ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)2009年10月14日
おもちゃに含まれる多環芳香族炭化水素(PAH)

情報源:BfR Opinion No 046/2009, 14 October 2009
Polycyclic aromatic hydrocarbons (PAH) in toys
http://www.bfr.bund.de/cm/230/polycyclic_aromatic_hydrocarbons_pah_in_toys.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年12月18日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/europe/091014_BfR_Opinion_PAH_in_toys.html


 多くの多環芳香族炭化水素(PAH)[1]は、発がん性物質であり、CMR物質として分類されている。CMR物質とは、発がん性(carcinogenic)、変異原性(mutagenic)または生殖毒性(toxic to re-production)を有する物質である。多環芳香族炭化水素(PAH)は、通常、百以上の産業化学物質からなる混合物のことを指す。多環芳香族炭化水素(PAH)は、子どものおもちゃなどゴムやエラストマー[訳注2]からなる消費者製品を通じて直接的に接触することがある。これは、必要に応じて異なる機械的特性及びプロセスに関連する特性を持った物質を作るためにゴムやエラストマーの製造過程でPAHが加えられた可塑剤油やカーボンブラックを使用するためである。

 子どものがんの発症が増加しているのでCMR物質への暴露を可能な限り最小化するための緊急の行動が求められる。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は欧州委員会の新たなおもちゃ安全指令(Toy Safety Directive of the EC )のCMR物質に関する規制をPAHに適用し、その健康リスクを評価した。同研究所は現在の法的レベルは子どもの健康を適切に保護しないし、CMR物質の暴露最小化に関する要求を満たさないという結論に達した。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、合理的に達成可能な限り低減する(as low as reasonably achievable)という ALARA 原則がそのような物質に適用されるべきであるという意見を持っている。おもちゃの調査は、PAH物質の技術的に可能なレベルは、おもちゃ安全指令によって許される最大レベルより明らかに低いということを示している。

 ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、おもちゃの中のCMR物質の規制は、食品に接触するよう意図されたプラスチック材や製品に適用する(Directive 2002/72/EC:食品接触プラスチック材料及び物品に関する指令)のと同じように、内容物に対してよりもむしろ物質移動の概念に対して適用するよう勧告する。これらの物質について、CMR物質の移動は受け入れられない。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)の知識によれば、これらの要求は技術的に可能であり、すでに適切に実施されている。食品接触物質の規制は、子どものCMR物質への暴露を最小にするために、年齢制限なしに全てのおもちゃの材料に適用すべきである。

 本件に関するドイツ語のBfR文書完全版は下記より入手できる。
http://www.bfr.bund.de/cm/216/polyzyklische_aromatische_kohlenwasserstoffe_pak_in_spielzeug.pdf


訳注1
訳注2
訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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