2003年4月14日 / EPA
大統領タスクフォース
環境健康リスク及び安全リスクからの子どもたちの保護 活動と成果


(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会
情報源:President's Task Force
on Environmental Health Risks and Safety Risks to Children's
Activities and Accomplishments
April 14, 2003
http://yosemite.epa.gov/ochp/ochpweb.nsf/content/TaskForceSummary1.htm/$file/TaskForceSummary1.pdf
掲載日:2003年9月29日


 2001年10月に開催された環境健康リスク及び安全リスクからの子どもたちの保護に関するブッシュ大統領のタスクフォースの第1回会議で新政権下でのタスクフォースの優先項目と方針が設定された。優先項目は、ぜん息、鉛、不慮の事故、健康な学校環境、など多くの領域から設定された。
 2001年以来、タスクフォースは次のような活動を行ってきた。
  • 子どもたちの環境健康と安全に関する研究目録の更新
  • 全国ぜん息教育計画会議の企画
  • 国のぜん息行動計画を実施するために各州環境健康局との共同作業
  • 自転車用ヘルメット、車のシートベルトと赤ちゃん用安全シートの適切な使用の推進
  • 鉛含有塗料の危険性、農薬、及びアレルギー性物質(ぜん息誘発物質)の児童保護センターにおける第1回調査の完了
  • 企業及びHUD(住宅及び都市開発省)との協力下、事業系鉛除去行動計画(Operation Lead Elimination Action Program (LEAP))の実施
  • 上院で最近の小児期鉛中毒防止に関する成果についての証言(CDC, HUD, EPA, CMS and DoJ)
  • 小児がん研究ネットワークの展開
  • 連邦学校環境健康行動計画の作成完了
  • ”不健康な校舎で子どもの学力を低下させない”運動の展開
  • ”全国子ども調査”の展開
  • ”子どもの健康月間”行動の調整
 環境健康リスク及び安全リスクからの子どもたちの保護に関する大統領タスクフォースは1997年4月に大統領令13045によって設立され、厚生省長官と環境保護局長官の両者によって主催されている。この大統領令は各連邦政府機関に対し、子どもの環境健康と安全リスクについて特定し、評価し、着目することを優先するよう命令している。タスクフォースは16省庁とホワイトハウスの機関からから構成されている。(リスト添付)

 タスクフォースは子どもの環境健康と安全を守るための戦略を勧告することを求められていた。ブッシュ大統領は2001年10月に、タスクフォースの期間をさらに18ヶ月延長するとする大統領令13229に署名した。

 タスクフォースは当初、4つの分野、すなわち、ぜん息、不慮の事故、発達障害(鉛中毒を含む)、及びがんを緊急項目として設定した。その後、タスクフォースは、学校における環境健康、全国子ども調査、及び子ども健康月間を省庁間活動に加えた。

 大統領令は、連邦政府省庁、機関が連携してアメリカの子どもたちの環境健康と安全を改善するよう求めている。 タスクフォースは、EPAが子どもの環境健康と安全を守るために強力に参画すること、及び国民にこの問題を理解してもらうことを強く打ち出した。また大統領のテーマ ”子どもを後ろに残さない” を支援している。

 タスクフォースの達成項目の詳細概要及びメンバーを以下に示す。

子どもの環境健康と安全に関する研究目録 (CHEHSIR)

 子どもの環境健康と安全に関する研究項目 (Children’s Environmental Health and Safety Inventory of Research CHEHSIR)は大統領令に基づき作成されたもので、タスクフォースが最初に着手した施策であった。
 CHEHSIR は、子どもに影響を与える環境健康叉は安全に関わる連邦政府による全ての研究と情報に関するデータベースである。CHEHSIR は、プロジェクトの計画段階で子どもの環境健康に関する情報を研究者が確実に入手できるようにするものである。これは将来の研究が現在入手可能な情報に立脚して行うことを可能とする。このデータベースは一般、科学界、学界、政府諸機関が利用することができる。
 データベースには下記URLでアクセスできる。
http://oaspub.epa.gov/chehsir/chehsir.page

ぜん息

 ぜん息はアメリカの子どもの中が最も罹っている慢性疾病である。18歳以下の子ども300万人(全ての子どもの6.1%)以上がこの病気で苦しんでおり、特に貧困層及びマイノリティに偏っている((NHLBI, March 2002)。ぜん息は子どもの不登校の原因の上位の一つである。毎年、1400万日がぜん息により不登校日としてロスしている。1998年、ぜん息のためにアメリカ経済に発生したコストは 113億ドル(約1兆3,560億円)に達する(NHLBI Data Fact Sheet)
  • 1999年、タスクフォースは、どのように環境要因がぜん息に関係し、ぜん息発作の引き金となっているかをよりよく理解できるようにするために、”ぜん息と環境−子どもを守る戦略”を発行した。これは4つの行動を勧告している。

    1. 子どものぜん息の原因となる、あるいは悪化させる環境要因に関する調査研究を強化し加速すること
    2. 環境曝露を減少することでぜん息をなくし、叉は症状を軽減する科学的知識の使用を改善する公衆健康計画を実施すること
    3. 州、地域、及び地方レベルで健康への影響とリスク要素に関するデータを収集、分析、配布するために全国ぜん息調査システムを確立すること
    4. 異なる人種や民族集団、貧困層にぜん息が偏る理由の特定とその除去をはかること

  • ウェブサイト、出版、展示等を通じて、タスクホースのメンバーは、健康介護業者、学校当局、及び親と連絡を密にし、子どもが環境要因に曝露することを削減するよう措置をとることを奨励すること

  • ぜん息に関するデータにもっと容易にアクセスできるようにし、州及び地域の健康当局がデータをもっと効果的に使用できるようにすること

  • 全国ぜん息教育計画会議が2003年7月に開催される予定

  • タスクフォースは州環境審議会(ECOS)及び州・管区健康事務所協会(ASTHO)が州の健康と環境機関とともに、小児ぜんそくの環境要因を削減するための国のぜん息行動計画を展開・実施するのを支援すること。41州がこの行動計画に参加している

  • 2002年に、疾病管理センター(CDC)はぜん息を含む慢性疾患の追跡を強化・発展させるために連邦政府基金を州環境健康局に給付すると表明した
不慮の事故

(省略)

発達障害/鉛

 鉛は、特に小さな子どもの体内に取り込まれると非常に有毒である。鉛中毒は、子どもの思考能力、学習能力、及び集中力を損なう発達障害を引き起こす原因となる。過去20年間、鉛は、ガソリン、塗料、缶詰のカン、その他の製品から除去されてきたので、子どもの鉛中毒は顕著に減少した。しかし、鉛中毒は防ぐことができるにもかかわらず、アメリカでは数十万人の子どもに影響を与えている。貧困層およびマイノリティの子どもたちは不均衡に鉛中毒の影響に曝されている。
  • 小児期の鉛中毒をなくすために鉛塗料の危険性に照準を合わせる連邦政府戦略が2000年に展開された。その勧告には下記が含まれる。
    1. 低所得層の住宅への資金供与と鉛塗料の危険管理のための企業支援
    2. 血液検査の拡充による早期手当ての改善
    3. 予防と鉛危険管理コスト削減のための革新的手法改善のための研究の実施
    4. 監視計画の実施

  • 鉛除去行動計画(LEAP)はタスクフォースが地域の鉛危険管理行動を企業が支援するするようテコ入れするものである。議会は2002会計年度に650万ドル(7億8,000万円)をこの計画のためにHUD(住宅及び都市開発省)に用意した。HUDは助成金に関する告知を行うとともに議会に実施計画を提示した。最初の受領者が近々発表される予定である。

  • 上院における証言:タスクフォースは小児期鉛中毒防止に関する上院、銀行委員会、住宅及び都市部会、住宅及び運輸小委員会での各機関の証言のための調整を行った。HUD, EPA, CDC, CMS, 及び DoJ からの証言が2002年6月5日に行われた。タスクフォースの業務はこの証言において脚光を浴びた。

  • HUDの低所得層住宅の鉛塗装除去への資金援助:HUD(住宅及び都市開発省)は6700万ドル(約80億円)を、21州の低所得層住宅の鉛塗料除去、教育、及び研究のための計画実施に充てた。
小児がん

 タスクフォースは多くの小児がんに関連するプロジェクトを実施した。
  • 2002年3月、国立がん研究所は、”小児がんの原因論における遺伝子−環境相互作用”と題する国際ワークショップを開催した。このワークショップは非常に盛況で、約100人の講演者と NCI、 EPA、 CDC、 学界、及び一般を含む多数の部署の代表者が参加した。ワークショップから出された勧告の一つは、がんの亜類型と独自な曝露パターンの調査のための膨大な事例を入手するために共同のネットワークと国際研究を実施、活用することであった。

  • 国立がん研究所はまた小児がん研究ネットワークの指導的立場にある。提案されたネットワークは、小児がんの原因を調査するために、小児がん患者全国コホートを確立することである。この子どもコホートは小児がん研究プロジェクトに参加することで利用できる。
学校

 5,300万人以上の子どもと300万人弱のの成人が彼等の日中の多くの時間を全米に112,000ある公立と私立学校の建物の中で過ごしているが、その建物の多くは古くて適切に維持されておらず、その環境は学習に向かず、子どもと職員の健康リスクを増大させるものである。

 タスクフォースは学校の環境健康を促進するためのいくつかのプロジェクトに着手している。
  • 連邦学校環境健康行動目録は連邦学校環境健康計画を文書化し分類したものである。それは学校環境健康問題に関する諸機関の戦略を策定する際に使用される予定であり、完成後にはウェブ上で入手可能となる。目録は、新たな関連情報が入手可能になれば定期的に更新される予定である。

  • 不健康な校舎で子どもを学習遅れのまま残さないための計画:”子どもを後に残さない法(2002年1月)” の第5414条は、教育省が、 ”環境的に不健康な校舎が生徒と教師に及ぼす健康と学習影響” に関する調査を実施することを求めている。教育省は EPA、CDC、及び他の連邦機関と連携して、この計画に関する連邦政府諸機関の過去、現在、及び計画中の関連事項を評価する作業に着手している。
 さらに、この問題に関するタスクフォースの指導により、各機関は個別の計画を拡張強化している。それらには下記が含まれる。
  • 健康な学校環境ウェブサイト http://www.epa.gov/schools は EPA、他の連邦機関、州、地方政府、及び NGO からのオンライン情報を一か所に集めて公衆に提供する。

  • EPA は、学校事務当局、施設計画者、建築家、技術者が学校を設計し、建設し、修繕するために役に立つ指針を数ヶ月以内に作成する予定である。”学校の屋内空気品質設計ツール” http://www.epa.gov/iaq/schools/ は、屋内空気品質の目標設定、原則、及び技術を用いて高性能の学校を建築することの重要性を強調している。

  • CDC(疾病管理センター)は2003年に、学校起因のぜん息管理計画のために、州及び地域の教育機関に助成金を出す予定である。

  • エネルギー省は、”高性能学校建築のための 国家最善実施マニュアル”を開発した。
    http://www.eren.doe.gov/energysmartschools/order.html は、学校の設計叉は改築に責任ある建築家と技術者、及び設計チームのプロジェクト・マネージャのためのオンライン情報である。
全国子ども調査

 全国子ども調査は子どもの健康と発達に及ぼす環境影響に関する大規模で長期的な調査であり、タスクフォースがら派生したものである。その調査は、子どもの健康と幸福に影響する有益及び有害双方の広範囲な環境要因を調べるというものである。
 2000年の子どもの健康法は、国立子どもの健康と人間の発達研究所(National Institute of Child Health and Human Development NICHD )が、EPA や CDC など連邦機関と連携してこの調査を実施することを求めている。調査を実施するための予備的調査が現在行われている。
 この調査のための集中計画には連邦政府の主要な全ての省庁と300人以上の大学、産業界、全国の組織からの科学者が参画している。今日まで、EPA は計画立案と予備的調査のための資金を既存の予算の中から充当することで貢献している。

子ども健康月間

 タスクフォース関連機関は2002年10月の子ども健康月間に子どもの健康保護の重要性を訴える連邦計画を展開した。
 実施内容は:
  • 月間の標語とロゴ作成。子どもの健康を守る”ご褒美を見つけよう (Discover the Rewards)”

  • ユニークな10月のカレンダー作成。病気やけがの予防から学校健康まで、ためになる一言を、毎日、記載

  • 子どもの健康月間のウェブサイト http://www.childrenshealth.gov で、連邦政府がカバーする広範囲な環境健康と安全に関するトピックスを提供

  • 子どもの健康大統領宣言の要求に基づき、家族、学校、子どもの健康専門家、地域、及び政府は我々の子ども全てが健康と好調のご褒美を見つけられるよう手助けすること

  • 子どもの健康を守る政府の計画をハイライトした月間中の行事の案内
2003年の子どもの健康月間のための準備が現在、行われている。

タスクフォース参加省庁及び機関

  • United States Environmental Protection Agency
  • Department of Health and Human Services
  • Department of Education
  • Department of Labor
  • Department of Justice
  • Department of Energy
  • Department of Housing and Urban Development
  • Department of Agriculture
  • Department of Transportation
  • Office of Management and Budget
  • Council on Environmental Quality
  • Consumer Product Safety Commission
  • National Economic Council
  • Domestic Policy Council
  • Council of Economic Advisors
  • Office of
参照


(訳:安間 武 /化学物質問題市民研究会)



化学物質問題市民研究会
トップページに戻る