ZMWG 2011年9月
INC3ドラフト条約テキストに対するZMWGの予備的見解
pdf 版

情報源:Zero Mercury Working Group (ZMWG), September 2011
Preliminary Viess on INC 3 Draft Treaty Text


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
Translated by Takeshi Yasuma (Citizens Against Chemicals Pollution (CACP))
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年9月11日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/zmwg/INC3/
ZMWG_Preliminary_Views_on_INC3_Draft_Treaty_Text_jp.html

訳注:ZMWGは、本予備的見解で述べられている、どのオプションと代案がINCによる更なる作業の基礎となるべきかに関する勧告を分かりやすくするため、交渉の過程で、支持、修正、又は削除すべき主要なドラフト条項をまとめた概要版を発表しています。こちらもご覧ください。

はじめに

 ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)は、INC3用にUNEPにより準備されたドラフト条約テキストを歓迎する(訳注:オリジナル英語版日本語訳版) 。このドラフト・テキストはUNEPに提出された広範な各国政府の意見を示しており、したがって、多くのオプション、代案、及びカッコつきの条項を含んでいる。この文書でZMWGは、どのオプションと代案がINCによる今後の作業の基礎となるべきなのかに関する予備的な勧告を提供し、交渉の過程で、支持、修正、又は削除を正当化する主要なドラフト条項を特定する。


他の国際的な合意書との関係(第1条 bis)
 第1条 bis、第1節は、水銀条約は他の条約における権利と義務に影響を及ぼさないであろうと述べている。同様な文言がストックホルム条約の下に提案され拒否されたが、その理由は、国際法を理解する時に、二つの条約が同一の領域を対象としている場合、最初の合意書を知っている締約国によって批准されているのだから、国際的なコミュニティの意図として、最も新しい条約が優先するとみなされるからである。第1節のテキストは、このルールの解釈を無効にする試みと見ることができるので、提案された文言の採用は不必要にWTOの異議申し立てを助長し、水銀条約の供給と貿易条項に影響を与えるかもしれない。ZMWGは提案された第1条bis第1節のテキストを採用しないことを推奨する。しかし我々は、たとえ第1節が削除されても、第1条bis第2節は、水銀条約と他の通商及び環境条約は"相互に支えあう"ことを示すストックホルム条約と同様なテキストを含んだまま残るべきことに留意する。


供給と貿易(第3条−第5条)
 一次水銀採鉱に関して、第3条に二つのオプションが示されている。オプション1は、輸出を目的とする採鉱を0〜5年以内(選択する代案による)に禁止し、全ての水銀採鉱を3〜5年以内に廃止するというものである。オプション2は、採鉱の廃止は締約国が経済的に実行可能であるとする決定に基づいた締約国の裁量に委ね、採鉱しないことに対し補償を求めるものである。一次採鉱は、新たな水銀を世界の汚染問題に加え、それ自身が著しい水銀汚染源なので、最も好ましくない水銀供給源であるため、ZMWGは一次採鉱の廃止期限を最大3年とする第3条のオプション1の採用を支持する。第3条のオプション2は、今後の検討対象から外すべきである。

 第4条において、第2節(b)の代案2は、政府が水銀の輸入に同意する要件を弱め、第4節はバーゼル条約に適切に従わず、条約の貿易条項を損なう。これらの条項は、今後の検討対象から外すべきである。ZMWGは、条約の貿易条項を実施するために必要な国内承認機関を含む第2節bis、及び、歯科アマルガムとしての使用のための水銀の貿易はASGM目的にこの水銀を不法に転用する可能性を最小にするためにカプセルに収められた形状で行なわれることを求める第3節(b)を支持する。

 第5条の非締約国貿易条項は現状では弱く、非締約国への輸出は条約で許される用途に限定されておらず、したがって締約国との貿易条項に比べると厳格さにおいて不適切に劣る。非締約国のための望ましいアプローチは非締約国への輸出を完全に禁止することであるが、少なくとも輸出のための用途は、まさに第6条、オプション1、代案2、c項において製品のために提案されているように、輸出者が免除を受けた後に、条約の下に許される用途に限定されるべきである。


製品(第6条)
 オプション1(ポジティブ・リスト)は、許容用途免除の場合を除いて、リストされた水銀添加製品の製造、輸入又は輸出を禁止する。オプション2は、水銀添加製品の製造は許容用途免除が得られていなければ一般的に禁止されるとするネガティブ・リスト・アプローチをとっている。

 オプション3は、締約国は水銀添加製品を次のカテゴリーのひとつに指定し登録することを提案している。すなわち、(1) 禁止される製品;(2) 移行期間が求められる製品;(3) 実現可能な代替がないために、"欠くことのできない用途(essential use)"とみなされる製品;である。オプション4は、規制されるべきどのような製品リストも提供していないが、代替を促進するための財政的動機を通じて、及び水銀の販売を規制することによって、製品中の水銀使用を制限するもっと自主的なアプローチを推奨している。

 ZMWGは、今後の交渉のためのベースとして、オプション2の採用を推奨するが、それは、ネガティブ・リスト・アプローチが水銀の新たな使用を思いとどまらせ、また非水銀代替が利用可能な場合でも水銀の使用を延長したいと望む製造者やその他に対し、より高い負担を課すという理由のためである。現在示されているオプション3及び4は、今後の検討から外されるべきである。水銀製品廃止への自主的アプローチは、製品パートナーシップが過去6年間このアプローチを追求してきたが非常に限定的な影響しか与えなかったので、意味のある結果を生み出すことはないであろう。どの製品がどのカテゴリーの中に入るのか、いつこれらの決定がなされるのか、どのように製品がカテゴリー間を動くのか等、オプション3の重要な詳細は不明確である又は欠如している。どの製品が廃止の目標とされるべきなのかに関する決定は条約が直接示すべき事柄なので、それを締約国会議(COP)に委ねることは全く受け入れることはできない。

 オプション2は、オプション1の第4節を取り入れ、オプション2の第5節を削除することによって、さらに改良されるべきである。オプション1の第4節は、非締約国がこれらの製品を製造することを思いとどまらせるために、廃止される製品を作るために使用される設備の貿易禁止を提案するテキストを含んでいる。現在、カッコつきのオプション2の第5節(オプション1の第6節で繰り返されている)は、廃止を非義務的なものとし、締約国の一方的な放棄に委ね、したがってオプション4と同じであり、今後の検討から外されるべきである。

 貿易に関し、我々は、非締約国との貿易は少なくとも締約国との貿易のように厳格に規制されるよう、非締約国と貿易をする締約国に許容用途免除を入手することを求めるドラフト・テキスト中の文言を支持する。


プロセス(第7条)
 水銀使用プロセスのための許容用途免除に関し3つの代案が第1節で提案されている。オプション1は、ポジティブ・リスト・アプローチであり、該当するプロセスはAnnex Dにリストされている;オプション2は、ネガティブ・リスト・アプローチであり、これは第8条の下に許容用途免除を受けるプロセスを除いて、全てのプロセス中で一般的に水銀は禁止される。オプション3は、'禁止'、'廃止'、'必要不可欠'のプロセスをリストすることを提案しているが、製品に関する同様な提案のように、具体的には何も提案されていない。

 ZMWGは、プロセスについてネガティブ・リスト・アプローチ(オプション2)を支持し、製品についてのネガティブ・リスト・アプローチに懸念を持っているかもしれない政府に対して、プロセスについてもこのアプローチを支持するよう強く勧める。水銀がかかわるプロセスは少なく、したがって、ネガティブ・リスト・アプローチの下で、カバーされるべきプロセスについて未知のものは少ない。

 ZMWGは、オプション3はあまりにも柔軟性があり過ぎ、カバーされるべきもの及び時期についての詳細が欠如しているので採用しないことを推奨し、またどのような難しい問題も第8条免除プロセスを通じて取り扱うことができるので、我々は"不可欠な用途"カテゴリーがここで必要であるとは思わない。この理由のために、ZMWGは、第7条(又は同じ理由のために第8条、第10節)中のどのような"許容できる又は不可欠な用途" 免除に反対する。

 ZMWGは、非締約国が条約で禁止されるべきプロセス中で水銀を使用することを思いとどまらせるために、水銀添加製造プロセス中で使用される設備の輸出を禁止する第6節のテキストを含めることを推奨する。


免除(第8条)
 オプション1の下に、異なる代案節を持つ二つの全体オプションが示されている。オプション1の下における一式の代案では、締約国会議(COP)のレビューと承認が免除を与えられる前に求められ(第1節、代案2)、免除期間は最大5年であり(第4節、代案2)、免除を求める締約国は、非水銀代替の利用可能性と、できるだけ速やかに水銀の使用を廃絶するために取られるべき措置に関する情報を、提供することが求められる(第5節及び第7節)。

 オプション2は、期限に制限のない免除プロセスを作るものであり、通知を提出すれば無制限の期間の免除を一方的に宣言することができ、財政的援助及び技術移転の提供を水銀使用廃止の条件とすることになるであろう。オプション2のもうひとつの条項は、全ての開発途上国に対して廃止義務を10年間遅らせることになるであろう。

 ZMWGは、オプション2は、あまりにも制限がなく、あまりにも長期間、あまりにも容易に免除が得られるという結果をもたらすので、今後の検討から外されることを推奨する。オプション1の範囲内で、ZMWGはCOPのレビューと承認を規定し、締約国が免除は適切であることをCOPに有意義に示すことを求め(第5節及び7節のカッコつきテキスト)、免除期間を合理的な期間に限定し(第4節、代案2)、非水銀の代替が世界的に入手可能となれば免除の有効性を止める権限をCOPに与える(第9節、代案2)、オプション1の要素を採用することを推奨する(第1節、代案2)。


人力小規模金採鉱(ASGM 第9条)
 ドラフト条約テキストは、3つの関連する対象領域に目を向けていると見ることができる。(1) カバーされる国;(2) 期待される義務;(3) ASGMに関連する水銀輸入と輸出の規制;である。どのような締約国が遵守しなくてはならないかに関し、ドラフト・テキストはふたつのオプションを提示している。ASGM活動を行なっている全ての締約国、又はある量以上の金を生産するASGM締約国である。ZMWGは、いくつかの国にとってASGMに関連する金の生産量を決定することは難かしいいことが分かっているので、生産量閾値アプローチは採用しないことを推奨する。さらに、生産レベルは時間経過の間に著しく変動するかもしれないので、現在は活動を制限している国であっても、今後の状況の変化にしたがって実施することができ、拡張することができるプログラムを適切に持つべきである。

 義務の特性に関して、ZMWGはASGM分野と、その分野における水銀の使用の両方に目を向けるテキストを推奨する。水銀の使用だけに目を向けることは、問題が複雑なので非常に限定的になるであろう。計画の策定に関し、我々は、代案1は条約の下における既存の義務の繰り返しであることを見つけており、したがって、もっと単純明快な代案2を推奨する。同様に、我々は、この領域における可能性ある活動が入念に練られている国際協力に関する第2の代案に、また、もっと単純明快なので代案2及びAnnex Eの中の計画の関連する要素に、賛成する。

 ASGMに関連する水銀貿易の問題に関してZMWGは、代案2に矛盾しない、ASGMのための水銀輸出又は輸入のための許容用途免除(期限付き、量制限:上記参照)を規定する条約テキストを支持する。水銀を使用する大規模な金生産を行なういくつかの国は、直ちには条約の要求に従うことはできないかもしれず、あるいは、全ての必要とする水銀が国内で入手可能となるよう需要を削減するのに時間を要するであろう。第8条免除プロセスは修正して、第9条の下で免除を規定するようにすることができる。ZMWGは、分離した条項とするのが最善なので、Annex DからASGMを削除することを推奨する。


排出(第10条及び第11条)
 二つの全体的オプションが示されている。ひとつは第10条(大気)と第11条(その他の媒体)を分離したまま残す(オプション1)、もうひとつはそれらをひとつの条項に統合する(オプション2)である。この相違はさておき、二つのオプションは大部分が同じであり、重要な本質的な論点は両方のオプションの中でカッコつきのテキストとして示されている。

 カッコつきテキストによって提起された主要な論点は、BAT要求が新規及び/又は既存の施設に対して義務的かどうか、どのくらいの期間施設は要求に応じなくてはならないのか、BAT又はannexは排出制限値を含むことになるのかどうか、そして、BATは無償で提供されるのかどうか、である。

 ZMWGは、可能な限り速やかに、新規及び既存の施設を義務的なBAT遵守義務に従わせる条約テキストの採用を推奨し、したがって、この権限を弱めるであろうどのようなカッコつきのテキストにも反対である。さらに、ZMWGは、義務的な規制義務の一部として、許容範囲制限値(閾値)及び削減ベンチマークを含めることを支持する。したがって、我々は、BAT/BEP措置を実施するために、オプション1の第4節中のカッコつき文言の大部分を含めることを推奨するが、BATは"無料"で誰にでも提供されるべきことを求める文言には反対する。

 Annexesの中で優先すべきカテゴリーに関し、ZMWGは、第9条の下に分離された規制制度を正当とするので、これらの条項にASGMを含めることに反対である。我々は、他の追加的大気排出源カテゴリーを含めることに賛成である。

 全体として、ZMWGは、全ての媒体に対する著しい汚染源を目標とするアプローチ、及び目標とする汚染源カテゴリーについて全ての関連媒体に対応するBATガイドラインを作成することを支持する。もし条項が統合されるなら、全ての媒体関連定義は見直され、なされる変更は複数媒体アプローチが水銀の全ての適切な形態と源に適切に対応することを確実にすべきである。


保管(第12条)
 第12条における主要な論点は、(1)保管の条項の下に、どの水銀がカバーされるのか;(2)保管ガイドラインの開発;(3)国際的及び地域的な調整と協力;である。

 どの水銀が第12条の下にカバーされるのかに関しては、広範なカバー、特にその分類がバーゼル条約の対象とならない水銀を含めることが望ましい。したがって、ZMWGは、今後の議論のベースとして、第1節の代案1を用いることを推奨する。

 ZMWGは、保管ガイドラインの開発をバーゼル条約に任せるという文言には反対であるが、その理由の一部は、バーゼル条約はこの分野において限定された権限しかもっていないからである。この理由のために、ZMWGは、この条項のオプション2を採用しないことを推奨する。ZMWGはまた、これらのガイドラインのためにひとつのAnnexを設けることは、ありそうな長さと複雑さを考えれば、おそらくうまく機能しないことがわかるであろうと信じている。

 調整と協力の問題に関しては、ZMWGは地域の保管計画に役立たせるための事務局の支援を支持するが、全ての締約国又は全ての地域がひとつの保管施設を開発しなくてはならないと示唆している文言には、時期尚早であり不必要であるよう見えるので、反対である。


廃棄物(第13条)
 このドラフト条約テキストは、多くの代案を、またその代案の中にカッコつきのテキストを含んでいるので、単純化することを目的として、ZMWGは廃棄物に関する下記の4つの主要な論点について勧告をおこなう。(1)範囲;(2)国境を越える移動;(3)バーゼル条約との関連;(4)廃棄物の最小化

 範囲については、第10条と第11条の下にカバーされる排出源からの廃棄物がこの条約の下でどのように取り扱われるのかに関して、第10条と第11条の下に作成されるBAT文書と、第13条で作成される廃棄物ガイドラインのとの間に、カバーする範囲にギャップがないようにするために、この条項の中でもっと明快にする必要がある。

 ZMWGは、輸出締約国が輸入締約国の書面による同意を得て、さらには輸入国が環境的に適切な処分施設を持っていることを確認して、先進国間又は途上国から先進国への移動を制限する水銀廃棄物の国境を越える移動に関する第1節(c)中の代案1のテキストを支持する。

 ZMWGは、政策決定又はガイドラインの策定をバーゼル条約に任せるという「第13条にあるようなどのようなテキストにも反対する。ZMWGは、水銀条約は廃棄物政策の策定に主要な権限を保持し、同条約の廃棄物条項と他の条項との間の一貫性を確実にすべきなので、二つの条約間の調整と協力を促進するのがよいアプローチであると信じる。

 第3節は、廃棄物発生を最小にする必要性に関して、比較的弱いテキストを含んでいるので、ZMWGは、締約国会議(COP)に対し、第6条及び7条の下に確立される製品とプロセスの廃絶を考慮に入れつつ、時系列の水銀削減目標を確立することを求めることにより、この条項を強化するよう勧告する。


汚染サイト(第14条)
 二つの全体的なオプションが提示されている。オプション1は、義務的範囲を劇的に変えるカッコつきテキストを含む。カッコつきの中で主要な差異は締約国が汚染サイトを"修復しなければならない"のか"修復に努力しなければならない"のかであり、前者はサイト修復に強制的な義務を生み出すが、後者は単にオプションとするものである。同様に、締約国は協力"してもよい"(自由裁量)か、又は"しなくてはならない"(義務的)かに関するカッコつきテキストがある。オプション1はまた、修復のための利用可能な最良の技術の開発に関する条項を含んでおり、計画を開発する諸国に役に立つであろう。

 オプション2は二つの簡単な文からなる条項であり、政府が汚染サイトを特定するための戦略を開発し、汚染サイトを環境的に適切な方法で修復することを一般的に推奨しているが、何も具体的には要求していない。

 オプション2は締約国又は汚染サイトの被害者の、特に開発途上世界の、必要性に対応していないので、ZMWGは、オプション2を除外することを推奨する。

 上述したように、オプション1の中で、汚染サイトに適切な義務の様態に関して、はなはだしい見解の相違がある。前進させるひとつの方法として、ZMWGは、締約国がサイトを優先付け、緊急事態を特定するために必要な基本情報を得ることができるよう、義務的な目録とサイト特性化要求を含めることを推奨する。
 オプション1の下でのガイドラインの作成に関して、もしINCが本当に被害者の懸念に対応したガイドラインを望むなら、第3節(c)のカッコつき文言、"実行可能な場合には"はテキストから外すべきである。

 汚染者が修復コストと被害者への適切な補償を支払うことを促進するためのテキスト、特に汚染サイトに対応するために財政的責任を割り振ることに関するガイダンスの開発を求める文言が、第3節に加えられるべきである。

 さらに、ガイドラインの開発は、サイト修復で生成される廃棄物の安全な管理をカバーすべきであり、関連するテキストは、第13条に従い修復廃棄物の安全な管理を求めるべきである。最後に、テキストは、地域の集団がサイトの特性と彼等が直面するリスクについて知らされることを確実にすべきである。


財政的及び技術的援助(第15条、第16条)
 ドラフト条約テキストに目を向ける前に、ZMWGは条約が発効する前の暫定的援助の必要性に関して代表者らが留意することを望む。計画と実施作業を開始するために、特にASGMの領域で、基金が必要である。これは、いかに速やかに水銀規制措置が世界の供給、需要、及び排出によい影響を与えるかについて決定するのに重要である。

 二つの代案が財源とメカニズムに関する第15条に示されている。オプション1(様々な代案テキスト付)は、締約国会議の権限の下に運用され、監視されるメカニズムを使用しつつ、いくつかの途上国が遵守と報告に関連する能力構築と技術的及び適切な財政的支援を求めることを認めつつ、途上国がこの条約の目的を達成するよう先進国が支援することを促進する。基金の様態はまだ定義されておらず、第4節及び第5節は、将来、いかに基金の効果についてレビューすることができるかのオプションを持つ、いくつかの並べ替えを含んでいる。

 オプション2は、これらの締約国がこの条約中で規定される規制措置を適用できるよう、財政的及び技術的協力/技術の移転を供給するための先進締約国及び開発途上締約国間の"自立的多国籍間水銀基金"の設立を規定している。先進締約国及びその他のドナー国からの貢献は、開発途上締約国がこの条約で規定される規制措置を遵守することを可能にするために、開発途上締約国が負う全てのコストをカバーしなくてはならない。それから、水銀管理と規制の行動がCOPにより設立される実行委員会によって概要が示される。

 一般的に、ZMWGは次の構造と矛盾しないテキストを推奨する。

  • 財政的メカニズムは、遵守を促進し非遵守を思いとどまらせるために、適切な資源が利用可能であることを確実にするために専用基金を含まなくてはならない。
  • そのメカニズムは、締約国会議の権限とガイダンスの下に運用されなくてはならず、締約国会議はCOP優先度に一致して資源が割り当てられることを確実にし、その資源は加盟国の多様な意思決定と代表を規定する透明性のあるプロセスによって割り当てられる。
  • 財政支援メカニズムは、この条約の義務の遵守を促進し、非遵守を思いとどまらせるように設計され、運用されなくてはならない。
  • 専用基金のガバナンス構造は、開発途上国の代表と運用の透明性を規定しなくてはならない。
  • 各加盟国は、第22条(報告)に従い提出される報告書の中にこの条項の規定をどのように実施してきたかを示す情報を含めなくてはならない。
  • 汚染者負担の原則がこのメカニズムの中でどのように用いられたか反映される。
 一方、ZMWGは、特に民間分野がこの責任を負うことができ、負うべきである遵守を、財政援助次第であるとするドラフト・テキストの文言の削除を勧告する。この種の文言は、多くの形で見られ、提案されたテキスト中に現れる。

 第16条中の技術支援に関して、ZMWGは、オプション1、第1節(カッコつきのNGO文言を含む)を支持し、poison pillsとして(すなわち先進国に技術を"無料"で提供することを求める)第1節bisとオプション3に反対する。また、(COPはそれを行なうことができるが、この種の文言は規制措置のための拘束力のない条項を助長するかもしれず、不必要なので)条約中のパートナーシップに関する文言に反対する。


意識向上、研究と監視、情報伝達(第18条−第23条)
 第18条において、第1節(c)にある "社会的に実現可能" という用語は曖昧であり、情報を交換するための必要性と一致しないので、削除されるべきである。第3節を第4条(国際貿易)に移すという提案は、それが指定された国家機関の役割を貿易に関する情報交換だけに限定するので、却下されるべきである。第4節では、NGOsが条約の策定と実施に果たす重要な貢献を考慮すれば、ZMWGは情報交換のためにNGOsを含めることを強く推奨する。

 第19条において、ZMWGは、公衆が関連性のある情報を提供され、水銀曝露からのリスクをと締約国のそのようなリスクを削減する計画を理解することを確実にするために、(a)項及び(b)項中のカッコつきテキストを含めることを支持する。

 第20条において、ZMWGは、この条約の下に、データ収集に役立たせるためにカッコつきテキストを含めることを支持する。

 第22条において、二つの報告オプションが示されている。ZMWGは、潜在的にどの締約国にも遵守放棄の自己宣告を与えることにより、報告プロセスとそのフォローアップの実施を混乱させ/長引かせ/遅らせるので、ZMWGはオプション2に反対である。ZMWGは、今後の議論のためのベースとしてオプション1を採用することを推奨する。

 第23条において、ZMWGは、条約効果の評価の一部として、第2節中のカッコつきテキストを含めることを支持する。


留保(第33条)
 ZMWGは、締約国がこの条約に対して留保を行使できることに強く反対する。全ての締約国は、効果的に作業を行い望ましい結果を達成するために、条約の全ての条件によって拘束されなくてはならない。我々は、ストックホルム条約は留保を設けなかったことに留意する。


 ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ(ZMWG)は、欧州環境事務局(EEB)とマーキュリー・ポリシー・プロジェクト(MPP)により、2005年に設立された世界の52カ国からの94以上の公益環境健康に関わる非政府組織からなる国際的連合体である。ZMWGは、地球環境中の水銀を最小に削減するという目標をもって、人間活動に由来する全ての水銀の供給、需要、及び排出をゼロにすることを求めて努力している。我々の使命は、水銀の世界的供給と貿易、水銀の世界的需要、水銀の人間活動に由来する排出、及び、人と野生生物の水銀曝露を、実行可能な場合には廃絶し、それができない場合には最小にする強制力のある義務を含む法的に拘束力のある協定書の採用と実施を主張し支持することである。(www.zeromercury.org




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