2011年10月31日(月)〜11月4日(金)ナイロビ 水銀条約第3回政府間交渉会議(INC3) IISD レポート 情報源:International Institute for Sustainable Development (IISD) Monday, 7 November 2011 SUMMARY OF THE THIRD MEETING OF THE INTERGOVERNMENTAL NEGOTIATING COMMITTEE TO PREPARE A GLOBAL LEGALLY BINDING INSTRUMENT ON MERCURY: 31 OCTOBER - 4 NOVEMBER 2011 PDF版|HTML版 紹介:安間武 (化学物質問題市民研究会) 掲載:2011年11月13日 更新:2011年12月 3日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC3_CACP/INC3_IISD_Report.html INC3における本会議での討議を報告したIISDの報告書の一部を抜粋/抄訳して紹介します。
■地域グループ/各国/NGOの一般的意見 ■条項毎の地域グループ/各国/NGOの発言 ▼序文 ▼第1条 目的 ▼第1条 bis. 他の国際的な合意との関係 ▼第2条 定義 ▼第3条 供給 ▼第4条及び5条 水銀の国際貿易;及び水銀の非締約国との貿易 ▼第6条 水銀添加製品 ▼第7条 水銀が使用される製造プロセス ▼第8条 bis. 途上国の特別な状況 ▼第9条 人力小規模金採鉱(ASGM) ▼第10条、第11条、第11条alt.大気排出;水と陸地への放出;非意図的排出と放出 ▼第12条 保管 ▼第13条 水銀廃棄物 ▼第14条 汚染サイト▼第15条 財源とメカニズム▼第16条 技術的援助 ▼第16条 bis. パートナーシップ ▼第17条 実施 ▼第18条 情報交換|第19条 公開情報、意識向上、教育|第20条 研究、開発、監視 ▼第20条 bis. 健康の側面 ■INC3の簡潔な分析 (2011年12月3日) ▼条約文書のスリム化 ▼断層線 ▼オーナシップ ▼ここからどこにいくのか? ■地域グループ/各国/NGOの一般的意見
▼序文(preamble)
訳注1:第14条 汚染サイト(11/11/14) 新たなテキスト(UNEP(DTIE)/Hg/INC.3/CRP.21)
▼第18条 情報交換 ▼第19条 公開情報、意識向上、教育 ▼第20条 研究、開発、監視 (11/11/22)
■INC3の簡潔な分析 (2011年12月3日) ▼条約文書のスリム化 (2011年12月3日) INC3の主要な目的は、次回の協議(INC4)で議論できるドラフト条約テキストとするためにオプションと代案を狭めることであった。INC3において著しく上手くいった分野は、人力小規模金採鉱(ASGM)の問題であった。 INC3は、ASGMに関する主要な論点のほとんどに合意し、わずかなオプションのためのブラケットを残すだけで、単一のテキストにすることに成功した。ある政府代表者らは、この進捗はASGMをドラフトテキストの他の条項、特に水銀供給源(第3条);水銀廃棄物(第13条);汚染サイト(第14条)からうまく”切り離した(delinking)”からであると述べた。彼等は、この問題に関して進捗を達成するという政治的意思は、数百万の人々が生計を依存しているこの分野の社会経済的側面の配慮はもとより、ASGMの環境と公衆の健康に及ぼす深刻な影響によって動かされたと述べた。 さらに、多くの代表者らは、このテキストが大部分は非公式なASGM分野を経済的発展と関連付け、条約の発効により課せられる条約義務の遵守を準備するために、この分野を公式に認めるよう諸国を促していることに満足した。これらの代表者等は、この結果は人の健康と環境を守るという目的だけでなく、貧困の軽減と経済的発展というもっと広い目標についての成功であると強調した。 代表者等はまた、保管、廃棄物、及び汚染サイトの問題、及び意識向上の領域で成功した。両方の問題で、コンタクト・グループは1NC4における更なる交渉に向けて単一のテキストとすることに成功した。いくつかのブラケットは残っているが、オプションと代案は著しく限定された。INC4の代表者等は、この成功をさらに積み上げて、このテキストを磨き、最も困難な問題への取り組みを明確にするであろう。 ▼断層線 (2011年12月3日) 協議において、参加国はその立場を明確にし、妥協の根拠を示すために、明確な断層線(fault lines)を引く必要があった。このことは、参加国がもっと小さな問題をできるだけ多く解決する方向で動き、また、INC5の終わりまでに解決しなくてはならない最も複雑で困難な問題に効果的に取り組むための方法を明確にすることを可能にするので、INC4の前に決めることが重要なことである。INC3の協議の間に、明確な大断層が二つの重要な問題に関して出現した。規制措置が自主的なのか義務的なのかということ、及び、条約の遵守の実施を支援するための資金メカニズムの選択である。 共通だが差異ある責任の原則(the principle of common but differentiated responsibilities)を引き合いに出して、いくつかの開発途上国は、義務的な規制措置は社会経済的な現実に責任を持たず、したがって不適切であり非現実的であると主張した。これとは対照的に、多くの先進国は、この条約は法的拘束力のあるものとして意図されており、また自主的な措置は、水銀の大気排出のような条約の極めて重要な領域の成功を危うくするであろうと主張した。大気排出の主要な源は石炭火力発電所であり、多くの開発途上国は、それは産業発展の最大の推進力であると考えている。 二番目の重大な活断層は、資金メカニズムの問題の周辺に出現した。財政的及び技術的援助と条約遵守の間の関連は開発途上国にとっては重要な難題であり、彼等は、義務を満たすための彼等の能力は彼等に与えられる財政的支援に依存すると主張した。しかし、多くの先進国は、遵守が資金援助の条項次第であるとすることに同意したがらなかった。さらに、多くの先進国は、モントリオール議定書の実施のための多国間基金 (訳注)のような新たな専用のメカニズムの創設は、現状の経済的環境の下では先進国が負担するには難し過ぎるであろうレベルの基金が求められるので、地球環境ファシリティ(GEF:訳注)のような既存のメカニズムの利用に賛成した。それとは対照的に、多くの開発途上国は、 GEF が非常に効率的というわけではないという懸念を表明し、資金援助を得るために非常に厳格な要求であると彼等が特徴付けるところのものを満たさなくてはならないことに対するフラストレーションを強調した。 これら二つの問題に関する各国の立場はもっと明確に述べられ、多くの場合は今までのINCsよりも強烈であり、妥協の余地がほとんどないことを示した。さらにこの問題を複雑にしているのは、代表者等はどのようなレベルの又はどのようなタイプの財政的援助が必要なのかわからないので、どの規制措置が義務的であり、どれが自主的なのかについて、明確な理解なしに資金メカニズムに関する議論を進めることは難しいということである。資金メカニズムは主要な問題であり、最後の会議まで決定されそうにない。しかし、強硬で柔軟性がなさそうな表明と、コンタクト・グループのどのような妥協をも達成できそうにない無力さが、代表者らは後に妥協する意思があるのだろうかといぶかる多くの人々に懸念をもたらした。もし、そのような意思がないなら、それは交渉の進捗と最終的な成功を阻害することになるであろう。 ▼オーナーシップ (2011年12月3日) INCプロセスにおける第3回会合(INC3)の最終的な期待は、どこかの国が、交渉を成功させるという約束と、協議プロセスを前進させるための行動を起こすことにより条約を確立することを示して、プロセスのオーナーシップをとることであろう。しかしINC3の結論によれば、どこかの国がこの条約のチャンピオンとして出現するという証拠は乏しかった。 このプロセスに対する参加国の約束の明確な兆候は、いくつかの開発途上国がINC間とINCの間に、遵守メカニズムへの取り組みのために相互支援なしに、財政的及び技術的援助に関連する問題に進んで取り組む意思があることを示したことである。 ある参加国が閉会声明で述べたように、財政的援助への取り組みを支援する彼等の意思は、他の国がINC4において、等しく遵守メカニズムの議論に関して前進させるという意思を持つことが前提である。 この会合においてオーナーシップを取るという参加国の証拠がないのは、規制措置および資金メカニズムのような主要な問題に関する深い分裂があるためであろう。多くの代表者らにとって、これらの重大なな条項に関する決定が条約の成功を決めることになり、それらの重要性がINC3において交渉を開始するに当り最初に強い立場を確立するために、強硬で柔軟性のない見解を示す動機を代表者等に与えたかもしれない。 もしそうなら、恐らくチャンピオンは、参加国がドラフト・テキストへの同意を確立する方向で具体的な措置を取ることが期待される、このプロセスの次の段階に出現するであろう。 ▼ここからどこにいくのか? (2011年12月3日) 代表者等は、修正された協議用テキストの形で彼等の苦労の成果をINC4に運ぶことになる。INC3ではいくつかの成功はあったが、資金及び規制措置のような問題に関する深い分裂が、柔軟性と真剣な妥協の必要性を強調している。さもなければ、結果の成功は危ういことになる。 解決の希望はあるのか? ある代表者等は、例えば、化学物質と廃棄物のための資金オプションに関するUNEPの協議プロセスが、参加国が資金メカニズムの問題に関して求めている妥協の解決を提供することができるという可能性を引用しつつ、解決は手の届くところにあるかもしれないとの自信を述べた。INC3の開催中に、明らかに強硬な立場が表明されたにもかかわらず、多くの老巧な参加者等は、INC4とINC5での交渉のための素地を残しておくために、この交渉段階においては比較的強硬な立場が常に取られるものだと述べた。したがって、INCプロセスの中間点においては、交渉はあるべき状況にあるのかもしれない。 |