する。]

41. [作業部会は、会期中に、適切なら他の既存の会議の合間に個人と面談しつつ、主に電子的方法及び電話会議を通じて作業を実施し、その作業が本質的に公開性と透明性を持つことを確実にする。]

42. [作業部会は適切なら下記の要素を検討する。
(a) ナノマテリアルを含む製品に関する情報の交換
(b) 既存および提案される規制と法令に関する情報の交換
(c) 人の健康と環境に及ぼすナノマテリアルの影響に関する情報の交換
(d) ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関連する人の健康の保護に関連する既存の国内法を強化するための情報の交換と国際的な支援の提供
(e) 製品ラベルに関する情報の交換
(f) ナノマテリアルのためのラボテストを促進するためのの能力構築
(g) 工業ナノマテリアルを含む廃棄物を管理するための能力構築
(h) 拡大生産者責任制度に関する法的指針の開発 (i) 途上国および移行経済国のためのナノテクノロジーと工業ナノマテリアルを囲む社会的及び倫理尾的課題thought-starter 文書の開発]

43. [作業部会は、SAICMウェブサイトを通じてその作業の進捗に関して第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)報告する。]

44. [第3回国際化学物質管理会議(ICCM3)は、この課題に関し可能性あるさらなる行動の必要性を検討すべきである。]


Appendix

ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルについての知識と情報に関する
国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチの世界行動計画に
新たな作業領域を追加する提案
知識と情報に対処する作業領域(目的2)
作業領域 活動 行動主体 目標時間枠 進捗の指標 実施の側面
ナノテクノロジーと工業ナノマテリアル 1. 環境健康と安全影響の理解を増し、責任ある開発と環境的に利益のある応用を促進し、倫理的配慮の理解を増し、ナノテクノロジーと工業ナノマテリアルに関する合意を得た基準を開発し促進すること 国家政府、政府間及び国際的組織、大学研究所、産業、非政府組織 2009 - 2015 調和のとれた確認されたテストと評価の手法が利用可能である。WSSD目標達成に有用な応用が利用可能である。政府と公衆は、環境的健康と安全及び倫理的、法的、社会的影響を知っていること 健全な化学物質管理のための組織間プログラムによる様々なモジュールの調整
  2. ナノテクノロジー影響に関する研究及び持続可能な開発に関する世界サミット2020年目標の実施計画で求められる行動に合致するのに役に立つかもしれない応用のための資金を支援し、実施可能なら、増やすこと 国家政府、政府間及び国際的組織、大学研究所、産業 2009 - 2020 工業ナノマテリアルの環境健康と安全の影響がよりよく理解さること。WSSD目標達成に有用な応用が利用可能であること リスク評価とリスク管理戦略がこの取り組みに取り入れられることが重要
  3. 労働者、消費者、一般公衆の意図しない暴露と環境への放出を、特に有害な工業ナノマテリアルまたは環境または人の健康への影響に関して不確実性がある場合、防止し最小化するための措置をとること 国家政府、政府間及び国際的組織、大学研究所、産業 2009 - 2012 ナノマテリアルの製造者と川下ユーザーは有害ナノマテリアルについて情報を与えられること。暴露を最小化する措置が適切に取られていること 化学物質安全データシートまたは他の方法で全サプライチェーンを通じて川下ユーザーに情報を与えるステップが適切な場合にはとられること


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