C&EN 2010年12月14日
食物連鎖中でナノ粒子が蓄積
金ナノ粒子は植物から動物に移動し、より高濃度で濃縮される

情報源:Chemical & Engineering News, December 14, 2010
Nanoparticles Accumulate In The Food Chain
Nanomaterials: Gold nanoparticles become more concentrated as they move from plants to herbivores
by Rachel A. Zurer
http://pubs.acs.org/cen/news/88/i51/8851news.html
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年12月20日

 新たな研究が、ナノ粒子は陸生食物連鎖中で蓄積することができるという初めての証拠を提示した。ケンタッキー大学の究者らは、金のナノ粒子がタバコの葉に蓄積し、次にこのタバコの葉を食べる蛾の幼虫でさらに濃縮することを発見した(Environ. Sci. Technol., DOI: 10.1021/es103031a)。

 製造者らは、銀、酸化亜鉛、二酸化チタンのようなナノ粒子を衣料や化粧品にますます加えている。その結果、化学物質は、自治体の排水中に出現し始めているとケンタッキー大学の環境化学者ポール・ベルチュは述べている。排水が処理設備に達する時に、ナノ粒子の約90%が排水処理設備の最終処理生成物である固形部分に蓄積する。農民は毎年数百万トンのこれらの固形物を農地で利用するので、ナノ粒子がそこに蓄積することになる。

 ベルチュらは以前に、ミミズが周囲の土壌から金ナノ粒子を直接吸収して体内に蓄積することができることを示した(訳注1)。彼らは次に、金ナノ粒子が食物連鎖の中で植物からそれらを食べる動物へ移動することができるのかどうかを調べたいと思った。

 研究者らは、それぞれ 5、10、15 nm の金ナノ粒子を高濃度で含む水の中でタバコの葉(Nicotiana tabacum)を温室中で水栽培したが、このような水栽培は比較的非反応性で追跡が容易である。研究者らはタバコの葉を農業害虫であるタバコスズメガの幼虫に与えた後、ナノ粒子の植物(タバコの葉)中と蛾の幼虫の体内のナノ粒子の分布を、それぞれ蛍光X線分析法(XRF)とレーザーアブレーションICP質量分析法 (Laser Ablation Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:LA-ICP-MS) を用いて調べた。彼らは、ナノ粒子がタバコの葉を通じて蛾の幼虫の組織に蓄積することを確認した。

 驚いたことは、ナノ粒子がタバコの葉の中より蛾の幼虫の中に一桁以上高い濃度で蓄積していたということである。蛾の幼虫は金を効率的に除去することができない。もし微生物がナノ物質を除去できないなら、これらの化学物質は上位捕食動物が草食動物を食べると濃縮され、おそらくその食物連鎖の頂点にいる動物に害をもたらすことをベルチュは心配している。アメリカ国立標準技術研究所の化学技師であるデービッド・ホルブルークは、このタバコスズメガ幼虫のデータは、金ナノ粒子が悪名高い汚染物質である水銀やDDTと同じように生物濃縮するということを立証したので、注目に値すると評価した。”我々が食物連鎖中で蓄積することができる何かを見ると、環境分野で働く人々は、大いに躊躇させられる”と彼は述べている。

関連記事:

訳注1
C&EN 2010年10月7日 ナノ粒子 食物網に入り込む

訳注2
C&EN 2010年9月30日 環境中の二酸化チタン・ナノ粒子



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