UNEP INC.1/INF/9 2010年5月12日
水銀の供給と貿易に関する情報の更新
付属書 I:アジア・太平洋地域における
余剰水銀の評価 2010年−2050年


情報源:UNEP INC.1/INF/9, 12 May 2010
Update of information on the supply and trade of mercury
Annex I Executive summary of the report "Assessment of Excess Mercury in Asia and the Pacific, 2010 - 2050"
http://www.unep.org/hazardoussubstances/LinkClick.aspx?fileticket=nHFy0ZgcyuM%3d&tabid=3391&language=en-US

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2010年5月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/mercury/INC1/INC1_20_supply_trade_mercury_Annex_I_Asia.html


付属書 I
アジア・太平洋地域における余剰水銀の評価 2010年−2050年


  1. この報告書は2008年11月のオリジナル報告書の改訂版である。それは、アジア・太平洋地域における余剰水銀の隔離を支援するための地域プロセスを立ち上げることを目的にして、アジア・太平洋地域水銀保管プロジェクトの作業を支援するための情報を提供するために準備された。この報告書は中国、日本、及びネパールによって提供されたコメントを考慮に入れている。

  2. この報告書は、アジア内の将来の水銀フローをよりよく理解するための枠組みを提供し、またこの地域における余剰水銀の管理についての議論を伝えるであろう。この報告書のオリジナル版は、2009年3月4-5日にバンコクで開催されたアジアにおける水銀保管に関するプロジェクトの開始会議(inception meeting)のための背景情報を提供した(訳注1)。

  3. 水銀供給の削減と水銀の長期保管管理はともに、国連環境計画の管理理事会によって優先事項として特定されている。政府と他の利害関係者はどのように余剰水銀を取り扱うかを検討することが必須である。それは元素水銀は有毒であるということの外に、破壊又は分解することができず、したがってそれらが再び世界の市場に入り込むことがないよう長期間にわたり管理されなくてはならないからである。

  4. 重要なことは、アジアにおける水銀フローは、次の段階に入る前によく理解される必要があるということであり、それは、必要な保管容量の計画、地域の調整活動、財政的及び技術的支援の確保、環境的に適切な長期保管に必要な技術的基準(サイト評価基準を含む)の特定、及びひとつ又はそれ以上のそのような施設の基本的な設計を含むかも知れない。

  5. アジア地域における水銀の将来の供給源は、主に、様々な採鉱や精錬活動からの副産物として回収される水銀、天然ガスからの除去水銀、水銀法を用いた塩素アルカリプラントの閉鎖又は転換からの水銀、及び寿命を終えた製品のようなその他の顕著な供給源からの水銀からなる。この地域で生成されるであろう余剰水銀の量を推定するために、水銀の地域的供給源は、同時期におけるランプ、測定機器、歯科アマルガムのような地域の使用の分析と関連付けられる。

  6. 報告書はアジア地域は、現時点においては水銀の顕著な輸入者であることを示している。輸入水銀の大部分は小規模金採鉱で使用されており、少量が製品製造に使われているが、中国では自国で採鉱した水銀の多くを塩ビの製造で使用される塩ビモノマー製造に消費している。したがって、アジアにおける余剰水銀の生成のタイミングは、こららの主要な産業分野における需要削減のタイミングと程度に大きく依存する。

  7. 国連産業開発機構やその他の機関の専門家らは、水銀供給の制限は、水銀価格の上昇と水銀供給へのアクセスが困難になるので小規模金採鉱における需要削減に大きな効果があると結論付けている。したがって、供給と需要に影響を与えるための措置は相乗効果があり、ある程度、供給制限は需要削減の効果が出る前に先行しなくてはならない。水銀供給の保管への転換は、さらに需要削減を推進するための取り組みとして特に重要かもしれない。

  8. 現在、アジアにおける水銀需要は供給よりも高い。報告書の中で評価されたシナリオによれば、アジアにおける水銀供給と需要は2014年又は2015年にほぼ平衡状態に達し、その後は供給が需要に勝ることが予測される。今回の時間枠は、もし、金属精錬における鉱石から出る副産物水銀の収集及び環境への放出要求が厳格になれば、市場で入手可能となる副産物水銀の量が著しく増えるので、(需要と供給が平衡するのがもっと早まり、)時間枠が短くなる。これは、使用のために利用されるか又は保管が求められる余剰水銀が生成されるからである。他方、もし小規模金採鉱における需要削減が国連環境計画(UNEP)世界水銀パートナーシップの人力小規模金採鉱パートナーシップ分野において規定される目標を達成できないことがわかれば、この時間枠はもっと長くなるであろう。

  9. さらに、2017年後、アジアの水銀保管能力を開発する緊急性は、余剰水銀供給に貢献するさらなる需要削減の速度、この地域の諸国が水銀入手への厳しい規制又は管理のような供給制限を通じて更なる需要削減を促進したいと望む程度、及び、この地域の全ての諸国に適切な解決が達成される程度(たとえ余剰水銀の供給が比較的少数の国で生じたとしても)に、依存するようである。

  10. いずれにしても、リサイクル、副産物、及び在庫の放出を通じて水銀が入手可能となるという評価とともに、水銀使用に関する規制の強化と自主的管理の結果として現在の水銀使用は減少しているという評価に基づけば、2030年の後にはアジアにおいては相当な量の余剰水銀が予想され、2030年から2050年の間に最も蓄積される余剰水銀の量は5,500トン(約400m3)を若干上回るようである。代替方針シナリオによれば、地域の規制当局は余剰水銀の保管をもっと早い時点に移してもよく、2030年には蓄積する水銀の量は7,500トン(約560m3)に達するかもしれない。
Mercury Storage in Nevada, USA (Defense National Stockpile Center (DNSC))


訳注1
UNEP/ZMWG 2009年3月4〜5日 バンコク アジア水銀保管プロジェクト ワークショップ参加報告



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る