QUARTZ 2019年1月8日
中国のプラスチックごみ輸入制限後、
東南アジア諸国もまた輸入プラスチックごみからの
有害物質被害をなくそうとしている

カリ・リンドバーグ

情報源:QUARTZ, January 8, 2019
After China, Southeast Asia is also detoxing from imported plastic trash
By Kari Lindberg
https://qz.com/1516317/southeast-asia-is-detoxing-from-imported-plastic-trash/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2019年1月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_19/
190108_QUARTZ_After_China_Southeast_Asia_is_also_detoxing_from_imported_plastic_trash.html


 数十年間、世界のごみ回収を引き受けてきた中国の、ほとんどすべてのプラスチック廃棄物の輸入を禁止するという昨年の決定は(訳注1)、世界のリサイクル慣習をひっくり返し、新たな行き先として東南アジア諸国にプラスチック廃棄物を殺到させた。プラスチック廃棄物の殺到に直面する東南アジアは、外国からのごみをますます拒絶するようになってきた。

 コリアン・ヘラルド紙によれば、フィリピンは、昨年8月に到着した不法に輸出されたプラスチック廃棄物 6,500 トンを韓国に送り返すために本年 1月9日に韓国に向けて送り出す。この 2か月の間に不法に輸入された廃棄物を韓国に強制的に送り返すのは二度目のことである。輸入に抗議する環境団体は、フィリピンを世界の廃棄物投棄場所にするのを止めさせるための措置をとるよう要求した。

 グリーンピース UK のジャーナリズム部門である Unearthed(発掘)によるアメリカの貿易データの分析によれば、 マレーシア、タイ、及びベトナムへのアメリカからのプラスチック廃棄物の輸出は、2017年の最初の 6か月間においてはアメリカのプラスチック廃棄物の 10% という割合であったのに比べ、2018年の同時期では 50%近くに増加しており、その地域での廃棄物輸入の急増によって他の国からの廃棄物に対する拒絶反応が高まったとみられる。

 昨年7月、ベトナムはその大きな増加を見て、廃棄物輸入の新たなライセンスの発行を禁止し、違法な廃棄物の積み荷を厳しく取り締まった。3月には船会社 APL は、同国の港でのリサイクルプラスチックのコンテナーの滞貨のために、アメリカ及びカナダからプラスチックスクラップをベトナムに送ることを暫定的に停止しなくてはならないであろうと発表し、4月にはマレーシアとタイで同様な発表を行って、ベトナムでの措置に続けた。

 10月中旬、2018年の最初の 6か月間のアメリカからのプラスチック廃棄物の輸入が、ほとんど 2,000%近くになったのを見たタイは、多くの電子廃棄物の輸入を 2019年に停止し、プラスチック廃棄物の輸入は 2021年までに停止するであろうと発表した。同月、マレーシアは 3年でプラスチック廃棄物の輸入を永久に禁止するであろうと発表した。

  Unearthed の2018年の報告書によれば、イギリスは、マレーシアへのプラスチック廃棄物の輸出が 2017年の最初の4か月間の 16,000トン以下から、昨年の同時期で 50,000トン以上と、3倍以上になった。

 世界のリサイクル供給チェーンに変化をもたらしたことで、世界中で生成されているプラスチック廃棄物の量がいかに膨大であるか、そしてその管理がいかに不十分であるかについて認識させた。ジョージア大学による 2018年の研究によれば、もし中国に送り込まれなけれが、2030年までに推定 1億1,100万トンのプラスチック廃棄物がたまるであろう。

 カリフォルニア大学環境科学ブレン校とジョージア大学による 2017年の研究は、かつて生成されたプラスチックごみのわずか 9%しかリサイクルされておらず、80%が埋め立て地と海洋に行き着いていると推定した。

 東南アジア諸国が廃棄物輸入の受け入れを拒む理由は、その地域は、自身が生成し、地域の生態系をすでに破壊している膨大な量のプラスチック廃棄物と取り組まなければならないからである。2017年のオーシャン・コンサバンシー(Ocean Conservancy)報告書(pdf, page 3)は、中国、インドネシア、フィリピン、タイ、及びベトナムは、世界の残りの地域のプラスチック合計より多くのプラスチックを海洋に投棄していると記している。

 昨年6月にタイの海岸に死んだゴンドウクジラが浮いているのが発見された。調べてみると、そのクジラの胃の中から 80のプラスチック袋が発見され、その重量は 14kg あった。その 1か月後にインドネシアで浜に打ち上げられたマッコウクジラが見つかったが、腹部に 100以上の飲料容器を含んで 1,000以上のプラスチック片が発見された。


訳注1:中国のごみ輸入制限


化学物質問題市民研究会
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