2011年10月31日(月)〜11月4日(金)ナイロビ
水銀条約第3回政府間交渉会議(INC3)
IISD レポート


情報源:International Institute for Sustainable Development (IISD) Monday, 7 November 2011
SUMMARY OF THE THIRD MEETING OF THE INTERGOVERNMENTAL NEGOTIATING COMMITTEE
TO PREPARE A GLOBAL LEGALLY BINDING INSTRUMENT ON MERCURY:
31 OCTOBER - 4 NOVEMBER 2011
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紹介:安間武 (化学物質問題市民研究会)
掲載:2011年11月13日
更新:2011年12月 3日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC3_CACP/INC3_IISD_Report.html

INC3における本会議での討議を報告したIISDの報告書の一部を抜粋/抄訳して紹介します。

地域グループ/各国/NGOの一般的意見
条項毎の地域グループ/各国/NGOの発言
序文第1条 目的第1条 bis. 他の国際的な合意との関係第2条 定義第3条 供給第4条及び5条 水銀の国際貿易;及び水銀の非締約国との貿易第6条 水銀添加製品第7条 水銀が使用される製造プロセス ▼第8条 bis. 途上国の特別な状況第9条 人力小規模金採鉱(ASGM)第10条、第11条、第11条alt.大気排出;水と陸地への放出;非意図的排出と放出第12条 保管第13条 水銀廃棄物第14条 汚染サイト第15条 財源とメカニズム第16条 技術的援助第16条 bis. パートナーシップ第17条 実施第18条 情報交換|第19条 公開情報、意識向上、教育|第20条 研究、開発、監視第20条 bis. 健康の側面
INC3の簡潔な分析 (2011年12月3日)
条約文書のスリム化断層線オーナシップ ここからどこにいくのか?




■地域グループ/各国/NGOの一般的意見
  • ナイジェリアはアフリカ地域Gを代表して、新たなドラフトに人の健康に関する条項が含まれたことを歓迎し、ワウチンでのチメロサール(thimerosal)の使用及び歯科アマルガムでの水銀使用の段階的廃止を要求し、水銀貿易の削減と途上国への水銀廃棄物の投棄を禁止を要求し、途上国への財政的及び技術的支援を協調した。

  • 欧州連合(EU)は、全体としては合意できなくとも、一部の論点については今週中(INC3期間中)に合意に達することができることを望むと表明し、自主的な条項よりも法的に拘束力のある条項を確立することの重要性強調した。

  • 日本はアジア太平洋地域Gを代表して、条約は現実的で実行可能な方法で人の健康と環境を保護すべきであるとし、途上国における資金と利用可能な技術の欠如を考慮することを求め、製品とプロセスの問題を優先するよう提案した。

  • エクアドルはラテンアメリカ・カリブ海諸国地域G(GRULAC)を代表し、及びロシアは中央・東ヨーロッパ地域Gを代表して、新たなドラフト・テキストを交渉のベースとすることを支持し、GRULAC は実現可能な行動と規制措置の重要性を強調し、モントリオール協定書多国間基金(MLF)のような財政メカニズムの確立を要求した。

  • アメリカは、特に、需要と供給、製品とプロセス、排出と放出、人力小規模金採鉱(ASGM)に注力することを提案した。

  • 中国は、UNEP決議GC25/5に規定された原則が交渉を手引きすべきとし、能力構築、技術移転、財政メカニズムの重要性を強調した。

  • エジプトはアラブ地域Gを代表し、インドネシアに支持されて、共通だが差異ある責任(common but differentiated responsibilities)原則を強調し、財政メカニズムを確立すること支持した。インドは、財政メカニズムは開発途上国への財政的及び技術的援助の条項と関連付けられるべきである述べた。ヨルダンは、開発途上国が約束したことを実施することができるよう財政的及び技術的援助の必要性を強調した。ブラジルは、予測可能で適切なリソースの準備は法的に拘束されるべきであると述べた。

  • 北極会議(Arctic Council)を代表してスウェーデンは、北極における水銀濃度の増大を強調し、この問題に対応するために世界の緊急な行動の重要性を強く訴えた。セーシェル(注:インド洋西部の島群から成る共和国)は大気及び土壌中の水銀イ対応するために法的規制措置を求めた。ナイジェリアはASGMにおける水銀の問題が優先事項であるとし、この問題に対応するUNEP水銀パートナーシップを褒め称えた。

  • アルジェリアは、条約割作成における柔軟性、責任、及び公平を求め、条約への遵守は、適切な財源と技術移転の条項が条件であると述べた。パキスタンは、各国の能力の相違を考慮した義務的及び自主的アプローチの両方を含む柔軟な実施アプローチを求めた。

  • スイスは、討議のためのよい出発点を提供するものとして包括的なテキストを準備したことについて事務局を称賛し、コンタクト・グループは”水銀に関する法的拘束力のある条約の進捗を達成するために”最も効果的な方法”であると述べた。

  • フィリピンは、最近のバーゼル条約締約国会議(COP)で経験した”多国間主義(multilateralism)の成功”を強調し、そのプロセスの経験を学ぶよう政府代表者等に求めた。イラクは、条約を確立するために他国と肩を組んで取り組むと述べて、水銀交渉に対するイラクの支持を強調した。

  • メキシコは、水銀に関し情報のギャップがあることに言及しつつ、INCに対して事実に基づかない条約を作らないよう注意を喚起した。ノルウェーは、全ての排出源からの水銀の迅速で著しい削減を達成することによってのみ条約が成功するであろうと強調した。日本は、1年半以内に法的拘束力のある条約を完成させなくてはならないことに言及しつつ、INC3における交渉の加速を求めた。

  • 世界保健機関(WHO)は、排出とASGMに対応することによって最大の効果を得ることができると述べ、公衆衛生に必須の用途のための水銀利用の維持を求めた。ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループは、積極的で、拘束力のある規制措置、必要な財政的援助、及び条約テキストに遵守メカニズムを含めることを求めた。国際POPs廃絶ネットワーク(IPEN)は、”柔軟性”は気乗りのしない措置の見せかけの言葉としてしばしば使用され、許容される使用はしばしば従来通りの何も変わらないシナリオになり、自主的措置は不遵守を招き、財政的援助をしないことになると述べた。世界先住民幹部会(Global Indigenous Peoples' Caucus)は、先住民は不均衡に影響を受けていることに言及しつつ、水銀汚染の人権の側面を考えるよう政府代表者等に求めた。

  • 島持続可能連合(Island Sustainability Alliance)は、全ての規制措置を単一の条約の中に含めることを求めた。水銀を使用しない薬品連合(CoMeD)は、水銀含有ワクチンの、特に子どもへの健康影響を強調し、水銀条約を通じてそのようなワクチンを廃絶するよう訴えた。責任ある採鉱連合は、800万の人々がASGMで生計を立てていることに言及しつつ、ASGMにおける責任ある採鉱を主張した。
■条項毎の地域グループ/各国/NGOの発言

▼序文(preamble)
  • GRULACは、序文に含まれる見解を広げることを求め、事務局に関連するアイディアをまだ提出していない代表団は提出するよう要求した。ハイチは序文中に説明が必要であることを強調した。

  • EU、アフリカG、スイス、ノルウェー、アルジェリア、アメリカ、日本、カナダ、中国、オインド、インドネシア、マレーシアは、序文に関する議論は条約の条項の議論の後まで延期されるべきであると述べた。アフリカGは議論を延期することに賛意を示した。

  • チリは、序文は本会議中又は非公式な協議での討議を求めた。ブラジルは、メキシコの支持を得て、序文は義務に関する協議のための枠組みを作る倫理的原則を明確にする基本であると強調した。
▼第1条 目的
  • 目的に関し、スイス、日本、カナダ、インド、インドネシア、マレーシアがテキストの議論を将来の会合へ延期するよう提案し、スイスは、このセクションは”場所確保”のためだけであるとみなされるるべきである述べた。

  • ブラジル、アメリカ、ナイジェリア、オーストラリア、カナダは、水銀とその化合物の人に由来する放出から人の健康と環境を保護することを求めるオプション1を支持すると述べた。

  • アルジェリア、チリ、中国、インド、メキシコ、インドネシア、マレーシアは、条約の目的は水銀及びその化合物の放出への曝露から人の健康と環境への潜在的などのような有害影響をも最小化し、最終的には防止することであるとするオプション2を支持した。チリは、オプション2は条約を強化すると強調し、中国は条約の目的は財政メカニズムの確立を通じてのみ達成できると強調した。

  • イランは二つのオプションを統合することを提案し、この問題をコンタクト・グループで議論することを提案した。イラクは、この目的が世界的なものであり、すべてのリスクを含むものであることを希望すると述べた。

▼第1条 bis.  他の国際的な合意との関係
  • ブラジル、チリ、メキシコはこのパラグラフの適切な場所に関してさらに議論することを求めた。この条項は特に、条約の規定はどのような既存の国際的合意から生じる締約国のどのような権利と義務にも影響を与えてはならならず、この条項は、この条約と他の国際的な合意との間に階層を生成することを意図していないと規定している。

  • ノルウェーとアメリカの支持を得てスイスは、このセクションに”もっと混乱をもたらす”として、このパラグラフを含めることを支持しなかった。

  • オーストラリアは、このパラグラフの有用性について疑念を表明したが、インドネシアと一緒に、含めることを喜んで議論すると述べた。インドもまた、多国間環境条約(MEAs)の中に階層はないと言及しつつ、このパラグラフの必要性について疑いを表明した。イラクは、MEAsの間に矛盾や重複があってはならないと述べた。

  • カナダは、これはストックホルム条約の規定と同じであることに言及し、このパラグラフの議論はこの条約のテキストがもっと成熟するまで延期されるべきであると述べた。
▼第2条 定義
  • いくつかの国は、低水銀含有量、人の活動に由来する用途、汚染サイト、水銀添加製品のような概念の正確な定義の必要性を強調し、オーストラリアはこの問題に関する広範な作業が必要であろうと言及した。カナダは、定義については少ない方がしばしばよく、時には何も定義しないのが最良であるが、ある定義は重要であり、議論されるべきであると述べた。

  • カナダと中央・東ヨーロッパ諸国を代表してチェコ共和国は、関連する条項とともに議論されるべきであると述べた。スイスは、 UNEP(DTIE)/Hg/INC.3/CRP.1に追加の定義を導入したとことに言及し、更なる議論を求めた。
▼第3条 供給
  • 月曜日午後、議長ルグリスは水銀供給源と水銀の国際貿易に関する議論を開始し、この条項は二つのオプションを含んでいると言及した。オプション1は、領域内に一次水銀採鉱を持つ各締約国は、特に一次水銀採鉱から生産されるどのような水銀又は水銀化合物の輸出を禁止し、一次採鉱からの水銀又は水銀化合物の販売、流通、又は使用を許さないことを求めている。オプション2は、領域内に一次水銀採鉱を持つ締約国は、この条約の条項に従って一次水銀採鉱から生産される水銀又は水銀化合物の輸出を許すことを提案している。

  • EU、アフリカG、韓国、フィリピン、スイスはオプション1の支持を表明した。アフリカGは、開発途上国が義務の実施を促進するために財政的及び技術的援助のための規定も含めるべきであると言及した。

  • チリとインドはオプション2を支持した。チリはアルジェリアの支持を得て、需要があり経済的に実現可能な代替がない場合には輸出は許されるべきであると強調した。

  • 中国は、”需要が供給を決定する”と述べ、一次採鉱の規制を求めた。ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループは一次水銀採鉱は停止されるべきであり、水銀貿易は限定された用途だけに許されるべきであると述べた。IPENは、一次水銀採鉱と輸出の廃絶を支持した。

▼第4条及び5条 水銀の国際貿易;及び水銀の非締約国との貿易
  • チリは、共通だが差異ある責任、及び開発途上国の状況の考慮を含んで、国際貿易に関する条項に指針原則を導入するよう求めた。

  • 輸出問題に関する広範な見解を持つとして、アメリカは第4条及び5条の削除を求めた。アフリカGはこれらの条項を保持することに賛同したが、一方スイスはこれらの条項の”合理化の可能性”に言及した。

  • 中国は、水銀貿易の廃絶に反対した。インドは、水銀の国際貿易における事前同意(PIC)手続きの採用を支持した。
▼第6条 水銀添加製品

  • EUは、水銀製品は廃止され代替が導入されるべきとする強い信号を条約は市場に送るべきであると強調した。

  • アジア太平洋Gは、水銀添加製品に関する追加情報が必要かも知れず、開発途上国の必要性の考慮を求めた。

  • 韓国、アメリカ、インドネシア、オマーンはオプション1に示されるポジティブ・リスト アプローチに賛同したが、これは、条約に規定される場合を除いて、Annex C にリストされた水銀添加製品の製造又は輸入を許してはならないとし、Annex C にリストされた水銀添加製品の輸出をある目的のためにだけ許すというものである。

  • スイス、ノルウェー、アフリカGはオプション2に示されるネガティブ・リスト アプローチに賛同したが、これは、Annex C にリストされる許容用途を除いて、水銀及び水銀含有製品に関する一般的な禁止を規定するものである。

  • ワクチン中の水銀の重要性に言及しつつ、ブラジルはオプション3を支持したが、これは特に、開発途上国及び移行経済国がそれらの使用を廃止するために移行期間を規定し、非水銀代替が世界的に手ごろな価格で入手可能ではない又は利用可能ではない製品を”必須用途(essential use)”カテゴリーと規定するものである。

  • アルジェリア、チリ、インド、中国、パキスタンは、オプション4を支持したが、これは特に、締約国は水銀添加製品と水銀又は水銀化合物を使用するプロセス中の水銀含有量を制限しなくてはならないと規定するものであり、この条約の発効後のある年以内に、締約国はこの条約の非締約国から水銀添加製品の輸入を禁止又は制限する措置を導入してもよいとするものである。インドは、締約国は製品とプロセス中の水銀含有量を制限するための自主的な措置を採用すべきであると述べ、財源、技術移転、能力構築の必要性を強調した。中国は、オプション2以外の他のオプションを検討する意思を表明した。

  • WHOは、水銀の医療分野での追加的な情報を共有することを申し出た。

  • セーフマインド(SafeMinds)は、ワクチン中の水銀に関する情報が不十分であると述べ、INC4でのレビューのためのガイダンスの素案を作るために、WHO、関連製造者、その他と一緒に作業することを提案した。またゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループ及びヘルス・ケア・ウイズアウト・ハーム(HCWH)と共にオプション2の支持を表明した。水銀を使用しない薬品連合(CoMeD)は、代替が利用可能であるとして、ワクチン中の水銀含有チメロサールの使用禁止を主張した。

  • 水銀を使用しない歯科のための世界連合(World Alliance for Mercury-Free Dentistry)は水銀に関する法的拘束力のある条約の開発を支持した。

  • 世界歯科協会(World Dental Federation)は、歯の治療における水銀使用への段階的削減アプローチを支持した。国際歯科研究協会は、歯科アガルガムに対する既存の代替は理想的ではないと結論付けたWHO報告書を強調し、更なる研究を求めた。

  • 水銀を使用しない歯科のための世界連合は、WHOの主張とは異なり、開発途上国にとって経済的に実行可能な代替は入手可能であると述べ、”アマルガム時代”を終らせることを求めた。

  • 欧州ランプ会社協会は、この代案は柔軟で調和のとれたアプローチを提供するということを強調しつつ、オプション3に従いランプを規制することを勧告した。
第7条 水銀が使用される製造プロセス
  • EUは、水銀は製造プロセス中で使用されるべきではないということを市場に強く信号を送るダイナミックなプロセスを要求し、優先プロセスとして塩素アルカリ製造及び塩化ビニル・モノマー(VCM)製造に言及した。ノルウェーは、工業プロセス中での水銀の使用は廃止されるべきであると述べ、日本に支持されて、工業プロセス中での触媒としての水銀使用が Annex D に追加されるべきであると述べた。日本は、工業プロセス中での水銀使用を規制することは本質的に重要であり、塩素アルカリ製造及び VCM 製造での水銀使用の禁止を支持した。世界塩素協議会(World Chlorine Council)は、政府代表者等に塩素アルカリ施設は水銀使用から水銀を使用しない製造へ移行中であると知らせ、条約は自主的な水銀廃止を許すよう提案した。

  • 中国は、水銀を使用しない代替は、アセチレンベースの VCM 製造には容易には利用可能ではなく、このプロセスについては許容用途免除を求めた。

  • スイスと韓国は、許容用途免除に従う場合を除いて製造プロセス中での水銀使用の一般的な禁止を求めた。

  • タイは、許容用途免除に従う場合を除いて製造プロセス中での水銀使用の一般的な禁止を求めるオプション1を支持した。彼女は、それは、どの産業が目標となるかを明確に述べる”曖昧さのないアプローチ”であると述べた。モロッコは、Annex D は、全ての獣医用及び医学用機器を含むよう拡張されるべきであると提案した。

  • 欧州ランプ会社協会は、オプション2はランプ製造者らに不利益であろうと言及し、オプション1を支持した。

▼第8条 bis. 途上国の特別な状況
  • ルグリス議長は、途上国の特別な状況に関する第8条 bis.の議論を延期するよう提案した。日本に支持されて、EUはいくつかの諸国のための別個の制度の確立を支持することはできないと述べて、この条項を含めることに反対した。中国は提案されている条項の支持を表明したが、議論を延期することには同意した。

  • 水曜日午前中、ルグリス議長は製品とプロセスに関するコンタクト・グループを設立し、Katerina Sebkova (チェコ共和国) と Mohammed Khashashneh (ヨルダン) を共同議長に指名した。このグループは、水曜日と木曜日に会合を開いた。金曜日に、INC3は、水銀添加製品と水銀が使用されているプロセスの可能性ある廃止移行計画に関する事実情報をINC4 までの間に準備するよう事務局に要求した。ルグリス議長は、この情報はINC期間中に表明されたアイディアと、モントリオール議定書及びストックホルム条約を含む他の多国間環境条約(MEAs)における経験を含むであろうと説明した。ルグリス議長は、これは新たな法的文書ではなく、移行可能性のためのアイディアを供給するであろうと強調した。

▼第9条 人力小規模金採鉱(ASGM)
  • GRULACを代表してエクアドルは、ASGMとその規制の環境的、経済的、及び社会的影響に注力する必要性と、この分野における水銀使用の削減は能力構築、技術移転、及び財源に依存するということを強調した。

  • 日本はASGMの定義のさらなる精査を求めた。

  • とられるべき措置に関し、ノルウェーは代案1の支持を表明したが、そこでは特に次のことを規定している。ASGMのための水銀又は水銀化合物の輸入又は回収、リサイクル、再生利用を防止する措置;国家行動計画(NAPs)の策定;特定の実施方法の禁止;ASGMにおける水銀の放出と曝露を削減する実施方法の推進;水銀を使用しない金採鉱のための基準の導入。

  • EUは、水銀の医療用途に関する一般的な禁止ではASGMにおける水銀使用を規制するのに十分に効果的ではないと述べ、世界の水銀市場のサイズを削減する必要性を強調した。

  • アフリカGは、代案2を支持したが、そこでは国家行動計画(NAP)の策定と実施を求めている。

  • ブラジルは、ASGMにおける水銀規制の自主的な条項の積極的な役割を国際的な財政的援助と関連させて強調し、条約発効後15年以内にASGMにおける水銀使用の廃止を提案した。

  • アメリカは、この分野の経済的重要性を認め、義務的な規制措置と国家行動計画(NAPs)を支持した。スイスは、自主的及び義務的措置の組み合せを支持し、この分野の公式化と組織化の重要性を強調した。UNIDOは、ASGMに関連する全ての問題を第9条に統合することを提案した。

  • IPEN は、義務的な条項が人の健康、特に女性と子どもを保護するために必要であると述べた。ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループは、国家行動計画(NAPs)の策定が水銀条約の重要な要素であると述べた。世界公衆衛生協会協議会は条約中でASGMでの水銀使用の健康影響を具体的に記述することを提案した。

  • ルグリス議長は、Donald Hannah(ニュージランド)及び Antonio Ricarte (ブラジル)を共同議長とするASGMに関するコンタクト・グループを設立することを提案し、政府代表者らは同意した。同コンタクト・グループは、月曜日、火曜日、水曜日、木曜日に会合を開いた。

  • 木曜日の夕方、ASGMコンタクト・グループ共同議長 Hannah は、UNEP(DTIE)/Hg/INC.3/CRP.15 を紹介したが、それはINC4でさらに討議されるべきテキストを含んでいる。グループ内にあるいくつかの未解決の相違について言及し、関連国に対してこれらの懸案事項に対応するために協力するよう働きかけた。彼は、テキストは、ASGMではなく、水銀に焦点を合わせており、水銀使用が顕著ではない諸国を免除するメカニズムを提供することを強調した。Hannahは、この条項は各国に国家行動計画(NAP)を策定する義務を課するものであり、Annex E は国家行動計画(NAP)に何が含まれるべきかに関する交渉結果のテキストを含んでいると述べた。Hannah は、コンタクト・グループは、このテキストは以前の条項及びそのアネックスを置き換えて、ドラフト条約の第9条のテキストとすることを勧告した。政府代表者等はこの勧告に同意した。
▼第10条、第11条、第11条alt. 大気排出;水と陸地への放出;非意図的排出と放出
  • 事務局はこのセクションを火曜日に次のように紹介した。二つのオプションを含む。オプション1は大気排出と水と陸地への放出を二つの条項に分けている(第10条、第11条)。オプション2は、排出と放出をひとつの条項に統合している(第11条alt.)。

  • EUは、オプション1は、最良の議論のベースを提供すると述べた。彼女はまた、非意図的な放出を管理するために拘束力のある措置が必要であり、自主的な措置では不十分であると強調しつつ、大気排出に注力することを支持した。アメリカは、排出と放出は重要な問題であり、別々に検討されるべきと言及し、オプション1を交渉のベースとして用いることを支持した。

  • アフリカGは、”著しい総水銀量排出(significant aggregate mercury emissions)”の定義の説明を求め、ブラジル、インド、イラン、中国は、大気総水銀排出量は人口の多い国を不利にすることに目を向けて国を分類することを強調した。

  • ブラジル、メキシコ、ハイチ、ドミニカに支援されてGRULACは、オプション2(第10条と11条の統合)の支持を表明した。ハイチとチリは、”非意図的排出”のもっと良い定義を求めた。

  • アジア太平洋Gは、利用可能な最良の技術(BAT)及び環境的に最良の慣行(BEP)に関するガイドラインの必要性を強調し、財政的援助と技術移転の重要性を力説した。インドネシアは、第10条と第11条を実施することによる社会経済的影響を考慮するよう政府代表者等に求めた。キューバは、排出と放出に目を向けた柔軟な戦略に賛意を示し、財政的援助の必要性を強調した。

  • ノルウェーは、どちらのオプションにも明確な好みはないと述べ、アネックスに BAT/BEPガイドラインを含めることを支持した。

  • 日本はオプション1の支持を表明し、従来の大気規制措置がBATガイドラインの一部をなすべきと述べ、国内総生産単位当りの総水銀排出量を用いることを提案し、排出を管理するためのツールのひとつとして排出制限値を強調した。

  • インド、韓国、カナダ、スイスはオプション1を支持した。インドは、第10条の条項はBAT/BEP 原則に基くべきであり、総水銀排出に目を向けた時に気候変動体制を侵害することを避けるよう政府代表者らに注意を喚起した。韓国は、BAT/BEPガイドラインは既存の排出源ではなく新規のものに適用されるべきと強調した。

  • イラク、アルジェリア、マレーシア、イラン、ベネゼイラは、石油及びガス分野の製品製造およびプロセス装置からの排出は総量が少ないので、これらの装置への言及を削除するよう求めた。

  • 中国は、Annex F(大気排出)中の水銀排出源を含めることへの段階的なアプローチを求め、自主的なアプローチが成功するであろうと述べ、排出の削減を促進する柔軟性のあるシステムの必要性を強調し、特定の排出の世界及び国内の影響を考慮して議論すべきと述べた。

  • ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループは、 新規及び既存の施設を可能な限り速やかに義務的措置の対象としなくてはならないと強調した。

  • IPENは、水銀汚染の影響は全体論的に義務的な方法で対応される必要があることを強調し、全ての国が国家行動計画(NAP)を作成すべきであると述べた。イヌイット北極圏協議会(Inuit Circumpolar Council)と世界先住民幹部会(Global Indigenous Peoples' Caucus)は、新規及び既存の排出源への要求としてBAT/BEPを定義して含めること;低い排出制限を設定すること;財政的及び技術的必要性の概要を示した国家行動計画(NAP)を提出することを政府代表者等に強く求めた。

  • 火曜日に、この問題に関して作業するためにRina Soemarno(インドネシ)とJohn Roberts (イギリス)を共同議長とするコンタクト・グループを設立した。同グループは、火曜日、水曜日、木曜日に会合をもった。金曜日に、ルグリス議長は、共同議長は第10条及び11条の可能性ある要素へのアプローチを開発するためにINC4までの間に作業をするであろうと述べた。
▼第12条 保管(11/11/14)
  • 事務局は、保管に関する第12条は二つの提案を含んでいると述べた。オプション1 は、環境的に適切な水銀の保管に関するアネックスを含めることを要求し、供給源からの水銀を強調するものである。オプション2 は、アネックスを含まない。

  • 日本は、保管における BAT/BEP ガイドラインの適用の必要性を強調し、アフリカGとともにオプション1 を支持した。

  • EU、ノルウェー、アメリカは、商品水銀と廃棄物水銀を明確に区別する必要性を強調した。アメリカは、第13条は水銀廃棄物のを保管、処理、処分を管理すべきであり、商品水銀に対応する別の保管条項を求め、保管能力が条約の効果に本質的に重要であると強調した。カナダは、保管と廃棄物に関し別個の討議を求めたが、個別の条項の範囲が決定された後に、この課題を統合することを否定するものではないと述べた。

  • ノルウェーは、国家行動計画(NAPs)を開発し、水銀と水銀廃棄物の環境的に適切な保管のための基本的な標準を確立することの必要性を力説し、EUはバーゼル条約との重複を回避する一方で、水銀と水銀廃棄物の環境的に適切な保管の重要性を強調した。アジア太平洋Gはバーゼル条約との一貫性の重要性を強調し、保管のための能力の必要性を力説した。

  • ジャマイカは、水銀廃棄物の環境的に適切な保管はバーゼル条約の責任範囲であると強調しつつ、オプション2 の支持を表明した。チリは、水銀の仮(temporary)及び暫定的(interim)保管について懸念を表明し、バーゼル条約が余剰水銀(residual mercury)に対応するために用いられるべきであると述べた。フィリピンは、保管に関し将来の水銀条約と水銀廃棄物のバーゼル条約の規定との合理化の必要性を強調したが、将来の水銀条約もまたバーゼル条約から残されたどのようなギャップも埋めなくてはならないと言及した。

  • 中国は、余剰水銀(surplus mercury)管理のための地域計画は国の主権と矛盾するかもしれないことに言及し、先進国と途上国の異なる状況を考慮することを求めた。

  • ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループとIPENは、環境に適切な水銀保管を支持し、水銀条約の下で保管ガイドラインを開発するよう求め、国際的及び地域の調整と協力の必要性を強調した。
▼第13条 水銀廃棄物(11/11/14)
  • アフリカグループは、水銀貿易と水銀含有製品の途上国への投棄を制限する必要性を強調し、水銀廃棄物は特に環境的に適切な方法で収集され、輸送され、処分され、環境的に適切な処分の目的を除いて国境を越えて輸送されないことを確実にする措置を支持した。彼等は、第2節、代案2の支持を表明したが、そこでは、締約国は水銀廃棄物と廃棄物となる水銀添加製品の環境的に適切な管理とみなされる方法を記述するガイドラインを開発することを求めている。

  • ノルウェーは、水銀廃棄物の環境的に適切な管理に関する要求はバーゼル条約ガイドラインと矛盾しないことの必要性を強調した。ウルガイは、開発途上国における水銀廃棄物の仮保管に関連する課題を強調した。日本は、バーゼル条約が水銀からの廃棄物の環境的に適切な管理を引き受けることを提案した。
▼第14条 汚染サイト(11/11/14)
  • EU、ペルー、アメリカ、アフリカG、アルゼンチン、日本は、オプション1 に賛意を示したが、そこでは、締約国は特に、汚染サイトを環境的に適切な方法で修復することを求め;財政的及び技術的援助を通じることを含んで、修復のための戦略の開発及び実施への協力を求め、締約国(COP)が汚染サイトを特定し評価し水銀汚染を防止し、汚染サイトを管理するためのガイドラインを開発することを求めている。

  • 日本は、汚染サイトの修復、復帰、封じ込め、又は”管理”は個別のケース毎に行われるべきであると述べた。

  • イラクは、ヨルダンに支持されて、汚染サイトの目録を求め、これらの目録の開発を促進するために財政的及び技術的援助の必要性を強調した。アジア太平洋Gは、財政的及び技術的援助が汚染サイトの問題に対応するために必要であることを強調した。

  • アメリカは、汚染サイトの義務的修復のどのような提案も実施するのにコストがかかり過ぎ、他の重要な分野、特に大気排出に向けるべきリソースを取り上げることになるであろうと言及し、汚染サイトのための国家レベルでの規制を求めた。

  • ”汚染者負担原則”に関してギニアは、いくつかの途上国では汚染者が国を去ってしまい、彼らは最早汚染サイトに責任を持たないことを政府代表者らに伝えた。日本の化学物質問題市民研究会(Citizens Against Chemicals Pollution)は、廃棄物と汚染サイトに取り組む時には”汚染者負担の原則を適用することの必要性を含んで、”水俣の悲劇の経験を適用することを政府代表者らに求めた。

  • ルグリス議長は、Anne Daniel (カナダ) と Abiola Olanipekun (ナイジェリア) を共同議長とする保管、廃棄物、汚染サイトに関するコンタクト・グループを立ち上げた。同コンタクト・グループは、火曜日、水曜日、木曜日に会合をもった。金曜日に共同議長ダニエルは、同グループは共同議長のテキストを議論のベースとして使用したことを強調しつつ、共同議長への提出文書のアネックス(UNEP(DTIE)/Hg/INC.3/CRP.21)(訳注1)を含む同グループの作業を発表した。彼女は、INC3 後に対応すべき未解決の問題は、作業がバーゼル条約と重複しない又はそれに反しないこと;”処分”という用語を定義すること、及び”廃棄水銀以外の水銀”という言い回しを再検討すること含むと述べた。彼女は、これらの問題は、INC4で解決されるであろうと述べた。共同議長オラニペクンは、著しい進捗が得られたと言及し、政府代表者らがコンタクト・グループでの作業で示した協力的な態度に感謝の言葉を述べた。

  • ルクリス議長は、アネックス中で示される新たなテキスト(訳注1)は現在のドラフト文書中のテキストに置き換えることを提案し、政府代表者らは同意した。

訳注1:第14条 汚染サイト(11/11/14)
新たなテキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.3/CRP.21)

  1. 各締約国は、水銀及び水銀化合物により汚染されたサイトを特定し評価する適切な戦略を開発するよう努力しなくてはならない(shall endeavour to)。

  2. そのようなサイトにより引き起こされるリスクを削減するためのどのような行動も、[適切な場合には]それらが含む水銀及び水銀化合物から生じる人の健康と環境に及ぼすリスクの評価を織り込んで、環境的に適切な方法で実行されなくてはならない。

  3. 締約国会議は、汚染サイト管理の原則に関するガイダンスを[採用しなくてはならない][開発してもよい]。
  1. Alt. 締約国会議は、下記を含む汚染サイト管理の原則に関するガイダンスを[採用しなくてはならない][開発してもよい]。

    (a) [[適用可能なら、]参照値及び濃度限界の使用を通じることを含めて、] [実行可能なら、]汚染された(contaminated)サイトを特定し、評価すること。
    [(a) bis 実行可能なら、地域及び国家の参照値及び濃度限界[及び暴露のレベル]の開発のための方法論]
    (b) 水銀汚染(contamination)が広がることを防止すること。
    (c) 汚染(contaminated)サイト、特に人の健康と環境に著しいリスクを及ぼすサイトの管理及び、実行可能であり、経済的に実現可能な場合には、それらを修復及び回復すること。

  2. 締約国は、能力構築、財政的、及び技術的援助の条項[に従い、][を通じることを含んで、]汚染サイトを特定し、評価し、優先付け、管理し、[適切ななら]汚染サイトを修復するための戦略と方法論を開発し、実施することに協力[してもよい][しなくてはならない]。
▼第15条 財源とメカニズム(11/11/22)
  • 事務局は、第15条の下に二つのオプションを説明し、特に、オプション1は、ひとつ又はそれ以上の基金を含む財政メカニズムを規定しており、既存の国際機関を含んでひとつ又はそれ以上の機関によって運営されてもよく、他の資金源からの貢献を促しているということに言及した。オプション2は、先進締約国及びその他により資金提供される独立したメカニズムの設立を規定しており、条約で規定されている規制措置への遵守を可能とするために、途上締約国及び移行経済締約国にかかるすべてのコストをカバーすると述べた。

  • EUは、オプション1の支持を表明し、途上国の能力を超える条約の側面を途上国が遵守することを可能とする統合されたアプローチの必要性を強調した。カナダはオプション1がよいとしたが、オプションの早まった議論の代わりに財政メカニズムの基準の基本的な理解を要求した。彼女は、国家は法的に拘束力のある義務を引き受けなくてはならないと述べ、財政はこれらの義務を引き受けることに関連すべきではないと強調し、財政メカニズムに関する議論は遵守に関する議論と並行して行なわれるべきであることを強調した。日本は、財源に関する議論は条約を遵守する義務と結び付けられるべきではないことを強調した。

  • スイスは、オプション1を支持し、条約のための最良のメカニズムを検討する時に、基準の更なる討議を行なうことを求めた。彼はまた、現在行なわれている化学物質のための財政に関する議論を排除することがないよう警告した。

  • アフリカGは、オプション2の支持を表明し、遵守は財政が条件であり、その逆ではないことを強調した。アルジェリアは、財政メカニズムは、条約遵守の結果生じる財政コストについて水銀製造者を補償しなくてはならないと述べた。マレーシアは、水銀条約の成功は財政メカニズムにかかっていると強調し、イラン及びイラクとともにオプション2を支持した。イランは、開発途上国の懸念に対応する財政メカニズムの能力は遵守に関する議論を形成するであろうと強調した。キューバに支持されてGRULACもまた、オプション2を支持し、各国は自国のタイムラインと優先事項を設定すべきであると強調した。

  • インドネシアとメキシコはオプション2を支持し、多国籍間基金の成功を強調した。インドとパキスタンもまた、オプション2を支持し、専用の強固な予測可能な財政協定の必要性を強調した。パキスタンは、共通だが差異のある責任の原則を強調し、先ず先進国が水銀を廃止することを求めた。

  • アジア太平洋Gは、専用メカニズムと、化学物質及び廃棄物のための財政オプションに関する協議プロセスの結果の両方を検討することを求めた。UNEPの協議プロセスの共同議長 Johanna Lissinger Peitz (スウェーデン)は、プロセスの結果は財政に関する議論に限定することを意図していないと述べた。

  • アメリカは、財政メカニズムに関するもっと一般的な議論を要求し、民間分野を含み、もっと広範な寄付のベースを引き出すことができるメカニズムの支持を表明した。彼は、他の諸国と同様に、水銀は全ての国家代表が対応することに同意したのだから、財政は条約の義務を守らない理由にすべきではないということを強調した。ニュージランドは、既存の財政の枠組みの使用を求めたが、またもっと一般的な条件としての財源の問題を議論することを望んだ。

  • ブラジルは、条約の法的拘束力のある側面に関する協議は財源に関し協力して進めなくてはならないとし、先進国は”誠実の精神をもって協議に参加する”よう促した。中国は、ここにいる政府代表者らは誰も”物貰い”ではないと強調しつつ、遵守の達成は財源の準備に依存するということをGC決議 25/5 が規定していることを政府代表者等に思い起こさせた。

  • ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループは、財源、技術的援助、水銀供給源の目録、及び遵守の重要性を強調しつつ、遵守は財政メカニズムを条件とすべきではないと述べた。IPENは、財源と技術的援助は需要であるが、財政メカニズムの基準がどのような決定もなされる前に開発されるべきであると述べた。
▼第16条 技術的援助(11/11/22)
  • アフリカGはオプション1と2を統合することを支持した。オプション1の下に、途上国締約国及び移行経済国に技術的援助を”先進国はしなくてはならない”、又は”締約国は協力すべきである”とする二つの代案がある。オプション2は、先進国締約国は、開発途上締約国及び移行経済締約国にタイムリーに十分な技術的援助を提供しなくてはならないと規定している。

  • EUは、技術的援助の重要性を強調しつつ、この問題に関して現実的な観点を求め、GEF(訳注:地球環境ファシリティ)が重要な役割を果たすと述べた(訳注:開発途上国及び市場経済移行国が、地球規模の環境問題に対応した形でプロジェクトを実施する際に追加的に負担する費用(incremental cost)につき、原則として無償資金を提供する)。アメリカは、条約の実施のために技術的援助の価値を認め、議論のベースとしてオプション1をしじした。

  • チリはオプション2の支持を表明した。インドは、開発途上国による法的に拘束力のある義務の実施は適切な財源と技術的援助が条件であろうと述べ、大まかに言えば、技術的援助を提供する義務は民間分野にシフトされることはできないと言及した。

  • 日本は、技術的援助は先進国から途上国への援助だけに限定さえるべきではないと述べ、技術移転は知的所有権の問題が関わることに言及した。

▼第16条 bis. パートナーシップ(11/11/22)
  • パートナーシップの重要性を認めつつ、スイス、EUとアフリカGはこの提案された条項を支持した。EUはその法的及び財政的影響を評価する必要性を強調した。

  • 中国は、この上古の法的根拠が明確でないと述べつつ、これを含めることに反対した。カナダは、序文(preamble)にパートナシップの必要性を反映することを提案した。
▼第17条 実施(11/11/22)
  • EU、アメリカ、日本、カナダ、ノルウェーはオプション1を支持したが、それは条約の条項の遵守を促進するための委員会を設立することを規定している。アフリカGもまた、オプション1を支持し、提案された委員会は15人(か国)のメンバーからなることを提案した。

  • 中国とチリは、オプション2を支持したが、それは二つの代案を含む。代案1は、締約国会議は、財政的援助、技術的援助、能力構築、及び実施委員会を設立しなくてはならないと規定している。代案2は、締約国会議は、その最初の会議で、実施委員会と共に、財政的支援、技術的支援、及びの能力構築委員会を設立しなくてはならないと規定している。

  • スイスは、オプション2の代案2を支持した。チリは、実施委員会は限定された付託条項(terms of reference)を持つべきであると述べ、共通だが差異ある責任の原則を考慮しつつ、柔軟性のあるメカニズムの必要性を強調した。

  • 水曜日(11月3日)、議長ルグリスは、財源、技術援助及び実施に関するコンタクト・グループを立ち上げ、Johanna Lissinger Peitz (Sweden) とAdel Shafei Osman (Egypt) を共同議長として指名した。同グループは水曜日と木曜日に会合を開いた。金曜日に、議長ルグリスは、この問題に関してなされるべき(INC4までの)インターセッショナル作業を要約し、コンタクト・グループの共同議長はドラフトテキストの第15条及び16条のための提案を用意するであろうと説明した。彼は、彼等はその後にテキストが続く概念的なアプローチを開発するであろうが、それらは2011年12月31日までに各国代表者らによって提出される見解を、化学物質と廃棄物の資金に関するをUNEP協議プロセスの結果とともに、考慮するであろうと述べた。議長ルグリスは、5つの国連地域のそれぞれによって指名された専門家らは、INC4において検討用に全ての参加組織に配付されるであろうの問題に関する共同議長文書を作成するために会合を持つであろうと強調した。
セクションJ
▼第18条 情報交換
▼第19条 公開情報、意識向上、教育
▼第20条 研究、開発、監視
(11/11/22)
  • EUは、セクションJへの一般的なアプローチを支持し、多くの条項が条約の他の部分に関する交渉の結果に依存すると述べ、既存の化学物質と廃棄物に関する条約と、国際的な化学物質管理のための戦略的アプローチ(SAICM)との協力と協調の必要性を強調した。EUは、第19条に、水銀の排出、放出、保管に関する情報への公衆のアクセスについてのひとつのパラグラフを追加することを提案した。中国は、第19条で要求される情報は広範すぎると述べた。。

  • カナダは、第18条と19条を支持し、第20条に関してはヒト健康への影響が優先さえるべきであると述べた。

  • アフリカGは次のことを強調した。自由に流れる公的にがアクセスできる情報の重要性;水銀の在庫目録必要性;研究、開発及び監視のための方法論とツールの必要性。日本は、水銀の健康影響に関する情報の重要性を強調しつつ、水銀に関連する病気に関する情報についての新たなパラグラフを追加することを提案し、各国は水銀の在庫目録作成すべきと述べた。スイスは、非政府組織(NGOs)を含んで、全ての利害関係者の間で情報交換を促進することの重要性を強調した。アメリカは、情報交換を促進する上で重要な役割を初ことができるであろうと述べ、この目的のために新たな基盤を確立することは支持しないと述べた。

  • 島持続可能性連合(Island Sustainability Alliance)は、水銀に関する情報は、公的に入手可能で容易にアクセスできるようにすべきであり、経験;科学的、技術的、財政的情報;非水銀への代替に関する情報を含むべきであると述べた。彼は、研究、開発、監視に関する地域協力グループを設立することを提案した。

  • 水銀を使用しない歯科のための世界連合(World Alliance for Mercury-Free Dentistry)は、消費者の70%がアマルガムが水銀を含んでいることを知らないと協調しつつ、この問題に関して情報交換と公衆の教育を優先する条約を訴えた。ゼロ・マーキュリー・ワーキング・グループは、情報交換と監視に市民社会組織が関与する必要性を強調した。国際歯科研究協会(International Association for Dental Research)は、効果的な水銀を使用しない代替に関する情報の必要性を強調し、この分野におけるさらなる研究を求めた。
▼第20条 bis. 健康の側面(11/11/22)
  • 水曜日(11月3日)の夕方、政府代表者らはこの条項について議論したが、それは、特に医療へのアクセスを促進し、この条項にリストされている活動を支援するために先進国に技術的及び財政的資源を提供することを求めることによって、水銀の健康影響に対して最も脆弱な人々を守るための措置を取らなくてはならないことを規定している。

  • EU、日本、アメリカは水銀曝露に関連する健康の側面の重要性を認めたが、この条項中のほとんどの健康側面は他の条項に組み入れることができると述べた。日本は他の条項との重複を避けるための議論を歓迎し、水銀関連の健康被害は誰にでも及ぼすことを言及しつつ、この条項は脆弱な集団に限定すべきではないと述べた。

  • GRULAC はブラジルに支持されて、このテキストに喜んでおり、情報交換、意識向上、研究、監視、健康推進に関する提案を強調した(UNEP(DTIE)/Hg/INC.3/CRP.19)。

  • カナダは、医療へのアクセスを促進する条項はUNEPの権限を越えるものであり、水銀への直接的又は職業的曝露に関連する懸念は国家政府を通じて対応されるべきであると述べた。

  • チリはブラジルに支持されて、多国間環境条約(MEAs)の目的は人の健康と環境を守ることであると強調し、健康に目を向けたトピックスは条約のテキスト全体に点在させるべきであると述べた。

  • アルゼンチンは、時と実施の経過とともに、ストックホルム条約のような他の多国間環境条約(MEAs)の目的の健康の側面は、環境問題によって薄められていると強調した。

  • アフリカGはアルジェリアに支持されて、医療へのアクセスに関する条項の支持を表明し、汚染サイトから分離されるべきであると述べた。

  • イランはこの条項を支持し、開発途上国にける労働者の職業的健康サービスの支持を求めた。

  • WHOは、コンタクト・グルーぷの作業を支援するための情報を提供することを申し出た。国際環境医師協会(International Society of Doctors for the Environment)は、条約の実施の指標として生物学的環境指標(マーカー)を確立することの重要性を強調し、水銀意曝露した労働者の健康を監視することを求めた。

  • 世界先住民幹部会(Global Indigenous Peoples' Caucus)は、第20条 bis. の支持を表明し、全ての環境媒体への水銀放出に関する全ての国のデータベースの必要性を強調した。

■INC3の簡潔な分析 (2011年12月3日)

▼条約文書のスリム化 (2011年12月3日)

 INC3の主要な目的は、次回の協議(INC4)で議論できるドラフト条約テキストとするためにオプションと代案を狭めることであった。INC3において著しく上手くいった分野は、人力小規模金採鉱(ASGM)の問題であった。

 INC3は、ASGMに関する主要な論点のほとんどに合意し、わずかなオプションのためのブラケットを残すだけで、単一のテキストにすることに成功した。ある政府代表者らは、この進捗はASGMをドラフトテキストの他の条項、特に水銀供給源(第3条);水銀廃棄物(第13条);汚染サイト(第14条)からうまく”切り離した(delinking)”からであると述べた。彼等は、この問題に関して進捗を達成するという政治的意思は、数百万の人々が生計を依存しているこの分野の社会経済的側面の配慮はもとより、ASGMの環境と公衆の健康に及ぼす深刻な影響によって動かされたと述べた。  さらに、多くの代表者らは、このテキストが大部分は非公式なASGM分野を経済的発展と関連付け、条約の発効により課せられる条約義務の遵守を準備するために、この分野を公式に認めるよう諸国を促していることに満足した。これらの代表者等は、この結果は人の健康と環境を守るという目的だけでなく、貧困の軽減と経済的発展というもっと広い目標についての成功であると強調した。

 代表者等はまた、保管、廃棄物、及び汚染サイトの問題、及び意識向上の領域で成功した。両方の問題で、コンタクト・グループは1NC4における更なる交渉に向けて単一のテキストとすることに成功した。いくつかのブラケットは残っているが、オプションと代案は著しく限定された。INC4の代表者等は、この成功をさらに積み上げて、このテキストを磨き、最も困難な問題への取り組みを明確にするであろう。

▼断層線 (2011年12月3日)

 協議において、参加国はその立場を明確にし、妥協の根拠を示すために、明確な断層線(fault lines)を引く必要があった。このことは、参加国がもっと小さな問題をできるだけ多く解決する方向で動き、また、INC5の終わりまでに解決しなくてはならない最も複雑で困難な問題に効果的に取り組むための方法を明確にすることを可能にするので、INC4の前に決めることが重要なことである。INC3の協議の間に、明確な大断層が二つの重要な問題に関して出現した。規制措置が自主的なのか義務的なのかということ、及び、条約の遵守の実施を支援するための資金メカニズムの選択である。

 共通だが差異ある責任の原則(the principle of common but differentiated responsibilities)を引き合いに出して、いくつかの開発途上国は、義務的な規制措置は社会経済的な現実に責任を持たず、したがって不適切であり非現実的であると主張した。これとは対照的に、多くの先進国は、この条約は法的拘束力のあるものとして意図されており、また自主的な措置は、水銀の大気排出のような条約の極めて重要な領域の成功を危うくするであろうと主張した。大気排出の主要な源は石炭火力発電所であり、多くの開発途上国は、それは産業発展の最大の推進力であると考えている。

 二番目の重大な活断層は、資金メカニズムの問題の周辺に出現した。財政的及び技術的援助と条約遵守の間の関連は開発途上国にとっては重要な難題であり、彼等は、義務を満たすための彼等の能力は彼等に与えられる財政的支援に依存すると主張した。しかし、多くの先進国は、遵守が資金援助の条項次第であるとすることに同意したがらなかった。さらに、多くの先進国は、モントリオール議定書の実施のための多国間基金 (訳注)のような新たな専用のメカニズムの創設は、現状の経済的環境の下では先進国が負担するには難し過ぎるであろうレベルの基金が求められるので、地球環境ファシリティ(GEF:訳注)のような既存のメカニズムの利用に賛成した。それとは対照的に、多くの開発途上国は、 GEF が非常に効率的というわけではないという懸念を表明し、資金援助を得るために非常に厳格な要求であると彼等が特徴付けるところのものを満たさなくてはならないことに対するフラストレーションを強調した。

 これら二つの問題に関する各国の立場はもっと明確に述べられ、多くの場合は今までのINCsよりも強烈であり、妥協の余地がほとんどないことを示した。さらにこの問題を複雑にしているのは、代表者等はどのようなレベルの又はどのようなタイプの財政的援助が必要なのかわからないので、どの規制措置が義務的であり、どれが自主的なのかについて、明確な理解なしに資金メカニズムに関する議論を進めることは難しいということである。資金メカニズムは主要な問題であり、最後の会議まで決定されそうにない。しかし、強硬で柔軟性がなさそうな表明と、コンタクト・グループのどのような妥協をも達成できそうにない無力さが、代表者らは後に妥協する意思があるのだろうかといぶかる多くの人々に懸念をもたらした。もし、そのような意思がないなら、それは交渉の進捗と最終的な成功を阻害することになるであろう。

▼オーナーシップ (2011年12月3日)

 INCプロセスにおける第3回会合(INC3)の最終的な期待は、どこかの国が、交渉を成功させるという約束と、協議プロセスを前進させるための行動を起こすことにより条約を確立することを示して、プロセスのオーナーシップをとることであろう。しかしINC3の結論によれば、どこかの国がこの条約のチャンピオンとして出現するという証拠は乏しかった。

 このプロセスに対する参加国の約束の明確な兆候は、いくつかの開発途上国がINC間とINCの間に、遵守メカニズムへの取り組みのために相互支援なしに、財政的及び技術的援助に関連する問題に進んで取り組む意思があることを示したことである。

 ある参加国が閉会声明で述べたように、財政的援助への取り組みを支援する彼等の意思は、他の国がINC4において、等しく遵守メカニズムの議論に関して前進させるという意思を持つことが前提である。

 この会合においてオーナーシップを取るという参加国の証拠がないのは、規制措置および資金メカニズムのような主要な問題に関する深い分裂があるためであろう。多くの代表者らにとって、これらの重大なな条項に関する決定が条約の成功を決めることになり、それらの重要性がINC3において交渉を開始するに当り最初に強い立場を確立するために、強硬で柔軟性のない見解を示す動機を代表者等に与えたかもしれない。

 もしそうなら、恐らくチャンピオンは、参加国がドラフト・テキストへの同意を確立する方向で具体的な措置を取ることが期待される、このプロセスの次の段階に出現するであろう。

▼ここからどこにいくのか? (2011年12月3日)

 代表者等は、修正された協議用テキストの形で彼等の苦労の成果をINC4に運ぶことになる。INC3ではいくつかの成功はあったが、資金及び規制措置のような問題に関する深い分裂が、柔軟性と真剣な妥協の必要性を強調している。さもなければ、結果の成功は危ういことになる。

 解決の希望はあるのか? ある代表者等は、例えば、化学物質と廃棄物のための資金オプションに関するUNEPの協議プロセスが、参加国が資金メカニズムの問題に関して求めている妥協の解決を提供することができるという可能性を引用しつつ、解決は手の届くところにあるかもしれないとの自信を述べた。INC3の開催中に、明らかに強硬な立場が表明されたにもかかわらず、多くの老巧な参加者等は、INC4とINC5での交渉のための素地を残しておくために、この交渉段階においては比較的強硬な立場が常に取られるものだと述べた。したがって、INCプロセスの中間点においては、交渉はあるべき状況にあるのかもしれない。


化学物質問題市民研究会
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