AGC 2011年7月8日
世界の小規模金採鉱サプライチェーンに
5万の金取扱店がある


情報源:Artisanal Gold Council July 8, 2011
Fifty thousand gold shops in the world's artisanal gold supply chain
by Kevin Telmer, Artisanal Gold Council
http://artisanalgold.blogspot.com/2011/07/fifty-thousand-number-of-gold-shops.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年9月18日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/news/110708_AGC_artisanal_gold_supply_chain.html


 世界中の小規模金採鉱に関わる小規模な金取扱店は約5万店ある。彼らは小規模金採鉱コミュニティへに関わるための玄関口であり、また、小規模金採鉱サプライチェーンにいる多くの関係者のための消費者への最初の接点である。「ケビン・テルマー(Kevin Telmer)、小規模金採鉱協議会(AGC)

金取扱店及びサプライチェーン

 小規模で非公式な金取扱店は小規模金採鉱コミュニティの中でありふれた存在である。彼等は、非公式な金サプライチェーンの中で採鉱者に続くつながりである。彼等は未精製の金又は金−水銀アマルガムを処理し、また彼等は典型的にはロンドン取引に基く価格で採鉱者から未精製の金製品を買う。その価格は携帯電話を通じて採鉱者と店のオーナーの両方がよく知っている。
 ある店では、次のサプライチェーンに売る前に金を24kの純度(99%以上)にまで精製する。これは、しばしば四分法技術を用いて行なわれるが、そこでは、まず銀との合金をつくり、次に金から銅の様な不純物を分離するために硝酸中で処理する。他の人たちは、金の中身を(しばしば水中での重量及び空気中での重量の差によって)評価してから、銀の含有量に基き、未精製金製品を売る。店からの金はサプライチェーン中を通じて地域の買取人や金融業者に売られ、最終的には宝石や純金の延べ棒のように国際的な取扱い業者及び国際市場に至る。下記は、1000人の採鉱者が5つの金取扱店と1つの金融業者及び国際市場と、どのように関わりあうかを示す70%モデルと呼ばれるひつのモデルである。



First meeting of the OECD‐hosted
working group on gold 4 May 2011
Kevin Telmer, AGC
パワーポイント資料(クリック)

この図は、OECD主催の金に関するワーキング・グループの
第1回会合で Telmer K. (2011, May 4) が発表したものである。

OECD due diligence guidance for responsible supply chains
of minerals from conflict affected and high-risk areas.
Presentation at: http://bit.ly/lQB1hE.

情報交換の要としての金取扱い店

 ひとつの金取扱店は多くの採鉱者と情報交換をするので、店は採鉱コミュニティとの関係と情報交換のラインを確立するための中心として機能することができる。彼等は、健康、より良い採鉱法や環境的慣行、及び公的/合法的アプローチのような問題に関する教育を提供する中核点になり得る。したがって、世界中にどのくらいの数の金取扱店があるのかという問いは、どのように情報を広め、又は支援を提供するかを考えるときに重要になる。

金取扱い店の数

 多くの著者によるフィールドワークからの観察に基いた最初の見積りが Telmer and Veiga (2009)により記録され、www.mercurywatch.orgで更新されているが、それは以下の通りである。

 年間350トンの金を製造する1000万人のASGM採鉱者がいるとして、もしそれぞれの金取扱店が200人の採鉱者と取引するとすれば、UNIDOの世界水銀プロジェクト(又は http://www.globalmercuryproject.org/)への報告書で言及されているように、そして上記の70%モデルに従うと、年間約 7kgの金を取り扱う店が概略 5万のあることになる(2011年の金価格$1,500/ozで合計$338,000/店となる)。もちろん、各店で対応する採鉱者の数には変動があるが、それでも数万の金取扱店があることは明らかである。

金取扱店と水銀汚染

 店の数はまた、小規模金採鉱により引き起こされる環境的影響を評価し、それらを削減するための解決策をどのように実施し優先付けるかを検討するために役に立つ。例えば、金取扱店は、金を回収するために水銀−金のアマルガムを加熱するので(訳注1)、大気への水銀排出の大きな点源となっている。したがって、水銀汚染を低減する第一段階として、金取扱店は排出制御装置を設置するのに非常によい場所である。長期的な目標は水銀を使用しない金鉱石処理であるが、水銀ゼロ使用への移行には、社会的・経済的システムの抜本的な変革、訓練、資本投下、法的措置などが必要であり、したがって、時間がかかる。水銀ゼロ使用への移行は行なわれつつあるが、排出規制は水銀汚染を早急に削減すること、及びコミュニティとの良好な関係の構築求めている。第一段階は水銀排出の削減であり、第二段階がゼロ排出である。

 世界中の5万の金取扱い店で排出制御をすれば、水銀汚染削減に対して迅速で大きな貢献をすることができるであろう。いくつかのグループがこのような活動を行なっている。例えば、人力金採鉱協議会(AGC)は欧州環境事務局(EEB)及びAGENDAと協力してタンザニアで水銀排出削減プログラムを実施中であり、米環境保護庁(USEPA)、ブラックスミス研究所及び Yayasan Tambuhak Sinta はインドネシアでプログラムの実施を開始しており、UNIDOと米EPAは南アメリカでプログラムを実施中である。


訳注1
ペルーでは町の人々と金精製作業者が水銀に曝露

 プエルト・マルドナドの金ショップ(金取引兼精製作業場)では、作業者らが鉱石の塊を熱しているので、水銀蒸気が作業場に漂い、次に町の人々で賑わう通りに流れて行く。研究者らは金ショップの水銀レベルを測定したが、高すぎて濃度計は振り切れて測定できなかった。作業場の外では、大気中の水銀濃度は安全ではないレベルであった。
 簡単なフィルターで金ショップからの水銀放出を著しく削減できる(右の写真)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る