NIH ニュース 2008年10月3日
米国立衛生研究所(NIH)
全米子ども調査 次の段階に入る

センター数増加、ボランティア募集、データ収集

情報源:National Institutes of Health
NIH News October 3, 2008
NIH's National Children's Study Enters Next Phase
Increase In Number of Centers Recruiting Volunteers, Collecting Data
http://www.nih.gov/news/health/oct2008/nichd-03.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2008年12月7日


 米国立衛生研究所(NIH)は本日、遺伝子と環境が子どもの健康に及ぼす影響を調べるための包括的な調査が次の段階に入ったと発表した。全米子ども調査の最近の展開に関する説明で、NIH担当官は2008年に資金を受けるセンター名を明らかにした。

 調査センターは、調査のためのボランティアを募集する研究所である。調査センターは、アメリカを代表するよう調査科学者によって事前に選択された郡及びその他の地理学的区分による調査地域から募集する。

 この大規模な調査は段階的に実施される。本日、NIH担当官は2008年中に資金が与えられる27の調査センターを明らかにしたが、それらは39の調査地域を管轄する。これにより、新規及び既存の調査センターの合計は36、調査地域は72となる。

 運用の最大時には、約40の調査センターと計画中の全米105か所の調査地域からボランティアを募集する。

 全米子ども調査は、出生前から21歳まで10万人の代表的全米のサンプルを追跡する。この調査は自閉症、脳性まひ、学習障害、出生異常、糖尿病、ぜん息、及び肥満のような疾患の発症に影響する要因を調査する。

 ”発達の長期的調査の長所は、事実上ライフサイクルのすべての段階において重要な健康情報を生成することである”と米国立衛生研究所(NIH)のディレクターであるエリアス A. ザーホウニ博士は述べた。”最終的には成人の疾病の理解にも大いに役立つであろう。しかし直近の将来には、我々は出生時及び揺籃期の疾病に対する識見を得ることを期待する”。

 記者会見でNIH担当官はこの調査の歴史を簡単に述べた。2000年に子ども健康法(Children's Health Act)が議会で承認され、全米子ども調査は連邦政府機関の共同事業として実施されている。これには、二つのNIHの研究所、ユニス・ケネディ・シュライバー国立子ども健康とヒト発達研究所(NICHD)及び国立環境健康科学研究所(NIEHS)とともに、疾病管理予防センター(CDC)、及び米環境保護庁(EPA)が含まれる。

 2004年、調査研究者らは、調査参加者が最終的に調査センターによって募集されることになる全米105の調査地域を発表した。2005年に、NIHは7つの第一期(initial)又はバンガード(Vanguard/先陣)センターと契約し、2007年には17のセンターが追加された。

 調査センターは、参加者を募集し、遺伝的、生物学的、及び環境的サンプルを収集し、健康、遺伝子、そして環境との間の関連性について調査分析するための統計的情報を編集する。センターは大学、病院、保険所、そして会社またはこのような組織の代表からなる。(2008年調査センターは末尾に示される。)

 ”全米子ども調査は、アメリカの人口構成を表すよう設計された全米を代表するサンプルが対象となる”とNICHDのディレクターであるデュアン・アレキサンダー博士は述べた。”それはアメリカ中の子ども、農村から、都市、郊外の地域まで、すべての所得層及び教育レベル、そしてすべての人種グループを含むであろう”。

 全米子ども調査のための資金調達は毎年議会により行われる。資金が予想通り支給され、必要な技術的承認が得られれば、全米子ども調査は最初の募集が二つのバンガード(先陣)センターで2009年1月から始まる。この最初の募集は、全面的調査が開始する前に、募集手続きや資料採取方法をテストする初期段階である調査のパイロット・テストに向けられる。2009年4月に、残りのバンガードセンターが調査のパイロット段階のための登録に参加する。パイロット・テストが終了した後に、最初の本格的な募集が2010年の夏に始まる。

 この調査はその全期間を通じて情報を生成することが期待されるが、生命の早い時期(訳注:胎児や幼児)の疾病や健康状態に関する情報は今後数年以内に得られることが期待できる。この調査は妊娠中の女性、ある場合にはまだ妊娠していない女性も登録するので、調査研究者らは、後の発達に影響を与える生命の早い時期の範囲を特定することを期待している。

 10万人以上の参加者という全米子ども調査は、アメリカではかつて実施したことがない最大規模の妊婦の調査であると我々は信じていると全米子ども調査のディレクターであるピーター・シェイト博士は述べた。”我々は、この調査がさまざまな妊娠と出生に関連する健康状態に関する情報を生み出すことを期待する”。

 特にシェイト博士は、全米こども調査は早産に対する潜在的な寄与因子に関する情報を提供することが期待されると付け加えた。アメリカでは毎年50万以上の赤ちゃんが早産で生まれる。早産で生まれた赤ちゃんは早死や、脳性まひ、知能発達遅れ、学習障害などの様々な健康問題のリスクがある。早産の赤ちゃんのための医療コストは年間260億ドル(約2兆6,000億円)に達する。

 ”我々は、全米子ども調査から学んだことが早産の問題解決に利用できる情報を提供することを期待する”とシェイト博士は述べた。”我々はこの情報を数年後には手にすることができることを期待している”。

 全米子ども調査についてのさらなる情報は下記から入手可能である。
 http://www.nationalchildrensstudy.gov

 2008年に資金のついた27の調査センターとその連絡場所は下記に示されている。
 http://www.nichd.nih.gov/centers2008/

 国立子ども健康とヒト発達研究所(NICHD)は、出生前及び出生後の発達;母親、子ども、家族の健康;生殖生物学及び人口問題;医療リハビリテーションに関する研究を支援する。さらなる情報はどう研究所のウェブサイトをごらんいただきたい。
 http://www.nichd.nih.gov/

 国立健康研究所(NIH)−全米医療研究機関−は27の研究所とセンターを含み、アメリカ保健福祉省の一機関である。NIHは、基礎医学、臨床医学、トランスレーショナル医学(展開医学)の研究を行う主要な連邦機関であり、一般的及び稀な疾病の原因、処置、治療を研究する。NIHとそのプログラムについてのさらなる情報は、www.nih.govをごらんいただきたい。


訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る