EHP 118(9) 2010年9月
コメはメチル水銀の主要な曝露源
中国の研究が曝露評価


情報源:EHP_118(9) September 2010 Issue
Rice Is a Significant Source of Methylmercury: Research in China Assesses Exposures
Julia R. Barrett
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/
fetchArticle.action?articleURI=info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.118-a398a


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年9月9日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/research/EHP_Sep_2010_Rice_Source_Methylmercury.html


 採鉱、精錬、石炭燃焼のような人の活動が、バクテリアによってメチル化され強力な神経毒性を持つメチル水銀を生成することができる水銀を撒き散らしている。メチル化するバクテリアは有機物の多い水生堆積物中で栄え、メチル水銀生物濃縮は最終的には、魚を摂取する人間を含む上位捕食者に重大な汚染をもたらす。魚と海産物は世界中でメチル水銀の最も一般的な摂食による曝露源であるが、中国の新たな研究が、計算上の曝露が現在の1日あたり許容摂取量を超える顕著な無機水銀汚染のある地域で、数十億人の主食であるコメがメチル水銀の主要な曝露源であることを示した[EHP 118(9):1183?1188; Zhang et al.]。

 この研究は、辰砂(水銀の原鉱)の豊富な鉱床のある中国内陸部の貴州省(Guizhou)の4つの地域で行なわれた。水銀採鉱と精錬は、ワンシャン(万山)に重大な汚染をもたらしたが、同じく水銀を放出する亜鉛精錬と石炭燃焼が、それぞれウェイニン(威寧)と セイシン(清真)の主な汚染源である。4番目の地域、ライコウ(雷公)は、直接的な水銀汚染源がない地域を代表して選定された遠方の自然保護区である。

 飲料水、食物、及び呼吸を介してのメチル水銀と総水銀曝露がこの4つの地域の成人について評価された。大気、水、魚、肉、家禽のデータは以前にサンプリングしたものであるが、ワンシャン(万山)及びライコウ(雷公)からの農産物(コメ、トウコロコシ、野菜)、飲料水、及びワンシャン(万山)の全ガス状水銀はこの研究で新たに評価された。これらのデータは、一般成人集団の日々の摂取を計算するために共通して使用された。

 全ての地域のコメ、野菜、肉(家禽と魚は含まない)は、総水銀曝露の89-97%に寄与していたが、コメの摂取はメチル水銀の94-96%に寄与していた。魚はほとんど寄与していなかった。当地で摂取される魚のほとんどは、成長が速くメチル水銀の生物濃縮のない餌を食べる養殖魚種である。

 ワンシャン(万山)、セイシン(清真)、ライコウ(雷公)では、平均曝露は、総水銀及びメチル水銀について週当たりの暫定的許容摂取量(それぞれ0.57 μg/kg/d 及び 0.23 μg/kg/d)及びもっと厳しいメチル水銀参照用量 0.1 μg/kg/d以下であった。しかし、ワンシャン(万山)の成人の平均は総水銀量は 1.9 μg/kg/dでメチル水銀は0.096 μg/kg/dであった。メチル水銀はこの地域で推定される総水銀曝露量のわずか 5% であるにも関わらず、、ワンシャン(万山)の成人の7%が週当たりのメチル水銀暫定許容値を超え、34%が参照用量を超える結果となった。

 神経毒性を部分的に相殺するかもしれない魚類中に見出される微量栄養素がコメにはないので、魚摂取に基づくメチル水銀規制値がコメ摂取曝露の集団に適切な保護を与えるかどうか分からない。もし、アジアの他のコメ生産地域に重大な無機水銀汚染が存在するなら、更なる調査で曝露を評価し、それをヒト生物蓄積モニタリング(特に妊婦)及び潜在的な健康影響と関連付けることが重要である。


訳注:関連情報
Science News 2010年4月16日 水銀の驚き:米が危ない 数百万の中国人にリスク、潜在的に他の場所も同じ



化学物質問題市民研究会
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