グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2014年12月17日
まだらなフッ化物議論

情報源:Chemical Brain Drain Website - News
17 December 2014
Mottled fluoride debate
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2014/12/mottled-fluoride-debate/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2014年12月27日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Mottled_fluoride_debate.html

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【2014年12月17日】 飲料水中の高いレベルのフッ化物に暴露した子どもたちの知能不足(IQ deficits)に関するメタアナリシス研究訳注1)が、アメリカで多くの議論訳注2)を巻き起こしたが、ほとんどは水道水へのフッ化物添加の安全性に関するものであった。この研究中でレビューされた27の研究は、主に中国からのものであり(訳注3:自然界のフッ化物汚染に関するもの)、水道水がフッ化物添加されている地域で起きるものと類似の、そしてそのレベルの10倍までの暴露をカバーしている。フッ化物汚染の高いレベルの地域の子どもたちは、コントロールより知能指数が平均7ポイント低いことを示したが、そのような知能不足の用量依存性は不確かである。

 さらにその関連性を調査するために、メタアナリシスを実施したチームは、中国の四川省のある地方でパイロット調査を行い、その結果が最近発表された訳注4)。研究者らは暴露評価及び51人の子どもの認識テストに対して利用可能で実行可能な最良のアプローチを採用した。彼らの飲料水からのフッ化物への生涯暴露は、アメリカで許容される最大範囲を超えていた。調査の結果、フッ化物による歯の斑紋−エナメル質上の白っぽい染みのように見える軽度の斑紋−を持った子どもたちは、いくつかの神経心理学テストで低めの能力を示した。この観察は、エナメル質への影響は美観の問題だけであり、毒性の兆候ではないとする一般的な見方とは正反対のものである。少なくともアメリカの子ども5人に1人は、ある程度のフッ化物による歯の斑紋をもっている。

  虫歯予防のためのフッ化物添加の安全性は、この27 の研究のメタアナリシスは”厳しく批判された”と主張する最近の評論で弁護されているが、その批判についての説明はない。安全性の証拠として評論の著者は、”フッ化物添加は子どもにも大人にも神経毒素ではなく、知能に否定的な影響を及ぼさないことを見つけた”とするニュージランドの研究訳注5)を引き合いに出している。知能指数の2〜3ポイントの低下は、彼らの調査から除外することはできなかったはずであることを統計的信頼限界が示唆しているので、この解釈はやや楽観的である。

 虫歯の予防は重要な目標であるが、フッ化物添加の安全性の誇張を正当化するものではない。過去に、鉛や水銀、そしてある農薬のような他の神経毒素に関する科学的証拠は、同じように、既得権益により誤った解釈へと導かれた。斑紋のある歯と脳毒性の間の関係は更なる特性化が必要であるが、不確実性の存在は、誇張によって議論をまだらにすることの言い訳にはならない。脳の化学的汚染の防止は、少なくとも虫歯の予防と同じように重要であると考えられるべきである。


訳注1メタアナリシス/Wikipedia
 メタアナリシス(meta-analysis)とは、複数のランダム化比較試験の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。メタ分析、メタ解析とも言う。メタアナリシスは、根拠に基づいた医療において、最も質の高い根拠とされる。

訳注2グランジャン博士のウェブサイト Chemical Brain Drain - News 2014年6月2日 フッ化物:歯にはよいが脳には悪い

訳注3Developmental Fluoride Neurotoxicity: A Systematic Review and Meta-Analysis (Environ Health Perspect; DOI:10.1289/ehp.1104912)
 グランジャン博士も著者の一人であるメタアナリシス研究(2012年10月EHP):自然界の汚染として飲料水中にフッ化物が存在する地域の子どもたちの知能指数はコントロールより知能指数が平均7ポイント低い。

訳注4Association of lifetime exposure to fluoride and cognitive functions in Chinese children: A pilot study (Neurotoxicology and Teratology doi:10.1016/j.ntt.2014.11.001)
 グランジャン博士も著者の一人である中国のパイロット調査(2014年11月)

訳注5:Community Water Fluoridation and Intelligence: Prospective Study in New Zealand (American Journal of Public Health: January 2015, Vol. 105, No. 1, pp. 72-76. doi: 10.2105/AJPH.2013.301857)
 水道水フッ化物添加地域(CWF)の居住者、フッ化物配合歯磨剤の使用、及びフッ化物(0.5-milligra)錠剤の摂取対象者(5歳まで)の前向き研究。結果:IQ に明確な相違はない。
(a prospective study of ... residence in a community water fluoridation (CWF) area, use of fluoride dentifrice and intake of 0.5-milligram fluoride tablets were assessed in early life (prior to age 5 years)). Results: No clear differences in IQ.



化学物質問題市民研究会
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