ZMWG 2011年9月
INC3ドラフト条約テキストに対する
ZMWGの予備的見解(要約版)

pdf 版

情報源:Zero Mercury Working Group (ZMWG), September 2011
Preliminary Views on INC 3 Draft Treaty Text
Abridged Version


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma (Citizens Against Chemicals Pollution (CACP))
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年9月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/zmwg/INC3/
ZMWG_Views_on_INC3_Draft_Text_Abridged_jp.html




はじめに

 この文書は、どのオプションと代案がINCによる更なる作業の基礎となるべきなのかに関する勧告をまとめ、交渉の過程で、支持、修正、又は削除を正当化する主要なドラフト条項を特定する。詳細については、ぜロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)INC3ドラフ条約テキストに対するZMWGの予備的見解の完全版をご覧いただきたい。

第1条 目的
削除:第1条bis第1節。水銀条約は他の条約における権利と義務に影響を及ぼさないであろうと述べている。この文言の採用は不必要にWTOの異議申し立てを助長し、水銀条約の供給と貿易条項に影響を与えるかもしれない。したがって、同様な文言がストックホルム条約の下に拒否された。第1条bis第2節は、水銀条約と他の通商及び環境条約は"相互に支えあう"というストックホルム条約と同様な文言を反映して残る。

第3条 供給
保持:オプション1。輸出を目的とする採鉱を0〜5年以内(選択する代案による)に禁止し、全ての水銀採鉱を3〜5年以内に廃止するというものである。我々は一次採鉱の廃止期限を最大3年とすることを勧告する。
削除:オプション2。採鉱の廃止は締約国が経済的に実行可能であるとする決定に基づいた締約国の裁量に委ね、採鉱しないことに対し補償を求めている。

第4条 締約国との国際貿易
保持:第2節bis。条約の貿易条項を実施するために必要な国内承認機関を含む。
    第3節(b)。歯科アマルガムでの使用としての水銀の貿易は、カプセルに収められた形状で行なわれることを求めている。
削除:第2節(b)の代案2。政府が水銀の輸入に同意する要件を弱めるため。
削除:第4節(d)。バーゼル条約に適切に従っていないため。

第5条 非締約国との貿易
追加:非締約国への輸出は条約で許される用途に限定されていないので、非締約国貿易条項は現状では弱い。テキストは、非締約国への輸出を完全に禁止すべきであるが、少なくともどのような輸出の用途も、条約の下に許される用途に限定されるべきである。

第6条 製品
保持:オプション2.ネガティブ・リスト・アプローチをとっており、水銀添加製品の製造は、許容用途免除が得られていなければ、一般的に禁止されると述べている。しかし、廃止を非義務的とする第5節を削除すること。
保持:オプション1の第4節。廃止された製品を作るために使用される設備の貿易を禁止する。
保持:非締約国と貿易をする締約国に許容用途免除を入手することを求めること。
削除:オプション3。テキスト中で重要な詳細が不明確、又は欠如しており、製品廃止決定は締約国会議(COP)に全てを委ねるべきではない。
削除:オプション4。水銀製品廃止への自主的アプローチでは、意味のある結果を生み出すことがないため。

第7条 プロセス
保持:オプション2。第8条のもとに許容用途免除を受けているプロセスを除き、全てのプロセス中での水銀の使用を一般的に禁止する。
保持:第6節。水銀添加製造プロセスで使用される設備の輸出を禁止する。
削除:オプション3.あまりにも柔軟性があり過ぎ、詳細が欠如しているため。特別はケースの場合には免除プロセスで対応できるので、不可欠な用途"カテゴリーは必要ない。

第8条 免除
保持:オプション1の要素。下記を求めている。
  • 免除が与えられる前に締約国会議(COP)のレビューと承認(第1節 代案2)。
  • 免除期間を合理的な期間に限定する(第4節、代案2)。
  • 免除は適切であるとする意味のある実証(第5節及び7節のカッコつきテキスト)。
  • 非水銀の代替が世界的に入手可能になれば、免除の有効性を止める権限を与える(第9節、代案2)。
削除:オプション2。制限がない免除を作り出し、余りにも容易に長期間の免除が得られるという結果をもたらすため。

第9条 ASGM
保持:第1節オプション1。ASGM活動を行なっている全ての締約国が遵守し、ASGM分野とその分野における水銀の使用の両方に目を向けることを求める。
保持:第1節bis及び関連するAnnex E。国家行動計画の策定のために単純で明快な要求を含んでいる。
保持:第2節オプション2。国際協力に関し、この領域における可能性ある活動について入念に練っている。
保持:第3節オプション2。ASGMのための水銀輸出又は輸入に対して許容用途免除を与える。
追加:第8条免除プロセスは修正して、輸出/輸入免除を与える。
削除:Annex D(産業プロセスのリスト)からASGMを削除。ASGMは分離した条項とするのが最善であるため。

第10条及び第11条 排出
保持:可能な限り速やかに、新規及び既存の施設を義務的なBAT遵守義務に従わせる条約テキストの採用。
保持:義務的な規制義務の一部として、許容範囲制限値(閾値)及び削減ベンチマークを含めること(BAT/BEP措置を実施するために、オプション1の第4節中のカッコつき文言の大部分)。
保持:ASGMを除いてAnnex F中の大気排出源カテゴリー。
削除:新規及び既存施設のためのBAT権限を弱める全てのカッコつきのテキスト。
削除:BATは"無料"で誰にでも提供されるべきことを求める文言。
削除:Annexesの中の排出源カテゴリーからASGMを削除。ZMWGは、第9条の下に別個の規制制度を正当とするため。
統合:第10条と第11条。ZMWGは、全ての媒体への著しい汚染源を目標とするアプローチ、及び目標とされた排出源カテゴリーのための全ての関連する媒体に対応するBATガイドラインの準備に賛成する。

第12条 保管
保持:代案1。第12条の下に広範にカバーし、特にその分類がバーゼル条約の対象とならない水銀を含める。
保持:事務局が地域の保管計画を容易にするための支援を求める条項。
削除:オプション2。バーゼル条約はこの分野おいて限定された権限しかもっていないので、保管ガイドラインの開発をバーゼル条約に任せることに反対。
削除:おそらくうまく機能しないので、提案される保管ガイドラインのためのAnnexに反対。
削除:全ての締約国又は全ての地域がひとつの保管施設を開発しなくてはならないと示唆している文言は、時期尚早であり不必要であるよう見えるので反対。

第13条 廃棄物
説明が必要:第13条の範囲、特に第10条と第11条の下にカバーされる排出源からの廃棄物が、この条約の下でどのように取り扱われるのかに関して。
保持:輸出締約国が輸入締約国の書面による同意を得て、さらには輸入国が環境的に適切な処分施設を持っていることを確認した後に、先進国間又は途上国から先進国へのそのような移動を制限する水銀廃棄物の国境を越える移動に関する第1節(c)中の代案1のテキスト。
削除:"政策決定又はガイドラインの策定をバーゼル条約に任せる"というこの条項中の全てのテキスト。二つの条約間の調整と協力を促進するのがよいアプローチである。
強化:第3節。第6条及び7条の下に確立される製品とプロセスの廃絶を考慮に入れつつ、締約国会議(COP)に時系列の水銀削減目標を確立することを求めることによる。

第14条 汚染サイト
保持と強化:オプション1は下記のように改善される必要がある。
  • 締約国がサイトを優先付け、緊急事態を特定するために必要な基本情報を得ることができるよう、義務的な目録とサイト特性化要求を含めること。
  • もしINCが本当に被害者の懸念に対応したガイドラインを望むなら、第3節(c)のカッコつき文言、"実行可能な場合には"はテキストから外すこと。
  • 汚染者が修復コストと被害者への適切な補償を支払うことを促進するためのテキスト、特に汚染サイトに対応するために財政的責任を割り振ることに関するガイダンスの開発を求める文言を第3節に加えること。
  • ガイドラインの開発は、サイト修復で生成される廃棄物の安全な管理をカバーすべきであり、関連するテキストは、第13条に従い修復廃棄物の安全な管理を求めるべきである。
  • 最後に、テキストは、地域の集団がサイトの特性と彼等が直面するリスクについて知らされることを確実にすべきである。
削除:オプション2は、締約国又は汚染サイトの被害者、特に開発途上世界の必要性対応していないので、今後の検討から外すべき。

第15条 財政的支援
保持:下記構造と一致するテキスト
  • 財政的メカニズムは、遵守を促進し非遵守を思いとどませるために、適切な資源が利用可能であることを確実にするために専用基金を含まなくてはならない。
  • そのメカニズムは、締約国会議の権限とガイダンスの下に運用されなくてはならず、締約国会議はCOP優先度に一致して資源が割り当てられることを確実にしなくてはならない。
  • 財政支援メカニズムは、この条約の義務の遵守を促進し、非遵守を思いとどませるように設計され、運用されなくてはならない。
  • 専用基金のガバナンス構造は、開発途上国の代表と運用の透明性を規定しなくてはならない。
  • 各加盟国は、第22条(報告)に従い提出される報告書の中にこの条項の規定をどのように実施してきたかを示す情報を含めなくてはならない。
  • 汚染者負担の原則がこのメカニズムの中でどのように用いられたか反映される。
削除:特に民間分野がこの責任を負うことができ負うべきである遵守を財政援助の条件とするテキストの文言の削除。この種の文言は、多くの形で見られ、提案されたテキスト中に現れる。

第16条 技術的支援
保持:オプション1 第1節(カッコつきのNGOの文言)
削除:第1節bisとオプション3(poison pillsとして先進国に技術を"無料"で提供することを求めること)の削除、及びCOPは必要とするときには条約テキストになくてもパートナーシppを採用できるので、条約中のパートナーシップに関する文言を削除。

第18条 情報交換
含める:NGOsが条約の策定と実施に果たす重要な貢献を考慮して、情報交換にNGOsを含めるべき。
削除:第1節(c)にある "社会的に実現可能" という用語は曖昧であり、情報を交換するための必要性と一致しないので、削除されるべき。
却下:第3節を第4条(国際貿易)に移すという提案は、それが指定された国家機関の役割を貿易に関する情報交換だけに限定するので、却下されるべき。

第19条 公開情報、意識向上、教育
保持:(a)項及び(b)項中のカッコつきテキスト。公衆が関連性のある情報を提供され、水銀曝露からのリスクと締約国のそのようなリスクを削減する計画を理解することを確実にするため。

第20条 研究開発、監視
保持:この条約の下に、データ収集に役立たせるためにカッコつきテキストを含めること。

第22条 報告
保持:オプション1。
削除:オプション2。潜在的にどの締約国にも遵守放棄の自己宣告を与えることにより、報告プロセスとそのフォローアップの実施を混乱させ/長引かせ/遅らせるため。

第23条 効果の評価
保持:条約効果の評価の一部として、第2節中のカッコつきテキストを含める。

第33条 留保
削除:締約国がこの条約に対して留保を行使できること。全ての締約国は、効果的に作業を行い望ましい結果を達成するために、条約の全ての条件によって拘束されなくてはならない。我々は、ストックホルム条約は留保を設けなかったことに留意する。



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