常設人民法廷(PPT) 2011年12月3日
ボパールの悲劇 27周年記念日に
世界中の農薬産業の犠牲者と生存者が
歴史的な人民法廷に集まる


情報源:Permanent People's Tribunal (PPT) 12/03/2011
The Permanent People's Tribunal (PPT) Session on Agrochemical Transnational Corporations (TNCs)
On the 27th anniversary of the Bhopal Tragedy:
Victims and survivors of the pesticide industry worldwide gather for historic tribunal
http://www.agricorporateaccountability.net/en/post/media-resources/59

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/index.html

掲載日:2011年12月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_11/111203_27th_anniversary_of_Bhopal.html


 約200人の人々が、農薬多国籍企業(TNCs)に関する常設人民法廷(PPT)裁判の初日である本日、インドのバンガロールに集まった。農民や農場労働者、犠牲者の家族、環境健康推進団体、科学者、弁護士らは全て、人権侵害で世界の”6大農薬企業”を告発することを目的とする国際的意見法廷である”常設人民法廷(PPT)”の結果に高い希望を託している。

 モンサント(Monsanto)、シンジェンタ(Syngenta)、バイエル(Bayer)、デュポン(DuPont)、ダウケミカル(Dow Chemical)、バスフ(BASF)は、人の命、環境、及び生計に甚大な被害を及ぼす有害農薬と技術の製造・販売に関連する人権侵害で告発されている。

ダウケミカルは、瞬時に8,000人を殺し、現在も後遺症に苦しむ数十万人に中毒を引き起こした1984年のインドのボパールの悲劇に責任を負わないままでいる。インドの工場の親会社であり、この致命的な漏洩事故に責任があるユニオンカーバイド社(UCC)の責任者は誰も処罰されなかった。(写真割愛)
 この常設人民法廷(PPT)は、農薬多国籍企業(TNCs)の責任の欠如を最も明白に描き出したボパールの悲劇の27周年記念日と時を同じくしている。常設人民法廷(PPT)の主催団体のひとつである農薬行動ネットワーク(PAN)は、正義の要求を白日にさらすために列車を止め、数千人の人々を動員すると誓ったボパールの人々の本日の抗議行動を支持する。

 ”ボパールを思い起こす時に人々が苛立つのは、毒物汚染がいまだに続いているということである。数千人が、毎日被害を受けており、一方、責任ある会社は、世界的には彼らに責任を持たせる枠組みがないために、利益を上げ続けている。親会社は訴えられることはなく、それがダウケミカルが罪を逃れて、わずかな保証金を払うだけですまされる理由である。今日、ボパールの悲劇は、農薬多国籍企業(TNCs)による人々、人々の命、土地、食物、資源の支配という異なる方法を通じて、異なる形で継続している”と、PANアジア太平洋の議長で、常設人民法廷(PPT)の技術的証人の一人であるイレーナ・フェルナンデスは述べた。

 世界中からの証人が著名な国際的審査委員会の陪審員の前で、”6大農薬企業”による人権侵害の事例を発表するであろう。常設人民法廷(PPT)の陪審員は、インドの法学者ウペンドラ・バクシ、イギリスの科学者リカルド・スタインブレッチャー、アフリカの環境弁護士イブラヒマ・リ、日本の大学教授マサヨシ・タルイ(樽井正義)、ドイツの経済学者エルマール・アルツバータ、イタリアの大学教授パオロ・ラマゾッチ、及びPPT事務局長ジャニ・トゴニ博士からなる。

 これらの事例には、カサルゴッド村のバイエル製エンドスルファンによる中毒事件、マレーシアのパームオイル農園労働者のシンジェンタ製パラコートによる中毒事件、及びインドの綿花農場における児童労働と農薬中毒事件が含まれる。カサルゴッドからの医師と被害者、マレーシア農園労働者、及びインドの児童労働者は証言することになっている。

 また、ラテンアメリカで遺伝子組み換え(GE)大豆に広く使用されているモンサントのランドアップレディによる中毒で死亡した子どもシルビーノ・タラベラについても発表がある。シルビーノの母親ビラスボアが証言する。

 一方、アメリカの農民、デーブ・ランヨンはモンサントの遺伝子組み換え(GE)作物による畑の汚染と、会社が痛めつけられた農民をどのように告訴しているかについて証言する。イギリスの養蜂家グラハム・ホワイトは、バイエルのネオニコチノイド農薬により引き起こされた蜜蜂の世界的な死に関し証人として証言する。アメリカの科学者タイロン・ヘイズは、アトラジンの危険性に関する研究を抑圧するためのシンジェンタの嫌がらせと試みに関して報告する。

 シンジェンタの農場におけるブラジル人農場労働者殺人、アフリカにおける農薬備蓄、数十年間に”6大農薬企業”により製造された残留性有機汚染物質による北極地方の中毒もまた発表されるであろう。

 ”生命、健康、生計に対する最も基本的な人権の蹂躙により人々と環境に甚大な害を引き起こしたこれらの農薬多国籍企業(TNCs)を告発するために、本日、世界の隅々から人々が集まってきた。この法廷は農薬会社に説明責任を持たせるメカニズムを持つことの必要性を強調している”と、パン・インターナショナルの議長でPANラテンアメリカのコーディネータであるジャビエール・ソウザは述べた。

 1979年にイタリアで設立された常設人民法廷(PPT)は、地域の共同体により提出される人権侵害の訴えに目を向ける。ベトナム戦争やラテンアメリカの独裁体制に関する法廷をはじめとして、常設人民法廷(PPT)は厳格な従来の法廷の様式を用いて今までに35回の裁判を開催している。その判断には法的拘束力はないが、これらは今回は農薬多国籍企業(TNCs)である被告人に対する将来の法的活動のための先例をなすことができる。この法廷における被告はまた、会社の本国政府(アメリカ、スイス、ドイツ)と国際通貨基金(IMF)、世界銀行(WB)、及び世界貿易機構(WTO)を含む。

 ”この法廷は、現在の国家及び国際的レベルでの法的メカニズムの下では、何も見つけることができない人々のための正義がよりどころである。我々は、この常設人民法廷(PPT)の結果が、企業の攻撃と咎め(とがめ)がないことに反対する人々の権利を守るために、政府及び関係機関に彼等の責任を思い起こさせるものとして役立つことを希望する。人権は、企業が逃れることを許されるかぎり侵害される続けるであろう。世界の食料供給システムの中心である農業が、命よりも利益を尊ぶ会社によって支配されるかぎり、ボパールのような更なる悲劇が引き起こされるはずである”とPANアジアン太平洋のエグゼクティブ・ディレクター、サロジェニ・レンガムは述べた。

 判決は、4日間の法廷最終日である12月6日に発表されることになっている。


参考情報




化学物質問題市民研究会
トップページに戻る