EurActiv 2009年6月15日
ナノ製品であることの主張 ”後退”
消費者の懸念を恐れ


情報源:EurActiv, 15 June 2009
Nanotech claims 'dropped' for fear of consumer recoil
http://www.euractiv.com/en/science/nanotech-claims-dropped-fear-consumer-recoil/article-183183

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年6月22日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/EurActiv/euractiv_090615_nanotech_claims_dropped.html


 EU及びアメリカの消費者グループの会合で講演した上級専門家によれば、現在ヨーロッパ市場にあるナノ物質を含む製品についての信頼性のある情報を見つけることはだんだん難しくなってきている。

 ナノ物質を含む製品のあるものはラベル上でそのことを述べておらず、一方他の会社はナノテクノロジーを使用することにより、彼等の製品を強化したと誇大な主張をしていると6月10日のブリュッセルの会議で報告された。

 ウッドロー・ウイルソン・センター”新興ナノテクノロジーに関するプロジェクト(PEN)”の首席科学顧問アンドリュー・メイナード博士は、製造者がナノテクノロジーを含むと主張し、現在市場に出されている製品の目録を示した。

 彼は、約800製品がオンライン上で特定されたが、それらの多くは健康とフィットネス関連分野であり、それらの中で潜在的な健康影響を及ぼすものは少ないと述べた。

 しかし、彼は、ナノテクノロジーを取り巻く議論−そのうちのあるものは科学的事実に立脚していないと彼は言う−が製造者にナノ物質についての記述を彼等の製品からはずさせるという結果をもたらしたと懸念している。

 ”ある会社はナノテクノロジーの使用は続けているが、’ナノ’を使っているという主張は取り下げている”と彼は述べた。

 ノルウェーの国立消費者調査研究所の研究員ハアッルド・スロンは、会社はナノ物質をハイライトすることに熱心でなくなっているかもしれないと同じことを言った。

 彼は、どのくらい多くの製品がナノテクノロジーを含んでいるか調べるために、ひとつの大きな国際的化粧品会社のウェブサイトを’ナノテクノロジー’及び’ナノ’のようなキーワードを使って検索した。スロンは検索で、2007年には29製品を見つけだしたが、最近同じやり方で再現してみたら、ヒット数はゼロであった。

 彼が言うには、このことは、会社は現在では、’ナノ’は価値を加えるものというよりもマイナスのイメージとして見ているかもしれない。

 イギリスの消費者団体ウイッチ?(Which?)の首席政策担当シュー・デービスは、データは限定されていると述べ、会社はこのことに関して消費者と連携したがらないという懸念を述べた。

 彼女の組織は産業側から信頼性のある情報を引き出すことは難しいことがわかったと付け加えつつ、”我々は、ナノテクノロジー市場での誇大広告と実際の使用とを見分けなくてはならない”と述べた。

 彼女は、ウイッチ?(Which?)は67の化粧品会社の調査を行ったが、たったの8社から情報を得ただけであると語った。回答した8社すべては日焼け止めでナノテクノオロジーを使用していると報告した。

 ”しかし、ウェブでみれば、アンチエージング・クリーム(しわ止め)ではカーボン・フラーレンが、歯磨きでは銀ナノが使用されていることがわかるが、これらの物質に関連する潜在的な毒性があるにもかかわらずにである”と彼女は述べた。

 デービスはこの分野における情報の欠如に対処するために、自主的な報告ではうまくいかないので、義務的な報告とするよう要求した。

 しかし、ナノテクノロジー産業協会の理事ステッフィ・フライドリッヒは、将来性のある新たな技術の使用について産業界は正直に明らかにしてきたし、製品が安全であること確実にするためにどんなことでもすると述べた。

 彼女はナノテクノロジーの定義についての混乱を指摘した。すなわち、いくつかのNGOsは300ナノメートルより小さい物質としているが(訳注1)、産業界は100ナノメートル未満という定義をしていると指摘した。

 ”定義を変えることは産業側が情報を開示しないと主張することにつながる。だれも嘘をついていないし、誰も公衆や当局に誤解を与えていない。何について我々が話をしているのかについて合意し、消費者に情報を伝えるために協力しよう”と彼女は述べた。


訳注:この記事に関連する情報 訳注1
地球の友オーストラリア、ヨーロッパ、及びアメリによる報告書『食品と農業におけるナノテクノロジー研究室から食卓へ』 の中で次のように述べている。
”ナノ物質のサイズベースの定義は拡張されなくてはならない”
”今日まで”ナノとして定義されている 100nm 以下の粒子と同様な健康リスクを及ぼすという証拠があるので、健康と環境評価の目的として、300nm までの全ての粒子は”ナノ物質”と見なされなくてはならない”

http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FoE_au/FoE_au_nanofood.html



化学物質問題市民研究会
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