グランジャン博士のウェブサイト
Chemical Brain Drain - News 2015年2月6日
ウイルスのように広がる脳汚染物質情報

情報源:Chemical Brain Drain Website - News
6 February 2015
Brain drain going viral
By Philippe Grandjean, MD
http://braindrain.dk/2015/02/brain-drain-going-viral/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2015年2月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kodomo/CBD/Brain_drain_going_viral.html

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 ある話がインターネット上で拡散されると非常に多くの人々に達するので、それは麻疹ウイルスのように瞬く間に広がる(go viral)。これは、化学的脳汚染を引き起こすことができる物質のひとつにフッ化物を含めた最近の報告訳注1)で起きたことである。あるブロガーは、”ハーバード大学の研究は、フッ化物が子どものIQを低下させる”という表現がインターネット上の検索で115,00 のヒットをもたらしたと言及した。だからこの研究は瞬く間に拡散されたわけであるが、それは良かったのか悪かったのか?

 研究者らによりリスクの誇張の可能性が精査された。彼らはフェイスブック上のコメントと意見がどのように関連し、”9つの反フッ化物唱道団体により正しい情報”が広められたかどうかを調べた。筆頭著者が歯学部の人なので、論文のタイトルが ”オンライン上での唱道が正確さを曇らせる(When advocacy obscures accuracy online)” というのは多分、驚くに当たらない。著者らはまた、アメリカにおける飲料水へのフッ化物の添加は、科学的総意によって支持されていると決めてかかり、驚いたことにある供述の一部は、ニュージランドの歯科医師らに依拠していた(訳注2)。

 そこで、疑問はむしろ、正確さが歯科医師ら自身の主張により曇らされていないかどうかである。このウェブサイトで報告したように、フッ化物を化学的脳汚染物質としてリストする同じ報告書は、フッ化物唱道者らによって曲解された。サイエンティフィック・アメリカンのブログさえ、IQ 低下とのどのような関連性も”完全に反駁された”と主張した。飲料水へのフッ化物添加を支持する歯科医師らは、一般的に飲料水中のフッ化物は虫歯を予防し、脳発達へのどのようなリスクも現実的な用量においてありそうもなく、そのような懸念は誤った情報であると主張する。多分さらに悪いことには、欧州食品安全機関によるフッ化物に関する最近の評価は、脳発達に関連するどのようなリスクにも一顧だにしなかった。

 それにもかかわらず、最近のコックラン( Cochrane)のレビューは、水へのフッ化物添加は通常想定されているような便益を本当に提供するのかどうかと疑問を呈し、歯の局所的治療でも差支えないかもしれないことを示唆した。もし70年前に始められたあるやり方が最早当初の目的を果たさないかもしれないとしても、我々は驚くべきではない。適確医療訳注3)のこの時代では、脳発達へのリスクを含んで、健康リスクと倫理的懸念も考慮した虫歯予防のもっと良い絞り込んだ方法を探すべきである。最近のレビューで慎重に結論付けられたように、”フッ化物の全身的摂取ではない世界の虫歯削減のための公衆衛生アプローチが緊急に求められる”。フッ化物は、潜在的な便益とリスクとのバランスをどのようにとるかに関する論争の地雷原である。両方とも、ウイルス感染の増殖の余地を小さくする適切なリスク評価を可能とするよう、さらなる研究と調査に値する。


訳注1
2014年2月にLancet に発表されたグランジャン博士らの論文:
Neurobehavioural effects of developmental toxicity
 2006年に体系的な論文レビューにより5種類の脳発達に有害な産業化学物質を特定した(鉛、メチル水銀、PCB類、ヒ素、及びトルエン)。 その後の疫学的研究が6種類を追加した(マンガン、フッ化物、クロルピリホス、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、テトラクロロエチレン、及びポリ臭化ジフェニルエーテル )

訳注2
グランジャン博士のウェブサイト Chemical Brain Drain - News 2014年12月17日 まだらなフッ化物議論

訳注3
米国が推進する“Precision Medicine”について考える


化学物質問題市民研究会
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