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Chemical Brain Drain - News 2015年3月30日 甲状腺機能障害は 化学的脳汚染を引き起こす 情報源:Chemical Brain Drain Website - News 30 March 2015 Thyroid dysfunction causes brain drain By Philippe Grandjean, MD http://braindrain.dk/2015/03/thyroid-dysfunction-causes-brain-drain/ 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) 掲載日:2015年4月3日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Thyroid_dysfunction_causes_brain_drain.html
しかし、十分なヨード供給があっても、十分な甲状腺機能を確保するのに十分ではない。様々な環境的化学物質がヨードの摂取又は甲状腺ホルモンの代謝を減じる可能性がある。これらの化学物質は、食品や屋内ダスト中の汚染物質として、あるいは環境中に広く存在する。特に問題となるのは過塩素酸塩(訳注1)である。この有機化合物はロケットの推進剤、花火、そしてマッチで使用される酸化剤である。さらに過塩素酸塩は、殺菌剤、漂白剤及びその他多くの物質の製造に使用されている。それは食品容器材料の帯電防止剤としてすら使用されている。当然のことながら過塩素酸塩は、飲料水中及び食品中に一般的な汚染物質として存在する。過塩素酸塩は重要な毒性物であるにもかかわらず、その存在は通常は監視されていない。 暴露を低減するために、いくつかのアメリカの環境団体が現在、食品容器での過塩素酸塩の使用を止めさせるよう米・食品医薬品局(FDA)に請願している。この請願は支援する価値があり、FDA はコメントを2015年5月15日まで受け付けている。暴露源を制限することに加えて、規制当局は飲料水中及び食品中の過塩素酸塩の監視を優先付けるべきである。その理由は、低レベル暴露における影響は、過塩素酸塩単独の毒性学的研究により示唆されているものより、もっと深刻かも知れないからである。 ひとつの懸念は、甲状腺が受ける干渉に対する感受性が低ヨード状態の女性に増大していることである。世界保健機関は、合計 54か国がヨード不足であり、さらに多くの国が不十分であるとみなしている。例えばアメリカでは、かなり多くの集団でヨード摂取が不十分である。 さらなる懸念は、過塩素酸塩は甲状腺のヨード摂取を妨げる唯一の物質ではないということである。食品中に存在するチオシアン酸塩と硝酸塩、(そしてチオシアン酸塩はまたタバコの煙の中にも存在する)もヨード摂取を妨げる。更なる甲状腺の干渉は、マンゼブや プロナミドのようなある種の農薬からも起きる。甲状腺機能を阻害する他の内分泌かく乱物質には、PCB 類、臭化難燃剤、ダイオキシン類、及び過フッ素化合物等や、クロルピリホスのような有機リン系農薬がある。 多くの危険がある。最近のヨーロッパの研究は、妊娠中に甲状腺機能が低下していた女性らを特定した。尿中の過塩素酸塩の排泄レベルが最も高い女性たちから生まれた子どもたちは、3歳時に最低10%の知能指数低下を起こすリスクが3倍高かった。過塩素酸塩は、ヨード不足のようにふるまう、あるいはそれを増幅すように見える。この件に関して初めての研究なので、さらなる研究で確認される価値がある。しかし、その結果は、極めてもっともらしく、我々は全てが甲状腺毒素に同じように感受性が高いわけではないことを強調している。話を難しくしているのは、過塩素酸塩、チオシアン酸塩、そして硝酸塩の複合影響は、各物質の影響の合計より大きいらしいということである。今月の初め新たな研究が、EU における有機リン酸塩への現状の暴露レベルは、年間の知能指数に1,300万ポイントの損失をもたらしたことを示した。この損失の値は、年間1,300億ユーロを越えると計算された(訳注2)。従って、他の多くの環境化学物質を加えると、母親の甲状腺は胎児に必要な供給をすることができないかもしれない。 甲状腺は化学物質の攻撃を受けている時には脳の発達もまた攻撃を受けている。 訳注1 物質に関する基本的事項 [4] 過塩素酸 - 環境省 訳注2 内分泌学会 プレスリリース 2015年3月5日 内分泌かく乱化学物質の推定費用 EU で年間 1,500億ユーロを越える |