ABCニュース 2019年6月18日
モンサントは監視リストで追跡した 7か国の
ジャーナリストや活動家らと連絡を取っている

スー・ヨウン
情報源:ABC News, June 18, 2019
Monsanto is contacting the journalists, activists it tracked on 'watch lists' in 7 countries
By Soo Youn
https://abcnews.go.com/Business/monsanto-contacting-journalists-
activists-tracked-watch-lists-countries/story?id=63784483


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2019年6月22日
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Monsanto_is_contacting_the_journalists_activists_it_tracked_on_watch_lists_in_7_countries.html


 農業複合企業モンサントは、”監視リスト”によって監視し、文書化していたジャーナリスト、政治家、及び活動家らと接触を開始したと、親会社であるバイエル社が今週発表した。

 農薬に関する見解を含む情報が農業ビジネスの巨人によって追跡され、”監視リスト”に収載されたヨーロッパ 7か国のジャーナリスト、政治家、及び活動家らは、同社に調査されていたことを知らされたと、モンサントの親会社であるバイエル社が発表した。

 バイエルは、同社の評判回復の取り組みの真っ最中である月曜日(6月17日)に、同社製品の批判者又は支持者であると把握している人々に関する同社の監視活動についての調査の拡大の一環として、”監視リストについての詳細を明らかにした。”

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 バイエルにより発表された声明によれば、同社は 5月に、同社が買収する前のモンサントによって雇われた外部の広告会社フライシュマン・ヒラードが、 ”フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン及びイギリスで利害関係者のリスト” を作成していたことを明らかにした。同声明は、利害関係者とは農薬に対してある立場をとる ”ジャーナリスト、政治家、及びその他の利益団体” であると説明した。

 月曜日(6月17日)にバイエルは、フランスとドイツの”監視リスト”にある人々はフライシュマン・ヒラードによって監視されていたことを知らされたと述べた。バイエルは、”フランスのテレビ局が農薬及び遺伝子組み換え作物についての有名な支持者と反対者に関するファイルがフランスに存在することを明らかにした後に”、そのリスト問題への対処を開始したとフランス通信社(AFP)が報じており、フランスとドイツの二か国だけで 600人が監視されていたとしている。

 ”先週末までにドイツとフランスのリストに載っている全ての人々は、監視されていたことを知らされた。この手続きは残りの諸国の人々についてもすぐに完了するであろう”とバイエルは声明の中で述べた。

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 同社は、情報はさらに他の国でもモンサントに反対するとみなされている人々について収集されたのかどうかを調査するためにアメリカを拠点とする法律事務所シドリー・オースティンを雇ったと付け加えた。

 同法律事務所は数週間前のフランスとは対照的にドイツのリストにはジャーナリストも慎重に扱うべき個人データも発見しなかったと、バイエルの 企業広報部長クリスチャン・マーチンは ABC ニュースに述べた。

 シドリー・オースティンは ABC ニュースのコメント要求を断ってきた。

 AFP は、監視リストにフランスのジャーナリストが掲載されていることを発見して、フランスのデータ保護規制者を告訴した。そのリストが 5月に明らかにされると、バイエルは直ちに追跡プロジェクトに関してフライシュマン・ヒラード及びその他の広告会社と縁を切ったと、バイエルは述べた。

 ”企業、NGOs 及びその他の顧客は、関与する前に、彼らが多様な展望を理解するのに我々の会社が役に立つことを当然期待する。そのために、我々も他の専門的広告会社も、公的に入手可能な関連情報を収集する”とフライシュマン・ヒラードは 5月に発表された声明の中に書いた。”これらの企画書は公共のための取り組みに必須である。それらは我々の顧客が彼らのビジネスと社会的目標に関連する対話に最もよく関わるのに助けとなる”。

 ドイツの製薬会社の巨人バイエルは昨年、モンサントを 630億ドル(約7兆円)で買収し、それ以来、モンサントに関連するいくつかの注目を浴びる論争に対処している。先週、バイエルはモンサントの問題を抱えていると言われる遺産に対して、”透明性、持続可能性、及び積極的な関与”という新たな約束を発表することにより対応した。

 ”我々は、買収した農業ビジネスを統合することに大きく進展しており、現在、我々のビジネスのいたるところで透明性と持続可能性を推進するための一連の措置を実施し始めている”とバイエルの経営会議の議長ワーナー・バウマンは金曜日に述べた。

 同社のウェブサイトの声明によれば、”これらの措置はモンサントの買収の後にバイエルが農業におけるその役割について聞かされた疑問と懸念に対応するものである。

 透明性についての声明は、モンサントの除草剤ラウンドアップの主成分グリホサートががんに関連しており、同社は損害についての責任があるとするアメリカの民事法廷におけるいくつかのモンサントに対する著しく巨額な評決の後、バイエルによる広範なイメージ回復の取り組みの最中にもたらされた。証券取引委員会(SEC)に提出された同社の年次報告書によれば、同社は1月28日現在、原告約11,200人からの訴訟に直面している。

 少なくともアメリカにおける 3件の最近の訴訟は、モンサントに対する陪審員による巨額の賠償金の裁定を下した。

   同社の年次報告書によれば、昨年、カリフォルニア州陪審は、カリフォルニアの運動場整備員のがんをウンドアップが引き起こしたとして、彼に 2億8,900万ドル(約318億円)の支払いを裁定した。その金額は後に 7,800万ドル(約86億円)に減額されたが、現在、控訴されている。

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 2019年3月、サンフランシスコの連邦陪審は、ラウンドアップががんを引き起こしたとして、別のカリフォルニアの男性に 8,000万ドル(約88億円)の支払いを裁定した。同社はこの決定を上訴すると述べた。

 5月に、もう一つのカリフォルニア陪審は、ラウンドアップにより両方が非ホジキンリンパ腫に罹ったと主張する夫婦に20億ドル(約2,200億円)の賠償金を裁定した。

 月曜日(5月17日)にバイエルは最後の評決を上訴した。声明の中で同社の報道担当は、”裁判は、科学の状態、原因、及び法的義務の順守に関する真実を確認することではなく、抽象的にモンサントを中傷することに焦点を合わせている”と述べた。

 モンサントは繰り返し、グリホサートは発がん性物質ではないと述べた。


訳注:参考情報